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IEA:2050年までのCO2排出量実質ゼロ達成には、低炭素水素に1.2兆ドルの投資が必要

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要点:

  • 国際エネルギー機関(IEA)が2021年10月4日付で発表した報告書によれば、370億ドル(約4兆2300億円)の政府支出と3000億ドル(約34兆3300億円)の民間投資が後押しとなり、水素製造用の水電解装置の生産能力は2030年までに全世界で89GWに到達する可能性があるという。
  • ただし2050年までに世界が実質排出量ゼロを達成するために必要な速度で水素産業を成長させるには、1兆2000億ドル(約137兆3200億円)の支出が必要になるとIEAは予想しており、この金額には遠く及ばない。
  • 燃料電池水素エネルギー協会の会長兼CEOフランク・ウォラク(Frank Wolak)によれば、水素を利用するには、風力エネルギーや太陽エネルギーとは異なる新しいインフラへの投資が必要だという。また、業界の成長を加速させるには、政府の関心を高める必要があるが、それは実現しつつあるとウォラクは言い添えている。

インサイト:

世界のリーダーたちからの関心が高まっているにもかかわらず、水素産業の成長は、IEAが予想する世界の脱炭素化に必要なペースより遅れている。

国際エネルギー機関(IEA)のファティ・ビロル(Fatih Birol)事務局長は報告書のプレスリリースで、「水素に関しては出だしで失敗した経験が何度かあるため、成功して当然と考えることはできない」と述べている。「ただし今回は水素をよりクリーンに安価に、そして経済のさまざまなセクターで利用できるようにするための心躍る進歩を我々は目の当たりにしている。各国政府は、低炭素水素の成長を妨げている障壁を低くするため、迅速な行動を取る必要がある。世界が2050年までに実質排出量ゼロを達成するチャンスを得るには重要なことだ」

これらの目標を達成するには、低炭素水素が、化石燃料由来の水素に対してコスト競争力を持つ必要がある。現在の均等化原価は、1キログラム当たり0.50~1.7ドルだ。これに炭素回収を加えると、1キログラム当たり1~2ドル、電気分解を用いてカーボンフリーの水素を製造すると1キログラム当たり3~8ドルのコストがかかる。

報告書によれば、低炭素水素のコストを従来の水素と同等まで下げるには、研究とインフラに巨額の公共投資を行う必要があるという。報告書は研究やインフラ支出の増加とともに、国家的な水素戦略とロードマップ、低炭素水素への新たなインセンティブ、新しい認可要件を求めている。IEAによれば、現在17カ国の政府がこのような計画を策定し、20カ国が政策づくりの計画を発表しているという。

ウォラクはこの報告書で示した目標について、水素経済の規模拡大に必要なものを正確に反映している可能性が高いとしながらも、その課題の壮大さが、世界の多くの政府、特に米国が、IEAのスケジュールに後れを取っている一因ではないかと指摘している。

「合わせて数兆ドルの投資が必要であり、政府の支援で民間投資を加速させる必要がある」とウォラクは述べる。「私は確かに、世界の民間企業は莫大な資金を投じることができると考えている。しかし、新しい技術を採用するのであれば政府がその流れを加速させなければならない」

政府と業界のリーダーは、この1年でようやくその必要性を認識したようだとウォラクは続ける。世界中の企業が、水素関連の重要な取り組みを発表しており、エア・リキード(Air Liquide)、トタルエナジーズ(TotalEnergies)、VINCIは10月1日、クリーンな水素インフラに特化した15億ユーロの基金を新設すると発表した。この基金はすでに、当初の資金として8億ドルを確保している。さらにウォラクによれば、米国では議員たちが、水素製造を対象にした税額控除や、水素インフラへの90億ドル超の投資について話し合っているという。

「こうしたトレンドは、ここ1年で急速に関心と注目を集めている。私が記憶している限りでは、これほど関心や注目が高まったことはない」とウォラクは述べる。「もうひとつ指摘しておくべき点は、再生可能資源に関するこれまでの取り組みでは必要なレベルの多様化を実現できない、と政府が認識し始めていることだ。そうした認識が拡大し、加速している」

この記事は、Utility DiveのEmma Penrodが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。