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伸縮性と耐久性を併せ持つ、次世代の金属薄膜電極の設計とは

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柔軟性のある電極は、スマートウォッチ、フィットネス・トラッカー、健康管理デバイスなど、多種多様なウェアラブル技術の開発にとって決定的に重要になる。ウェアラブル機器内の電極は、理想としては引き伸ばされたり歪められたりしても電気伝導性が保持されるべきだ。

これまでに開発された柔軟な電極の多くは、弾性のある基板上に配置された金属薄膜で構成されている。この種の電極の中には柔軟で電気伝導性の高いものもあるが、金属に亀裂が生じることがあり、これが原因で意図せず断線が起こる可能性がある。

米イリノイ大学アーバナ・シャンペーン校の研究チームが最近発表した新しい設計を採用すれば、引き伸ばされたり歪められたりしても電気伝導性が保持される、ひずみに強い柔軟電極の開発が可能になるかもしれない。英科学誌『Nature Electronics』に2021年2月1日付で掲載された論文で概要が説明されたこの設計では、薄い2次元(2D)中間層を導入することにより、亀裂発生のリスクを低減し、金属薄膜の電気伝導性を保持している。

A design to improve the resilience and electrical performance thin metal film based electrodes
2次元(2D)中間層を導入することにより、金属薄膜の亀裂を防ぎ、劣化を遅らせることを可能にする研究の概念図。
画像は金属2Dインターコネクターを組み込んだフレキシブルな発光ダイオード(LED)機器。
Credit: Cho et al.

研究を実施したチームの1人、ソンウー・ナム(SungWoo Nam)は、Tech Xploreの取材に対してこう語っている。「柔軟電極で意図せず発生する断線の問題はこれまで未解決であり、我々はこの課題に対処したいと考えていた。こうした断線は一般的に、機器の使用中に発生する不可避の力学的破断によることが多い。これが、フレキシブルなウェアラブル電子機器の寿命を著しく制限している」

「今回の研究は、2D中間層の導入によって金属薄膜の亀裂挙動を変化させることで、ひずみが加わった際にも金属薄膜自体の電気伝導性が維持されることを初めて示した。このような電気伝導性の維持については、『力学的延性(mechanical ductility:固体に力を加えた時、弾性限度を越しても材料が破壊せずに塑性的に変形できる特性のうち、特に引張力によって引き延ばすことのできる性質)』との類似性から、『電気的延性(electrical ductility)』と命名した」

ナムと研究チームは、厚さが原子1個分という2D中間層(グラフェンなど)を金属薄膜電極に導入すると、破断のリスクが減少してさまざまな程度のひずみが加わった状態で電極の電気伝導性が向上することを明らかにした。研究チームはこの特性を「電気的延性」と呼んでいる。これが起こる理由は、2D素材中で生じる強いファンデルワールス力と弱いファンデルワールス力が特異な座屈変形を引き起こし、電極の金属薄膜の劣化を遅らせるからだ。

「結果として、金属薄膜に『制御された』亀裂が生じることにより、実質的に電気伝導を増強させることが可能になる」と、ナムは説明する。「2D中間層のアプローチは、特定の金属と2D素材という組み合わせに限定されるものではなく、むしろ現在のウェアラブル電子機器で使用されているさまざまな金属ベース部品の電気機械的信頼性を高めるための、種々の実行可能な戦略を浮き彫りにする。これは、ウェアラブル電子機器業界にプラスの影響をもたらす可能性がある」

ナムと研究チームが導入した設計は、金属薄膜をベースとする幅広い種類の電極に適用できる可能性がある。研究では、柔軟性のある発光ダイオード(LED)デバイスの作成にこのアプローチを用いることで、その実行可能性を実証した。

注目すべきは、この戦略により一般に使用されている電極の電気機械的信頼性を、さまざまな変形を加えた状態の下で大幅に向上させること、具体的には電極の電気抵抗を数桁減少させて安定した抵抗性を示す領域を拡大させることが可能であると明らかにした点だ。

今回の研究は将来、新しい電極の開発に重要な影響をもたらす可能性がある。具体的には、新しい電極設計を採用して、より耐久性が高く、より高性能のウェアラブル機器の製作につながるかもしれない。

「今回の研究成果にとりわけ興味を持つ可能性がある人々は、柔軟性のある電極や配線などの、金属薄膜ベースの電気部品を備えたフレキシブル/ウェアラブル電子機器の開発に取り組んでいる人たちだ」と、ナムは指摘する。「我々は今後、このコンセプトを他のさまざまな導電性材料に拡張することに取り組みたいと考えている。さらに、このアプローチの拡張可能性と、これがフレキシブル/ウェアラブル電子機器に与えうる影響について調査していきたい」

詳細情報:Strain-resilient electrical functionality in thin-film metal electrodes using two-dimensional interlayers(2D中間層を用いた金属薄膜電極における、ひずみ弾性電気機能性)Nature Electronics(2021). DOI: 10.1038/s41928-021-00538-4.

© 2021 Science X Network

原文:A design to improve the resilience and electrical performance thin metal film based electrodes(2021年3月1日発行、同日にhttps://techxplore.com/news/2021-03-resilience-electrical-thin-metal-based.htmlより取得)

当記事は著作権対象です。個人の学習または研究を目的とした公正利用の場合を除き、明示的許可のない部分・全体複製は禁じられています。当コンテンツは情報提供のみを目的に発行されました。

この記事は、Tech Xploreが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。