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ウェアラブルデバイスは、未来派ドクターの「聴診器」だ

  • 未来
2019/11/28

モバイルアプリ企業「リインベントリー(Reinvently)」は、カリフォルニア州パロアルトを拠点に、医療用アプリを数多く開発している。ウェアラブル型の医療機器を通じて収集したデータを集約・表示するアプリもそのひとつだ。ウェアラブルデバイスとモバイルアプリを連携させることで、臨床医は患者をリアルタイムでモニタリングし、問題を特定して悪化を防ぐことができる。

こうした取り組みは徐々に普及しつつあるが、ウェアラブルデバイスの良し悪しはたいてい、連携するソフトウェアによって決まる。健康状態のモニタリングには、信頼性が高くてユーザーが使いやすいアプリが必要だ。つまり、重要なデータをわかりやすく表示し、問題を特定したらすぐにユーザーに警告してくれるアプリだ。患者の状態を知らせ、対処法を判断するアプリに、不具合や誤作動が起きれば、重大な結果を招く可能性がある。

 

 

リインベントリーがこれまでに開発してきたヘルスモニタリング用アプリには、高い評価を得ているものがある。バイオセンサー企業「プロフューザ(Profusa)」の「Lumee Oxygen Platform」と連携するアプリもそのひとつだ。Lumee Oxygen Platformは、臨床医がアプリを通じて、患者の細胞組織の酸素濃度をリアルタイムでつねに監視できるシステムで、重症下肢虚血などで危険な状態にある組織をモニタリングするのに役に立つ。

ほかにも、「ソティーラ・ワイヤレス(Sotera Wireless)」と連携するアプリの開発も手がけた。このシステムは、バイタルサイン(生体情報)を監視するワイヤレスモニターで構成されており、心拍数や血圧、皮膚温、呼吸数、心電図を記録する。臨床医が、患者の病態悪化を示す初期症状を発見するためのシステムであり、早期介入が可能となるので、治療でよりよい結果を得ることが可能だ。

最新医療機器技術を伝えるウェブジャーナル「Medgadget」は、リインベントリーのアルテム・ペトロフ最高経営責任者(CEO)から、ヘルスケア・モニタリング技術に関して話を聞く機会を得た。聞き手はコン・ヘイスティングス

Medgadgetリインベントリーがヘルスケア業界に関わるようになった経緯は?

 

 

アルテム・ペトロフ:初めからヘルスケア業界を征服しようなどと考えていたわけではありません。App Storeなどのアプリ配信サービスが2008年に始まってから、私たちはビジネス用アプリケーションを開発してきました。「mHealth(モバイル端末やウェアラブルデバイスを活用した医療・健康サービス)」へと事業を拡大するのは自然ななりゆきでした。私たちのチームは、ヘルスケア業界全般で質と技術に不均衡が生じていると考え、危機感を抱きました。自分たちならもっとうまくできるとわかっていたからです。チームの情熱が先にあり、それがわが社のビジネス戦略の原動力となっています。とりわけヘルスケア業界ではそうです。

Medgadgetウェアラブルセンサーによるデータ収集を含めて、モバイルアプリが医療データを記録・集約し、表示することの利点を大まかに説明していただけますか。

アルテム・ペトロフ:医療用アプリとウェアラブルデバイスには、本当に多くの利点があります。個人の健康意識が向上することから、よりよい患者データを医師に提供できることまで、さまざまです。医師はバイタルの確認をしてくれるかもしれませんが、ウェアラブルデバイスなら、データを次々と途切れずに提供してくれます。そうしたデータは、よりパーソナルで、状況に即しており、パターンに気がつきやすいのです。

医療用デバイスやソフトウェアは、患者が危険な状態にあることを自動で知らせてくれます。ロボットが人命を救ってくれるわけです! この種のテクノロジーは、骨折からがんまで、人間の目が見落としがちな物事を察知することに長けています。高性能コンピューターは数秒で生検の結果を出せますが、人間の医師は、1週間かそれ以上の時間を必要とする場合もあります。

