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低公害車およびゼロエミッション車の有望な成長

  • 環境
2020/6/24

英国の自動車市場は、不安な時代を迎えている。自動車製造販売者協会(SMMT)が毎月公表する集計値を見ると、車両登録台数は減少の一途をたどっている。消費者信頼感指数と企業信頼感指数がともに低下し、それに伴って新車販売台数が減っているのだ。

しかし、数値をもう少し細かく見てみると、別の動向が浮かび上がってくる。低公害車(LEV)と無公害車(ZEV)の登録台数が着々と増えているのだ。かなり良い売り上げであり、ハイブリッド電気自動車(HEV)とバッテリー電気自動車(BEV)はブームと言って良い。

2019年11月までの年初来累計を見ると、車両登録の総数は、過去5年で最低を記録した2018年の同時期と比較して2.7%減少した。にもかかわらず、HEVは16%、BEVは136%も売上が増加している。もともとの売り上げが低いからこそ可能な数字であるとはいえ、そうした動きがあるのは間違いない。2019年11月だけを見ると、英国で登録された車両の10台に1台以上が、HEVかプラグインハイブリッド車(PHEV)、BEVのいずれかだった。

ドイツのオッフェンバッハにあるホンダのヨーロッパR&Dセンターで先進設計部門のシニアマネジャーを務めるパトリック・ポネック(Patrik Ponec)は、20年以上にわたって研究開発に携わってきた。同氏は、低公害車が数百台単位でしか生産されない、斬新で物珍しい存在だった頃から、数百万台規模で売れる主力事業になるまで、徐々に変化していく様子を目の当たりにしてきた。

炭素排出量の少ない低公害車が普及したのは、もちろん、気候変動に対する懸念がきっかけだ。まことしやかな反論があったとはいえ、そうした自動車は、ガソリンやディーゼルを燃料とする車両と比べて燃費に優れ、環境に与える全般的な影響も少ない。

英調査会社イプソス・モリ(Ipsos Mori)が実施した調査から、英国人の85%が気候変動を憂慮しており、52%は「非常に憂慮している」と回答したことがわかった。販売される車種が増えてきているので、環境により配慮した製品を選ぶことは容易になっている。また、技術の迅速な進化によって、バッテリー電源と従来型の内燃機関との差は狭まっている。

ポネックは次のように話す。「1990年代末にホンダが初代Insight(インサイト)を発表した当時、ハイブリッド構想でおもに重点が置かれていたのは、内燃機関(ICE)の燃費向上です。電動化によって小型化されたハイブリッドシステムは、インテグレーテッド・モーター・アシスト(IMA)と名づけられました。以来20年で、私たちは多くを学んできました。電池性能は大幅に進化し、最新ハイブリッド技術のインテリジェント・マルチモード・ドライブ(i-MMD)では、電気による駆動力の最大化に力を入れています。内燃機関は補完的な動力源といった感じで使われており、ハイブリッドは真の電気自動車にかなり近づいているのです」

ハイブリッドは一般的に、動力を完全電動化するという最終目標までの中継ぎとみなされている。マイルドハイブリッドやHEV、PHEVなどの低公害車は一連の通過点であり、消費者が炭素依存から脱却できるよう後押しする存在と考えられているのだ。

英国を走る350を超える車種のうち、低公害車に分類されるのは約80車種だが、そのうちBEVは21車種だ。店頭では激しい販売競争が繰り広げられているが、その裏側ではかなり高い確率で、異なる動力設計と動力技術のあいだで技術移転が行われている。

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「i-MMDシステムでは、できるだけ柔軟性を高め、異なる動力コンセプトでも入れ替えられるようにすることを中核のひとつに据えています」とポネックは話す。「ハイブリッド、プラグインハイブリッド、電気自動車、さらには燃料電池車を作る際、私たちは同じ設計を用いています」

内燃機関の車は世界的な経済見通しと密接に関係しているが、それと比べれば、低公害車と無公害車はそれほど大きな結びつきはない。とはいえそれらも、全体的な経済動向に左右されている。今後の市場拡大予測についてはかなりの意見の違いが見られるが、大半の調査は、低公害車や無公害車は今後もしばらく増え続け、2020年代後半になるとBEVを中心に急増するだろうと見ている。

デロイト(Deloitte)が、電気自動車の販売台数が200万台だった2018年を基準に分析を行って推測したところ、(BEVとPHEVを含む)電気自動車売上は2020年に倍増し、2025年には1200万台、2030年には2100万台まで販売台数が増加し、その70%はBEVとなるという。

こうした売上の増大は、2022年までにひとつの転換点に到達することをある程度踏まえた上での推測だ。その転換点とは、BEVの所有コストが内燃機関の車と同程度にまで下がることで、BEV所有の障害が少なからず取り除かれるときだ。カギになるのはバッテリー価格だ。需要が伸びれば、規模の経済に応じて価格は下がる。

このような推測は、それが正確であるか、欲を言えば悲観的な見通しであることを大前提としている。今後10年間が肝心だ。2050年までに二酸化炭素排出量の実質ゼロという目標を英国が達成するには、低公害車の速やかな普及が欠かせない。また、長期的に見れば、BEVが市場の主役になると予想されているとはいえ、その実現までに要する時間は、もっと多様な車種が混在するという当面の見通しにかかっている。

「自動車業界は、二酸化炭素の平均排出量を減らすよう求められており、それに向けて各技術が独自に貢献する必要があります」とポネックは言う。「個別に見れば、メリットが最も大きいのはBEVですが、市場浸透率は高くありません。BEVの利点を消費者に普及させるのは難しいのです。また、CO2排出量削減の効果に関しては、原油を採掘・生産する上流部門(アップストリーム)が重要です。一方で、HEVなら、消費者が最も妥協せずに済む技術を備えていますが、技術面はかなり複雑です。PHEVは双方のメリットを兼ね備えているものの、限界も伴います。私の考えでは、当面、BEVとHEVとPHEVという3つのシステムが共存していくことになると思います。それらの利用については、消費者とそのニーズに依存しますが、コンセプトの洗練度によっても、かなり左右されるでしょう」

 

この記事は、The GuardianのMatt Yousonが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。

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