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金ナノ粒子を活用した「10分のがんテスト」、科学者が開発

  • 未来
2019/2/7

豪クイーンズランド大学の研究チームが、新たながんの検査法を開発することに成功した。がん細胞によって産生される物質を患者の血液中から検出することで、あらゆる種類のがんを発見する。

安価でシンプルなこの検査では、体内のどこかに悪性腫瘍細胞があるかどうかが、液体試料の色の変化により、10分以内に判明する。

検査はまだ開発途中だが、がんを見つけるためのまったく新しいアプローチに基づいている。うまくいけば、医師たちはごく簡単な手順で、がんの定期的スクリーニングができるようになるだろう。

「この方法の大きなメリットは、非常に安価で扱いやすく、医療機関への導入がきわめて容易であることです」と、クイーンズランド大学の研究者、ローラ・カラスコーサは言う。

検査の感度は約90%であり、がん患者が100人いれば、そのうち90人に陽性反応が出る。がんの簡易検査として利用し、陽性反応が出た場合は追加で精密検査を行うといった運用が想定されている。

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「わたしたちが開発した検査は、患者ががんにかかっている可能性を臨床医に知らせるスクリーニングツールとして利用できます。ただし、別の手法の追加検査によって、がんの種類やステージを見極める必要があります」と、カラスコーサは述べる。

研究チームが着目したのは、がん細胞と健康な細胞のDNAが、まったく違ったかたちで金属表面に付着することだ。これにより、血中に入り込んだわずかなDNAの痕跡からでも、正常細胞とがん細胞を区別できる検査法が生まれた。

健康な細胞は、DNA配列にメチル基と呼ばれる分子が付加されることで正常に機能している。メチル基は、音量調整ボタンのように、不要な遺伝子を抑制し、必要な遺伝子を活性化させる。一方、がん細胞ではこの調整パターンが乗っ取られており、がんの成長を促進する遺伝子だけが活性化している。正常細胞のDNAでは、配列全体にメチル基が点在しているが、がん細胞のDNAはほとんどが丸裸で、メチル基は特定箇所に小さなクラスターとしてみられるだけだ。

学術誌『Nature Communications』に掲載された論文で、クイーンズランド大学のチームは、乳がん、前立腺がん、大腸がん、リンパ腫に特徴的なメチル基配列を検出する手法を解説している。彼らはさらに、正常細胞のDNAとがん細胞のDNAは、水中でまったく違う特性を示すことを明らかにした。メチル基の配列パターンが、DNAの化学的性質を大きく変化させるためだ。「これまで誰も気づかなかった大発見です」と、カラスコーサは言う。

一連の実験により、研究チームはがんの新たな検査法を編み出した。まずはDNAサンプルを、金のナノ粒子を含む水に加える。金のナノ粒子は、溶液をピンク色に染める。そこにがん細胞のDNAが加わると、DNAがナノ粒子にある特定のパターンで結合するため、水はもとの透明に戻る。一方、健康な細胞のDNAを加えた場合、DNAとナノ粒子の結合パターンが異なるため、水は青く変色する。

「この検査は非常に検出力が高く、サンプルに含まれるがんDNAがごくわずかであっても発見が可能です」と、カラスコーサは言う。

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クイーンズランド大学の化学教授マット・トラウが率いるチームは、がん患者と健常者200人のDNAサンプルを利用してテストを行った。「これがすべてのがん診断につながる聖杯なのかどうかは、わたしたちにもまだわかりません。しかし、信じられないくらいシンプルながんの汎用マーカーを利用している点、またDNAシークエンスなどと違って、ラボに据え置きの装置が必要ない、安価で使いやすいテクノロジーである点が、非常に興味深いと考えています」と、トラウは話す。

研究チームは現在、まだ検査されていないさまざまな種類のがんと闘う患者を対象とした臨床試験の準備を進めている。

現在のがん検査は生検であり、医師は腫瘍が疑われる組織の一部を採取しなくてはならない。この手技は侵襲的であり、患者がしこりに気づくか、かかりつけ医にがんが疑われる症状を訴えることが前提だ。早期発見が可能で、かつ侵襲性の低い検査が導入されれば、がん患者のスクリーニングは劇的に変わるはずだ。

がん細胞のDNAは、特定の腫瘍の成長を促進させる変異を多数含む場合があるが、こうした変異はがんの種類によって異なるのが一般的だ。汎用検査は、がんの存在箇所や大きさを特定できるほどの精度はないものの、「この患者にはがんがあるのか?」という医師たちの疑問に、即座に答えを出してくれる。

ラボでの実験により、金ナノ粒子溶液の色の変化を見ることで、正常DNAとがんDNAを、ものの数分で、肉眼で識別できることがわかった。

「この検査をほかのシンプルな検査とあわせて実施すれば、がんの有無だけでなく、種類やステージも確定できる、強力な診断ツールになるでしょう」と、カラスコーサは言う。

マンチェスター大学がん研究所(Cancer Research UK Manchester Institute)のゲド・ブレイディは、「今回のアプローチは、血液サンプル中の腫瘍DNAの検出に向けた、すばらしい前進であり、血液を使った汎用がん検査の展望をひらくものです。ただし、臨床利用の可能性の全容を評価するには、今後さらなる臨床研究が必要です」とコメントした。

 

この記事は、The Guardianサイエンスエディターのイアン・サンプルが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。

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