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米アクロン大学の高分子科学者チームが、大規模エネルギー貯蔵の新技術を開発

  • 技術
2021/10/18

電気自動車(EV)の販売台数は、ここ数年で指数関数的に増加している。その動力として、太陽光や風力などの再生可能エネルギー源のニーズも高まっている。国際エネルギー機関(IEA)によれば、2020年現在、米国では180万台近い電気自動車が登録されており、2016年の3倍以上にのぼっている。

電気自動車を走らせるには、いつでもどこでも電力を利用でき、遅滞なく充電できることが求められる。だが、太陽光や風力は間欠性のエネルギー源であり、必要なときにいつでも利用できるわけではない。そのため、太陽光や風力が生む電力を無駄にせずにあとで使用できるよう、電力を貯蔵する必要がある。

そこで登場するのが、米アクロン大学高分子科学・高分子工学研究科のユー・ジュー(Yu Zhu)教授が率いる研究チームだ。同チームは、そうした重要なエネルギーをより安定的に貯蔵する方法を開発している。

現在のガソリンスタンドと同じように、充電ステーションでEVをいつでも充電できるようにするためには、電力をためておく貯蔵システムが必要となる。この種のシステムに最も適しているのが、低コストで拡張可能なレドックスフロー電池(RFB)だ。しかし現在のRFBでは、高コストで、環境にとって有害な電解質が使われている。

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新たなカソード液で稼働するレドックスフロー電池。米アクロン大学のユー・ジュー博士が開発に貢献した技術の一部だ。

最近ではRFBの将来的な電解質として、水溶性有機物質が提案されている(水性有機RFB:AORFBと呼ばれる)。有機ベースの電解質は、再生可能な供給源から調達でき、きわめて低コストで製造できる。だが、安定した水溶性有機電解質材料、とりわけ正極電解質(カソード液)の欠如は、AORFBの大きな障害になっている。

ジューの研究チームは、ウェイ・ワン(Wei Wang)博士率いる米パシフィックノースウエスト国立研究所チームとの共同研究により、これまでで最も安定性の高いAORFBのカソード液(正極電解質)の開発に成功した。この技術を用いた電池では、6000サイクルにわたって容量の90%超が維持されることが実証された。つまり、1日1サイクルのペースで、16年以上にわたって途切れることなく使用できる計算になる。この研究は先ごろ、科学誌『ネイチャー・エナジー』で発表された。ジューが指導する博士課程の学生であるシャン・リー(Xiang Li)とユンユー・ライ(Yun-Yu Lai)らと連名での研究だ。

「高性能RFBの開発は、電力貯蔵システムのカテゴリーを拡充し、間欠性である再生可能エネルギーの欠点を補い、ひいては自動車などの電力設備の可用性を大幅に高めるはずです」とジューは言う。「水性有機RFBの性能を大きく向上させるためには、新たなカソード液の開発が喫緊の課題です」

ネイチャー・エナジーに掲載された論文のなかで、研究チームは、最新のAORFBカソードを実証しただけでなく、水における溶解度(エネルギー密度)を高めることを目的とした、まったく新しい水溶性カソード液の設計戦略も提示している。

この戦略では、親水性官能基を付加して分子の溶解性を高めるかわりに、分子の対称性を変化させ、それにより溶解性を劇的に高めている。研究チームは、この新たな設計戦略を用いて、RFBにさらに磨きをかけられる新材料を設計する計画だ。

この研究で開発された技術に関しては、すでに特許が申請されている。この材料の拡張性については、アクロン大学から独立して生まれた会社アクロン・ポリエナジー(Akron PolyEnergy)で、さらに研究が進められる予定だ。ジューが共同創設者である同社は、リチウムイオン電池やフロー電池などのエネルギー貯蔵装置の材料開発に力を入れている。

研究論文

この記事は、SpaceDaily.comが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。

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