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セレンは大陸地殻深部の微生物の生命を支えるかもしれない

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過去数十年にわたって国際的に実施されてきた海底掘削調査により、海底のさらに下に大規模な地下生物圏が存在する証拠が得られている。そこでは、海底直下を循環する流体の運ぶ化合物から生み出されるエネルギーが、地球の奥深くで生態系を織りなす微生物を支えている。一方、大陸の地下にも同様の生物圏が存在するが、そうした場所へのアクセスは海底と比べて難しいため、地下における化学無機栄養細菌(化学合成独立栄養細菌)の役割をめぐる理解は、海底と比べてはるかに限定的なものにとどまっている。

大陸の地下生物圏のサンプルを直接採取できる場所は、世界全体でも一握りしかない。その大半は始生代クラトン(始生代の地質体)など、地球最古級の大陸地殻の断片だ。そうした場所では、地中深くの裂け目が流体の経路として機能しており、それがなければ生存に適さない生息環境に、微生物にとって重要な栄養素を届けていることが示唆されている。

こうしたシステムでは、セレン(Se)という元素の利用が重要な役割を担っている可能性がある。というのも酸化セレンの還元は、硫酸塩の還元よりもはるかに多くのエネルギーを生み出すからだ。したがって少量のセレンであっても、適切な物理化学的条件が整っていれば微生物の活動を支えられる可能性がある。

ブラジルとドイツの科学者が率いる国際チームは、セレンを豊富に含むプラチナ‐パラジウム(Pt-Pd)の岩塊を調べた。この岩塊が採取されたブラジルのミナスジェライス州にある漂砂鉱床は、パラジウムが最初に特定された場所だ。

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ブドウの房状をしたPt-Pd塊の反射電子(BackScattered Electron:BSE)像

そうしたPt-Pd塊はバイオフィルムで覆われているものの、その形成についてはまだよくわかっていない。そこで、高精度のSe同位体データに微量金属データとプラチナ‐オスミウム(Pt-Os)年代測定法を組み合わせることにより、Pt-Pd塊の形成プロセスを検証し、可能性のある微生物作用の特定を目指した。

この複合的なデータから、分析対象のPt-Pd塊がおよそ1億8000万年前に形成されたことがわかった。おそらく、地下800mほどに位置する70℃の母岩の珪岩中で、もともとあった鉱脈鉱物(Vein minerals)が置換されて生じた可能性が高い。セレンやその他の生物と関係の深い元素(ヨウ素、有機炭素、窒素)の多さと、Se同位体の組成を表すδ82/76Se値が、天然標本でこれまでに測定されたものとしては極めて大きなマイナス値であること(-17.4%~-15.4%)は、微生物起源の特徴と一致している。非生物源のプロセスである可能性を完全に除外できるわけではないものの、この研究では、大陸の地下生物圏におけるSe依存微生物の活動が、Pt-Pd塊に記録されている可能性が高いことが示唆されている。

Se同位体分析を実施したステファン・ケーニッヒ(Stephan Konig)とベンヤミン・アイクマン(Benjamin Eickmann)によれば、大陸の地下生物圏からサンプルを採取する難しさは、岩塊などの風化に耐えうる鉱物に新たな同位体プロキシデータを適用することで回避できる可能性があるという。この新しいアプローチを用いれば、大陸の地下生物圏の理解を深めるために必要な多くの情報が得られる可能性がある。

研究論文:“Extreme fractionation of selenium isotopes and possible deep biospheric origin of platinum nuggets from Minas Gerais, Brazil”

この記事は、SpaceDaily.comが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。