CLOSE
About Elements
美しい未来のために、
社会を支えるテクノロジーを
TANAKAは、「社会価値」を生む「ものづくり」を世界へと届ける「貴⾦属」のスペシャリスト。
そして、「Elements」は、わたしたちのビジネスや価値観に沿った「テクノロジー」や「サステナビリティ」といった
情報を中⼼に提供しているWEBメディアです。
急速にパラダイムシフトが起きる現代において、よりよい「社会」そして豊かな「地球」の未来へと繋がるヒントを発信していきます。
2021年の温室効果ガス排出量は「史上2番目の増加率」に:IEA予測
2021年の二酸化炭素排出量は、史上2番目に大きな年間増加率で増加すると予測されている。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに伴う不況からの回復のため、各国が景気刺激策として化石燃料に資金を投入しているためだ。
2021年の排出量増加規模は、10年前に起きた金融危機後の大規模な回復に次ぐものであり、各国政府が早急に対策をとらなければ、気候危機を回避する望みが絶たれるだろうと、国際エネルギー機関(IEA)は警告する。
排出量増加の主要因は、発電のために使われる石炭の量が急増していることだ。化石燃料のなかでも最悪の汚染源とされている石炭の使用はアジアが中心だが、米国でも増加傾向にある。再生可能エネルギーの価格が急落し、石炭より安価になっているにもかかわらず、石炭使用量が増加しているのは憂慮すべき事態だ。
エネルギーと気候変動に関する世界的権威のひとりであるIEAのファティ・ビロル事務局長は、ガーディアンの独占取材に対し、次のように述べた。「衝撃的な事態であり、深く懸念している。各国政府は現在、気候変動は最優先課題だと表明している。一方で我々は、史上2番目の排出量増加を目の当たりにしている。本当に落胆させられる」
世界の気温上昇を摂氏1.5度以下に抑えるためには、この10年間で温室効果ガス排出量を45%削減する必要があると科学者たちは警告している。大気中の二酸化炭素濃度が上がりすぎて、温暖化が危険なレベルまで進行するのを避けるには、2020年代の10年間のうちに、全世界が方向転換しなければならない。しかし、コロナ危機からの回復に伴う現在の排出量増加の規模は「幸先のいい出だしとは到底言えない」と、ビロルは述べる。
ビロルは現在の排出量増加について、金融危機後の状況に似ていると指摘する。当時、各国は安価な化石燃料エネルギーで経済の活性化をはかり、結果として2010年の排出量は6%以上も増加した。「同じ過ちを繰り返す流れに戻ってしまったようだ」と、ビロルは言う。「今回は2010年以上に失望している」
新型コロナウイルス感染症のパンデミックに伴うロックダウンの影響で、2020年の排出量は全世界でマイナス7%という記録的減少をみせた。しかし、2020年末には排出量はすでに増加に転じており、一部地域では2019年の水準を上回った。
IEAの予測によると、2021年の排出量は2019年の水準をわずかに下回るものの、増加傾向となる。2022年には旅客機の往来が復活し、さらに増加ペースが上がる可能性があるとビロルは言う。航空関連は通常、世界の排出量の2%以上を占めるが、過去1年間はゼロに等しかった。
ビロルは各国政府に対し、新たな気候変動対策を早急に打ち出し、コロナ危機からのグリーン・リカバリーを目指すよう求めた。「私は2020年に、コロナ危機からの経済回復は環境保全に資する持続可能なものであるべきとの希望を述べた。しかし今回の数値は、現在の回復が気候の面でまったく持続可能でないことを示している」
ジョー・バイデン米大統領は、40カ国の首脳が参加した4月の気候変動サミットで議長を務め、各国政府に対して、今後10年間の排出量削減に積極的に取り組むことを促した。このサミットは各国が方向転換し、グリーン・リカバリーに向けた政策を実行に移すチャンスだと、ビロルは言う。
「各国政府が明確な意思を示し、即座に行動すれば、すでに存在する安価なクリーンエネルギー技術を生かして、現状への失望を良い結果に転じることができる」とビロルは主張する。
IEAは、エネルギーに関するデータの世界標準とされており、2021年の予測は、既存のエネルギー源や今後稼働が予定されている新規プラントのデータなどの包括的な推定値に基づいている。こうしたデータによると、化石燃料はすでに2020年末の段階で2019年の水準を上回っていたが、2021年も現時点で増加傾向が続いている。
IEAが4月20日に発表したグローバル・エネルギー・レビューによると、温室効果ガス排出の大部分を占める、エネルギー使用に起因する世界の炭素排出量は、2020年には減少していたが、2021年は15億トン増加する見込みだ。これにより、2021年の二酸化炭素排出量は、前年比5%増の330億トンになると予測される。世界の石炭需要は、5年以上にわたって減少し続けていたが、2021年は4.5%増加し、過去最大だった2014年の水準に近づく見通しだ。
中国は2020年に「実質排出量ゼロを2060年までに実現する」と約束したにもかかわらず、多数の石炭火力発電所の新設を計画している。中国政府が2021年3月に発表した5カ年計画は、2030年までの排出削減にほとんど言及していない。しかし、米国のジョン・ケリー気候変動担当大統領特使が急遽上海を訪問したあと、米国と中国は今後10年間の温室効果ガス排出削減における協力を宣言した。
石炭使用量は米国でも急増しており、2013年以来の減少傾向が逆転した。これは、天然ガスの価格高騰により、発電に利用される天然ガスが石炭に切り替えられている結果だと、ビロルは指摘する。
ドナルド・トランプ前大統領は、バラク・オバマ元大統領が導入した火力発電における石炭使用の抑制を目的とした規制を撤廃した。バイデン大統領は、再生可能エネルギーへの転換を加速させるため、さらなる施策を検討している。
気候経済学者で、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスのグランサム気候変動研究所の所長を務めるニコラス・スターン(Nicholas Stern)は、今回のIEAの発表について、「パリ協定に沿って排出削減を達成するため、各国が一層の切迫感をもって炭素ゼロ社会への転換を加速させなければならないことを示している」と述べた。「環境汚染を引き起こす従来のあり方と決別して経済を再建する、またとない歴史的機会が今まさに訪れている。とりわけ、脱石炭を早急に進めるべきだ。石炭利用の拡大ではなく縮小が、力強く持続的な経済回復をもたらすだろう」
この記事は、The GuardianのFiona Harvey環境通信員が執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。