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経済再建は「自然エネルギーで」IEAが各国政府に通達

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国際エネルギー機関(IEA)は2020年5月20日、各国政府に対して、コロナ危機後の経済回復を目指す施策の中心にクリーンエネルギーを位置付けるよう呼びかけた。IEAが同日に出したレポートは、世界全体で新設される再生可能エネルギー設備が20年ぶりに減少に転じると予測している。

IEAは、ピーク時には世界人口の半分以上が影響を受けたロックダウン(都市封鎖)による余波は「広範囲」に及ぶと警鐘を鳴らした。世界のエネルギー需要を急減させ、景気後退を深刻化させる恐れがある今回の危機に、各国政府は懸命に立ち向おうとしている。

IEAは2019年10月、2020年は自然エネルギーにとって困難の多い1年になることを予想していた。そして今回のレポートでは、再生可能エネルギー発電容量の2020年と2021年を合わせた2年間の成長率予想を10%近く切り下げた。

IEAはその理由として、サプライチェーンの混乱や、設備建設の遅れ、ソーシャル・ディスタンシング(社会的距離戦略)の実施、経済的問題を挙げている。

レポートは、電力セクター(太陽光や風力、水力)については、コロナ危機でもおおむね持ちこたえるだろうと述べている。その一方で、おもに輸送用に使われているバイオ燃料の市場は、世界的に人間の移動が凍結されていることと原油価格の急落により、「大幅に」様変わりするだろうとしている。

多くの国が、厳しい温室効果ガス排出目標を達成するために、再生可能エネルギーの利用を増やすことを約束している。IEAは、パンデミック後の経済回復計画を立てる各国政府に対し、再生可能エネルギーへの取り組みを倍加させるよう強く求めた。

IEAは2020年4月、世界全体のエネルギー関連CO2排出量が、2020年に最大で8%減少すると予想した。これは第2次世界大戦以来、最大の減少率だとはいえ、喜べることではないと釘を刺している。

「排出を構造的に減らせるようにするには、コロナ危機が訪れる以前から、すべてのセクターで再生可能エネルギーがより速く成長していなければならなかった」とレポートは述べている。

「パンデミックの数年前から認められていた成長スピードを取り戻し、それを上回るには、政策当局が復興の取り組みの中心に、再生可能エネルギー及びエネルギー効率化を含むクリーンエネルギーを据えなくてはならない」

-リバウンド-

IEAは最新予測で、再生可能エネルギーの総需要は2020年に増加する見通しだと述べた。その背景には、電力セクターで再生可能エネルギーが利用されていることがある。一部の国では、グリッド(送電網)に流れ込むエネルギーミックスのなかで自然エネルギーの占める割合が過去最高に達している。

その要因の一部には、多くの市場で自然エネルギーがグリッドに優先供給されていることと、ロックダウンの最中にエネルギー需要が減少したことがある。

また、2019年に発電容量が記録的に伸びたことも追い風となっている。グリッドに接続された新規設備による発電容量は192GW(ギガワット)で、2018年比で7%増となった。

IEAは、2020年に新たに稼働を始める再生可能エネルギー設備の発電容量について、2019年10月に立てた予測を下方修正し、約167GWになる見込みだと述べた。この数字は2019年比で13%マイナスにあたる。前年比で減少傾向に転じるのは、2000年以来、初めてだ。

それでも、世界全体の再生可能エネルギー総発電容量は、前年比で6%増となる。この増加分は、北米とヨーロッパを合算した発電容量を上回る。新設される設備の大半を占めるのは太陽光発電と風力発電だ。

一方、アメリカと中国はともに2020年と2021年、再生可能エネルギーの発電容量が大幅増となる見通しだ。政府の奨励策が終了する前に、企業側が設備を完成させようと急ぐことがその要因だ。

IEAはまた、2021年には発電容量の「リバウンド」が起こり、2019年の水準に近づくと予測している。2020年に延期されたプロジェクトの大半が稼働を始めるためだ。

– 新たな機会-

水力発電や洋上風力発電など、リードタイムの長い技術は、新型コロナウイルスの影響をさほど受けないと考えられている。

一方、レポートによれば、景気悪化によって深刻な打撃を受けることが予想されているのが輸送用バイオ燃料だ(バイオエタノールやバイオディーゼルといったバイオ燃料のことで、ガソリンやディーゼルと混合されて使われることが多い)。輸送用バイオ燃料の総生産量は、2020年に13%縮小するとみられている。

しかし、政府が緊急救済策に環境要件を盛り込めば、航空業界でチャンスが開けるとIEAは述べた。そしてフランス政府が、航空会社グループ、エールフランスKLM(Air France-KLM)の救済策のなかに、航空機の燃料は2%を持続可能な燃料から調達するという条件を盛り込んだ点に言及した。

コロナ危機が、自然エネルギーにとってのチャンスとなり、環境汚染度の大きい石炭などの化石燃料に永久に取って代わる可能性があると語る専門家もいる。

ノルウェーにある国際気候環境研究センター(Centre for International Climate and Environmental Research)で研究責任者を務めるグレン・ピータース(Glen Peters)は、AFP通信に対して次のように述べた。「コロナ危機が終わったとき、排出量は減っているかもしれない。再生可能エネルギーは相対的にみて、エネルギー業界での存在感を増してきており、最も汚染度が大きい化石燃料を排除しつつあるからだ」

 

この記事は、Digital Journalが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。