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鉱業廃棄物を活用した省貴金属の水素燃料生産用触媒
鉱業廃棄物を、水素燃料生産におけるより安価な触媒として利用する方法が発見された。
水素を生成する水分解反応は現在、希少なプラチナ(1オンス=約28グラム1450ドル)やイリジウム(同1370ドル)、ルテニウム(同367ドル)、あるいは、安価だが活性の低いコバルト(1トン7万ドル)、ニッケル(同2万6000ドル)、鉄(同641ドル)などの金属を使って引き起こされている。
オーストラリアにあるクイーンズランド工科大学(QUT)の化学物理学部と材料科学センターに所属するジキ・サン(Ziqi Sun)教授と、クイーンズランド大学化学工学部のホン・ペン(Hong Peng)博士が中心となり、これらの反応性金属を少量しか用いない新しい触媒をつくる研究が行われている。
研究チームは、これらの反応性金属を長石(ちょうせき)と組み合わせた。長石は、アルミノケイ酸塩を主成分とする造岩鉱物であり、鉱業廃棄物に含まれている。サン教授によれば、1トン当たり約30ドル支払って処分している企業もあるという。
「オーストラリアにはアルミノケイ酸塩が豊富にあり、加工プロセスも単純なため、この新触媒の産業規模での生産は容易に実現できるはずだ」とサン教授は述べている
『Advanced Energy and Sustainability Research』8月号の表紙を飾ったこの実験では、安価な反応性金属をわずか1~2%だけナノコーティングし、加熱によって活性化した長石を用い、水分解反応を引き起こした。
「水分解は2つの化学反応から成る。水素原子の化学反応と、酸素原子の化学反応によって両者が分離される」とサン教授は説明する。「この新しいナノコーティング材料は、水分解プロセス全体の効率性を左右する酸素発生反応を引き起こした」
教授によれば、最も効率的なのはコバルトでコーティングされた長石だ。この新しい触媒を最適化することで、未加工の金属を上回る効率性が実現され、プラチナの優れた効率性にも対抗しうるという。
さらにこの新しい触媒は、電気化学的なエネルギー変換に依存するリチウムイオン電池などの持続可能なエネルギーソリューションのコストを下げる可能性がある、とサン教授は述べている。
「この研究は、鉱業廃棄物を再利用し、伝統的な産業に新技術を投入することで、オーストラリアの再生可能エネルギーのバリューチェーンに貢献する可能性を秘めている」とサン教授は話す。
「テスラのような企業が、この技術をエネルギー生産や新しいバッテリー技術などの先進的なエネルギー貯蔵ソリューション、再生可能燃料に使う可能性がある」
研究チームは現在、この触媒のパイロット・テストを検討している。
「オーストラリアにはアルミノケイ酸塩が豊富にあり、加工プロセスも単純なため、この新触媒を産業規模で生産することは容易に実現できるはずだ」とサン教授は述べる。
サン教授によれば、長石は地殻の60%を占めている。これまでの研究では、長石を活性化して、リチウムイオン電池の低コストなアノードとして使用することにも成功している。
アルミノケイ酸塩は化学的に不活性だが、熱によって、化学反応や電子伝達に有用な状態が生じるとサン教授は説明する。
今回の研究には、サン教授やペン博士に加えて、QUT材料科学センターのゴドウィン・アヨコ(Godwin Ayoko)教授、理学部のジュン・メイ(Jun Mei)博士とジュアン・バイ(Juan Bai)博士、工学部のリャオ・ティン(Liao Ting)准教授が参加した。
サン教授とペン博士はいずれも、持続可能な新技術の材料開発に注力している。
ペン博士は、低コストの選鉱技術を用いて、粘土鉱物や鉱滓(こうさい)を機能性材料に変える研究を専門としている。
鉱業では毎年大量の廃棄物が発生するが、オーストラリアではこれを持続可能な技術に利用できる可能性がある、とペン博士は述べている。
「アルミノケイ酸塩はさまざまな鉱滓に含まれており、非常に安価なものだ。鉱業会社は通常、代金を支払って処分している」
研究レポート:「In Situ Growth of Transition Metal Nanoparticles on Aluminosilicate Minerals for Oxygen Evolution」
この記事は、SpaceDaily.comが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。