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中国がレアアース生産を拡大、脅かされる米豪の生産計画

  • マテリアル
2020/2/18

(Bloomberg)──「Terms of Trade」は貿易戦争で反目し合う世界を読み解く日刊ニュースレターです。

スマートフォンから戦闘機まで、あらゆる製品に使われているレアアース(希土類)。その市場を中国が支配する現状を変えようという取り組みが、アメリカなどの国々で始まっている。だが、中国が生産の大幅拡大に踏み切ったことで、新たな挑戦が突きつけられている。

中国は2019年11月はじめ、2019年のレアアース年間生産枠を、過去最高だった前年から10%引き上げ、13万2000トンにすると発表した。この動きは、レアアースの世界的価格を下押しする可能性が高く、アメリカやオーストラリアなど、競合する国々にとっては打撃となる。米豪は11月18日、レアアース供給網の多様化を目指した新事業の促進で協力することを合意したところだ。

あなたがこの記事をスマートフォンで読んでいるのであれば、中国に感謝すべきだ。中国は、天然レアアースのおよそ70%を生産している。また、携帯電話や風力タービン、電気自動車、軍用装備に電力を供給する磁石ならびにモーター用の鉱物が取引される40億ドル規模の世界市場では、90%を牛耳っている。

アメリカと中国が貿易交渉で膠着状態に陥っていることから、中国がレアアースへのアクセスを制限するのではないかという懸念の声があがっていた。ところが、中国はむしろ生産を拡大している。

こうした動きは、新たなプロジェクトへの投資を模索する他国のレアアース企業を「資金繰りがタイトな状況」に追い込む可能性がある。そう話すのは、クリティカルメタル(重要鉱物)専門の市場調査会社アダマス・インテリジェンス(Adamas Intelligenceの幹部、ライアン・カスティル(Ryan Castilloux)だ。

まさにその標的となっているアメリカ企業が、MPマテリアルズ(MP Materials)だ。同社は、カリフォルニア州にあるアメリカ唯一のレアアース鉱山「マウンテン・パス」を運営している。ギャンブルの町ラスベガスから車で1時間足らずの場所にあるこの鉱山は、2015年にいったん操業休止に追い込まれたが、2018年に生産販売を再開した。

MPマテリアルズの内部事情に詳しい関係者が、機密情報だとして匿名を条件に明かしたところによると、同社は2019年の生産量について、倍増して3万トンになると見込んでいる。これは世界全体のおよそ15%だ。

マウンテン・パスで採掘されたレアアースは現在、中国に送られて処理されている。しかし、その体制は2020年末までに変わる可能性があると、JHLキャピタル・グループ(JHL Capital Group LLCのジェームズ・リティンスキー(James Litinsky)最高経営責任者(CEO)は述べる。同グループは、MPマテリアルズの株式を過半数保有している。

リティンスキーは電話取材で、自前の処理センターを2020年末までに完成させるべく、現在作業を進めているところだと語った。操業が始まれば、マウンテン・パスで採掘された全てのレアアースの処理が可能になるという。そうすれば、レアアースをアメリカの製造業者に直接売り込めるようになる。

リティンスキーは、「短期的な供給問題ばかりに目を向けると、大局的な視野を失ってしまう」と述べる。「数千万人もの雇用と、数兆億ドルのGDPを生み出すこと。それこそが中国の目的だ」

アメリカが望んでいるのは「公平な競争の場」だ、とリティンスキーは言う。「価格設定と供給に関して、中国が略奪的な行動をとるのではないかとわれわれは懸念している」

レアアース(希土類)は17種類の類縁元素の総称で、磁気的特性と光学的特性を持つ。強力な磁石に使われる「ネオジム(Nd)」や「プラセオジム(Pr)」、ターゲット材として使われる「イットリウム(Y)」など、綴りが難しそうな元素が含まれる。金や銀ほどの希少価値はないが、大量に採掘できることはめったになく、徹底的に処理を施さないとエンドユーザーが使える素材にならない。

中国政府は今から約30年前に、レアアースを戦略的資源と位置付け、外国企業などの採掘を禁止した。鉱物ならびに天然磁石の世界最大生産国である中国は、電気自動車メーカーから支援を受けている。そのひとつであるテスラ(Tesla Inc.)は、上海郊外にギガファクトリーを建設しているフォード(Ford Motor Co.も、最新の電気SUV「マスタング マッハE」を中国で生産することを検討中だ

ドナルド・トランプ米大統領は2019年7月、国防総省に対して、軍用装備に使われるレアアース磁石を増産するよう命じた。その背景にあったのは、中国がいついかなるときに輸出規制をかけるかわからないという懸念だ。

また、ここ1年のあいだには、米地質調査団がオーストラリアに赴き、豪鉱業会社ノーザン・ミネラルズ(Northern Minerals Ltd.のブラウン・レンジ・レアアース鉱山プロジェクトなどに足を運んでいる。

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中国以外ではレアアース供給最大手となる豪ライナス(Lynas Corp.20198月、米国防総省ならびに国防兵站局の双方と協議を行ったことを明らかにした。同社はオーストラリアに鉱山を、マレーシア東部に大型処理工場を持っているが、新たな施設をテキサス州に置く計画を進めていると、最高経営責任者(CEO)のアマンダ・ラケーズ(Amanda Lacaze)は201910月に語った。

アメリカとオーストラリアの当局者は11月に協議を行い、中国以外のレアアースならびにクリティカルミネラル供給網を強化することを目指して提携すると正式決定した。豪資源相のマット・カナバン(Matt Canavan)は11月半ばに出した声明で、両国の輸出金融機関が、採掘プロジェクトを促進するための新たな措置を検討する予定だと述べた。

グリーンランドからインドにいたるあまたの国々の開発企業も、新たな事業を始めるべく模索中だが、資金不足や価格変動に阻まれて難航している。ライナスは2013年に操業を開始して、いまでは世界第2位のレアアース供給企業となったが、年間利益を初めて計上したのは2018年のことだ。

豪シドニーを拠点とするOrd Minnettのアナリスト、ディラン・ケリー(Dylan Kelly)は、現時点では、中国以外でレアアースを生産できる大手企業はライナスしかないと指摘し、世界的供給網を多様化するために「真に必要なのは、未開発地域におけるプロジェクトに資金を提供すること」だと語る。「プロジェクトは世界各地に点在しているが、立ち上げようとして無残に失敗している」

執筆協力:David Stringer

当記事執筆者の連絡先:Yvonne Yue(ニューヨーク):yli1490@bloomberg.netJason Scott(キャンベラ):jscott14@bloomberg.net
当記事担当編集者の連絡先:Luzi Ann Javierljavier@bloomberg.netPhoebe Sedgmanpsedgman2@bloomberg.netReg GaleJoe Richter
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この記事は、BloombergYvonne Yue LiJason Scottが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。

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