Medgadgetリインベントリーがこれまでに開発してきた医療用モニタリング・アプリを紹介してください。

アルテム・ペトロフ:プロフューザの「Lumee Oxygen Platform」用アプリと、ソティーラ・ワイヤレスの「Visi Mobileシステム」を開発しました。ヘルスケア業界向けに開発したアプリには、現在、秘密保持契約下にあるものもあります。さらに、「Q.Care」という、訪問看護を受けている患者向けのオンデマンド・ヘルスケアアプリも手がけました。呼吸疾患専門のヘルスケア企業「BreathResearch」のために開発した「MyBreath」は、慢性閉塞性肺疾患(COPD)の教育ならびにトレーニング用アプリです。マサチューセッツ工科大学(MIT)で開催された国連主催の社会改革コンテスト「MIT Solve」では、数百ものアプリのなかから選出されて受賞しました。

Medgadget医療用アプリを開発するときに考慮すべき、最も重要なこととは? どのようにして不具合を最小限に抑え、患者のデータを保護しているのですか?

アルテム・ペトロフ:モバイルアプリには優れたデザインが重要であることを、決して甘く見てはいけません。アプリの性能評価基準はほぼすべてが、ユーザーインターフェース(UI)とユーザーエクスペリエンス(UX)に直接関係したものです。操作しにくくて、直感的に使えないアプリを使ってみようと思う人はほとんどいません。だからこそ、アプリのカテゴリーの大半では、ユーザー離脱率が80%なのです。UIUXがまずければ、機能が優れていても使ってもらえません。

Medgadgetアプリを開発する際に、規制当局と緊密な連携をとる必要がありますか?

アルテム・ペトロフ:はい。効果的で安全志向のヘルスケア業界内でビジネスをしようと思えば、それが唯一の方法です。米食品医薬品局(FDA)の承認を得ることから、「医療保険の相互運用性と説明責任に関する法令(HIPAA)」の順守に至るまで、いかなるmHealthデバイスにとっても、当局との連携は不可欠です。

とはいえ、そうした規制当局側は、私たちのクライアントと直接やりとりを交わすのが通例なので、私たちは状況に応じてアドバイスを提供するようにしています。どんな疑問や問題にも対応し、クライアントが承認を得られるよう、必要な事前準備に協力できる体制を整えています。製品が優れていたとしても、規制当局からしかるべきゴーサインをもらわなければ役に立ちませんから。

私たちはさらに、開発しているmHealth製品のすべてにおいて、必要な「電子健康記録(EHR:医療機関同士で情報を共有するのに不可欠な個人のデジタル医療データ)」を使えるようにし、その安全性の確保に努めています。それにより、製品の有効性が増すだけでなく、普及率が向上し、ほかのデバイスとも統合しやすくなります。

Medgadgetそういったシステムは、今後どのように発展していくと考えていますか?

アルテム・ペトロフ:そういった規制システムに対応するには、長い時間がかかります。製品開発が始まってもいないのに、FDAの承認申請が始まることも少なくありません。加えて、状況も変化します。進行中の研究に伴って、製品も変化します。フラストレーションを感じることが起こるのは、ほぼ間違いないことです。

FDAのファーストトラック(優先承認審査制度)のようなプログラムは、現状では薬剤に集中していますが、徐々にmHealthに広がっていくと私は見ています。難しいところは、常にあります。mHealthは、データに基づいて機能するものですし、データのセキュリティ対策を導入する際に、急ぎすぎるのは危険です。けれども、何かが変わらなくてはなりません。そして、医療用デバイスを対象にしたFDAの「Pre-Certパイロットプログラム」(ソフトウェア更新のたびに有効性や安全性を審査しなくても済むよう、品質管理などの一定基準を満たした企業に認定を与えて審査を効率化する取り組み)のようなものが、すでに定着しつつあります。

 

 

この記事は、Medgadgetのコン・ヘイスティングスが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。

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