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未来の飛行機は“家庭の生ごみからつくる燃料”で空を飛ぶ?
商用航空は、世界の炭素排出量の約3%を占める。しかし航空業界は、持続可能なジェット燃料を開発するという形で、積極的に環境対策を模索している。そのひとつが、家庭の生ごみから燃料をつくる技術の開発だ。
『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』に2021年3月に掲載された研究では、コロラド州ゴールデンにある米国立再生可能エネルギー研究所(NREL)などの研究者から成るチームが、食品廃棄物を既存エンジンで使用できる持続可能なジェット燃料に変える方法を詳述している。
堆肥や食品廃棄物などのバイオマスは、有機物を原料とする再生可能な液体燃料であるバイオ燃料に変換できる。再生可能なバイオ燃料として一般的なのはエタノールとバイオディーゼルだが、持続可能な航空燃料を製造するプロセスは、より複雑になる。
航空機で使われている既存のエンジンで利用するには、現在使われている石油由来のジェット燃料に近いものでなければならない。航空機のエンジンを異なる燃料用につくり変えるには時間がかかるため、今すぐ使用可能な燃料を開発することが目標になる。
研究チームは、古い食品廃棄物を発酵させて得られる揮発性脂肪酸を利用し、燃料に入れて使用できる単純なパラフィン分子に変換することに成功した。化学的には、従来の化石燃料とそれほど変わらない。バイオマス由来の持続可能な航空燃料は、動植物から採取された油や脂肪、油脂なども含めてほかにも存在するが、増え続ける食品廃棄物を航空機の燃料として活用することで、その可能性はさらに拡大する。
論文の著者であるNRELの主任研究技師デレク・ヴァードン(Derek Vardon)と、筆頭著者である博士研究員のナビラ・ハク(Nabila Huq)は、現在業界で求められている混合比率は、従来の石油ジェット燃料90%と代替ジェット燃料10%だが、研究チームの燃料はこの比率で機能したと説明する。また、研究チームは70:30の混合比率まで可能であることを示したが、現実にこの比率を実現するには、さらなる時間とテストが必要だ。
ヴァードンは、大手企業が持続可能な航空燃料の開発に熱心である理由として、現在のバッテリー技術ではバッテリー駆動の商用機は実現できないことなどを挙げている。バッテリー駆動の航空機は、重すぎて長距離飛行ができないのだ。そのため、従来の燃料と同じ働きをする燃料は、炭素排出量の多い化石燃料をよりシンプルに代替するものになる。
「マイクロソフト、アマゾン、フェデックス(FedEx)など、持続可能な航空燃料の使用を検討している企業が、この1年間で急増している」
ヴァードンによれば、このプロセスで使用される含水廃棄物は、通常は埋め立てられ、分解の過程で温室効果ガスを排出するため、持続可能な航空燃料の製造と使用は、規模が拡大した場合、カーボンフットプリントがマイナスになる可能性さえあるという。「これを実現し、持続可能な航空燃料の要件を満たすことは、決して取るに足りないことではない」
ただしヴァードンは、持続可能な航空燃料をつくることは、ダーツボードの「中心」を射るぐらい難しい、とも述べている。安全性と性能に関する厳しい規制がその理由だ。
こうした持続可能な燃料は、航空業界を排出量ネットゼロへの道に導くだけでなく、燃焼時のすす粒子の発生を抑えることにもつながる。すす粒子は、航空機の排気ガスによって飛行機雲が発生する際に、その核となる物質だ。こうした雲は、大気中に熱を閉じ込める「ブランケット」の役割を果たす。
製品を市場に早期投入するため、研究チームは「既存のジェット燃料の仕様に合わせ、あまり大規模な変更は行わないようにした」とハクは説明する。
民間航空会社は、炭素を大量に排出するプロセスに対する、低コストで持続可能な解決策を見つけようとしている。2050年までに、二酸化炭素の正味排出量を50%削減するなど、積極的な持続可能性目標を業界全体で掲げているのだ。サウスウエスト航空の燃料サプライチェーンマネジメント担当シニアディレクター、マイケル・オーブション(Michael AuBuchon)は声明のなかで、「私たちは、商業的に実現可能なSAF(持続可能な航空燃料)を現実のものとし、サウスウエスト航空の未来の一部とするための旅を続けており、NRELと提携できることを喜んでいる」とコメントしている。
このような研究を進めていくうえでの大きな課題は、完全に再生可能な燃料で、航空機のエンジンを動かすことができるかどうかだ。ロールス・ロイスは最近、自社のエンジンで100%持続可能な航空燃料のデモを行い、成功を収めた。「こうした燃料は荒唐無稽なものではなく、私たちはこれらの問題を解決できる」とヴァードンは述べている。
この記事は、Popular Scienceのシェーナ・モンタナリ(Shaena Montanari)が執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。