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MIT CSAILが開発する、触覚を持つ「ソフトロボティクス」

  • 技術
2020/8/24

マサチューセッツ工科大学コンピューター科学・人工知能研究所(MIT CSAIL)が発表した2つの技術論文では、ソフトロボティクス(生物の組織のような柔らかい素材でできた機械)の新たな用途が提案されている。さまざまな形、重さ、大きさの物体をつかむことが目標だ。

1つ目の研究は、既存の研究をベースにしたもので、折り紙からインスピレーションを得た、中空の円すい形をしたグリッパー(ロボットハンド)を使っている。対象物の上で折り紙形式で折り畳まれることによって、それをつかむ設計だ。

2つ目の研究では、人間が持つような微妙な感覚をグリッパーに与えるために、LEDライトと2台のカメラが使用されている。

ソフトロボティクスは「生物のような機械」を研究する分野だが、触覚を持たないことが制約となっている。グリッパーが、触れているものを感じ、指の位置を感じ取ることが理想だが、ほとんどのソフトロボットはそれができない。MIT CSAIL2チームのアプローチはどちらも、この問題が解決されているように見せている。

MITの教授とCSAILの所長を兼任するダニエラ・ラス(Daniela Rus)は声明の中で、「私たちは、世界を感じることで世界を見られるようにしたいと思っています。私たちのソフトロボットハンドは、センサーを搭載した皮膚を持ち、ポテトチップスのような繊細なものから牛乳瓶のような重いものまで、さまざまな物体を持ち上げることができます」と説明している。

ハエトリグサ

MIT CSAILとハーバード大学の科学者たちは2019年、さまざまな日用品を持ち上げることができるグリッパーのデモを披露した。このグリッパーは中空の円すい形をしており、物体を握るというよりは、3つの部品で包み込むように持ち上げる。グリッパーの力を測定するための実験では、ロボットに取り付けたグリッパーが、直径の70%、重量の120倍までの物体を無傷で持ち上げることに成功した。

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MIT CSAILの新しいチームは、デザインに改良の余地があると考えた。そして、人の手に近い汎用性や適応性を与えるため、触覚センサーを追加した。空気圧変換器に接続されたラテックス製の袋(ゴム風船)でつくられたこのセンサーを追加したことで、グリッパーは物体を分類し、より明確に認識できるようになり、ポテトチップスのような繊細なものを持ち上げることが可能になった。

MIT CSAIL gripper chip

シリコンチップ付きの触覚センサーは、ひとつは、グリッパーが自身の直径変化を記録できるよう、外周部分に取り付けられた。グリッパーの内側にも、接触力を測るためのセンサーを4つ取り付け、力やひずみによる圧力変化がわかるようにした。研究チームはこれらの変化をすべて計測し、Arduino Due上で動かしている物体検出アルゴリズムの学習に使った。

256のセンサーデータを取得し(計測は1秒間に20回)、平均をとる実験を10回行ったところ、アルゴリズムは、瓶、リンゴ、箱、プリングルズ(ポテトチップス)の缶については、100%の精度で分類した。別の瓶、たわし、缶、袋入りクッキーなど、分類の精度が80~90%の物体もあった(「缶のような瓶」は缶と認識され、歯ブラシは箱と認識された)。

こわれやすい物体を持ち上げる能力や、物体が滑り落ちそうなときに感知する能力を調べる実験も行われた。100回中の成功率は、物体が滑る速度によって異なり、滑る速度が速いときには最高100%の成功率を記録した。無作為に選ばれた20枚のポテトチップスを持ち上げる試験では、80%が割れずに持ち上げられたと、研究チームは報告している。

GelFlex

2つ目の論文は、GelFlexというグリッパーに関するものだ。指の内側には柔らかい半透明のシリコーンが貼られ、指の先端と中央に、カメラが1台ずつ搭載されている。さらに、指の内側と側面に反射インクが塗られ、カメラの周りにはLEDライトが埋め込まれている。

カメラには魚眼レンズが付いており、指の変形を細部まで撮影できる。この映像から、研究チームが訓練した人工知能(AI)モデルが、指の曲がり具合、つかもうとしている物体の形、大きさなどの情報を抽出する。

デザインの工夫とAIモデルのおかげで、GelFlexは、ルービックキューブ、DVDのケース、アルミニウムの塊など、あらゆる物体を持ち上げることができる。実験では、物体をつかむ位置の平均誤差が0.77ミリだった。これは人の指より優秀だ。さらに、さまざまな筒や箱を、80回中77回にわたって正確に認識した。

MIT CSAIL gripper chip

ガラス箱を持ち上げるグリッパー
画像クレジット:MIT CSAIL

将来的には、固有感覚(proprioception:自分の動きに関する感覚)と触覚のアルゴリズムを改善し、視覚センサーを搭載し、ひねりや横方向の屈曲など、より複雑な指の形状を認識できるようにしたいと研究チームは考えている。8月末までバーチャル開催されている「ロボティクスとオートメーションに関する国際会議」で、もう1つのチームとともに研究成果を発表する予定だ。

GelFlex論文の筆頭著者ユー・シー(Yu She)は声明の中で、「私たちのソフトフィンガーは、精度の高い固有感覚を持ち、つかんだ物体について正確に予測できます。また、互いに作用しあう環境や自身を傷つけることなく、かなりの衝撃に耐えることができます」と述べている。「自由自在に曲がる外骨格を持つソフトフィンガーと、カメラを使った高解像度センシングによって、私たちはソフトマニピュレーターの能力を大きく開花させることに成功しました」

この記事は、VentureBeatのKyle Wiggersが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。

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