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CO2を燃料に変えるリアクターが、地球温暖化の緩和と火星移住の実現を目指す

  • 未来
2021/11/15

シンシナティ大学のエンジニアたちは、温室効果ガスを燃料に変換する新たな方法を開発している。気候変動対策と、火星から宇宙飛行士を帰還させるプロジェクトの両方の実現を目指すものだ。

シンシナティ大学工学・応用科学部のアシスタント・プロフェッサーを務めるジンジェ・ウー(Jingjie Wu)は学生たちとともに、炭素触媒を使用したリアクターによって二酸化炭素をメタンに変換することに成功した。フランスの化学者である故ポール・サバティエ(Paul Sabatier)にちなんで「サバティエ反応」と呼ばれるこのプロセスは、国際宇宙ステーション(ISS)で宇宙飛行士が吸う空気から二酸化炭素を除去し、ロケット燃料を生成してステーションを高軌道に保つことにも利用されている。

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触媒を利用して、二酸化炭素をメタンに変換するリアクターを手に持つ、シンシナティ大学の化学工学者ジンジェ・ウー(Jingjie Wu)。今回の研究に基づき、いずれは大気中からの二酸化炭素の除去が可能になるだろうと彼は楽観視している。 Image Credit: Andrew Higley/UC Creative + Brand

だが、ウーはもっと壮大な考えを持っている。

火星の大気は、ほぼすべてが二酸化炭素で構成されている。宇宙飛行士は、火星に到着してから必要な燃料をつくることで、帰還時に必要な燃料の半分を節約できるはずだと、ウーは言う。

「火星のガソリンスタンドのようなものです。二酸化炭素をこのリアクターに通せば、ロケット用のメタンを簡単に生成できます」と、彼は語る。

米国のシンシナティ大学やライス大学、中国の上海大学、華東理工大学の共同研究による今回の結果は、学術誌『Nature Communications』に掲載された。

ウーの化学工学者としてのキャリアは、電気自動車用の燃料電池の研究からスタートした。しかし10年ほど前から、彼の研究室は二酸化炭素の変換に注目し始めた。

「温室効果ガスが今後、大きな社会問題になると気づきました」と、ウーは言う。「社会の持続可能な発展のためには二酸化炭素が大きな課題であることに、多くの国々が気づいたのです。だからこそ、カーボンニュートラルを達成する必要があると私は思います」

米国のバイデン政権は、2030年までに温室効果ガス汚染を50%削減し、2050年までに再生可能エネルギーに立脚した経済を実現するという目標を掲げている。

「それはつまり、二酸化炭素を再利用する必要があるということです」と、ウーは言う。

ウーと学生たち(筆頭著者は、シンシナティ大学博士課程に在籍するティアンユー・チャン[Tianyu Zhang])は、グラフェン量子ドット(大きさわずか数ナノメートルの炭素の層)など、メタンの収量を高められそうなさまざまな触媒を用いて実験を行っている。

ウーは、このプロセスが気候変動の緩和に役立つことを期待しているが、目標はそれだけではない。副産物として生成される燃料は、大きな商業的機会にもつながる。

「このプロセスは、わずか10年前と比べて100倍も生産性が向上しています。今後もますます進歩が早まると考えていいでしょう」と、ウーは言う。「10年以内に、この技術を商業化するスタートアップ企業がたくさん出現するはずです」

ウーの学生たちはさまざまな触媒を使い、メタンだけでなくエチレンも生成している。世界で最も重要な化学物質とされるエチレンは、プラスチック、ゴム、合成繊維衣料などの製造に使用されている。

「グリーンエネルギーは非常に重要であり、将来の市場規模は巨大なものになるでしょう。だからこそ、このテーマに取り組みたいと考えたのです」と、チャンは言う。

二酸化炭素からの燃料合成は、太陽光や風力などの再生可能エネルギーと組み合わせることで、さらに商業的な有効性が高まるとウーは言う。

「今の私たちは、余剰の再生可能エネルギーをただ捨てています。この余剰エネルギーを、化学物質の形で貯蔵できるようになるのです」

このプロセスを大規模化して、大量の二酸化炭素が生じる発電所に設置することが可能だ。余剰の二酸化炭素が発生するまさにその場所で変換を行えるため、効率に優れている。

ウーは、二酸化炭素からの燃料生産の進歩を見れば自身が生きているうちに人類が火星に降り立つ見込みはかなり高いと考えている。

「現時点では、火星から帰還するために往復分の燃料を積んで出発しなければならず、とても重くなってしまいます。将来的には他の燃料も必要になるでしょう。そこで二酸化炭素からメタノールを生成し、メタノールをさらに他の材料に加工することが考えられます。これが実現すれば、いずれ私たちは火星に住めるかもしれません」

研究論文

この記事は、SpaceDaily.comが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。

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