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「アルマゲドン」が現実に!? NASA、危険な小惑星の軌道を変える宇宙開発を開始

  • 未来
2022/1/7

NASAが、小惑星への片道ミッションに宇宙探査船を送り出した。小惑星に到着したら、探査船はその場で退役する。

NASAは現地時間2021年11月23日午後10時21分、小惑星の軌道を変える実験のため、DART(Double Asteroid Redirection Test=二重小惑星軌道変更試験)探査機を、スペースX(SpaceX)のファルコン9(Falcon 9)ロケットに搭載し、カリフォルニア州のバンデンバーグ宇宙軍基地から打ち上げた。DARTは10カ月の旅を経て目的地に到着する。目的地は、二重小惑星ディディモスだ。

目的地に到着すると、重さ550kgのDARTは時速約2万4000kmでディディモスを周回する小衛星ディモルフォスに突入する。

NASA科学ミッション本部惑星科学課のプログラムサイエンティスト、トーマス・スタトラー(Thomas Statler,)は、YouTubeに投稿されたNASA TVの打ち上げ生中継のなかで、「とても美しい打ち上げで、ものすごく興奮しました」と感想を述べた。

NASAがDARTを打ち上げたのは、大型の小惑星から地球を守る戦略として、運動エネルギーによる軌道変更の実験を行うためだ。直径約780mのディディモスや、直径約160mのディモルフォスが地球に脅威をもたらすことはないが、二重小惑星であるため、小衛星ディモルフォスでの衝突が、その周回軌道に与える影響を測定できる。その結果、小惑星の軌道をずらして地球への衝突を回避するには、どれくらいの力が必要かを把握できる。このことは、Live Scienceが以前報告したとおりだ。

DARTは、2022年9月後半~10月前半にディディモスに到着する予定だ。衝突の際には、搭載カメラ「DRACO(Didymos Reconnaissance and Asteroid Camera for Optical navigation=ディディモス偵察光学航法小惑星カメラ)」を使用し、自律航法ソフトウェアで誘導する。ジョンズ・ホプキンス大学応用物理学研究所(APL)によれば、DRACOはDARTを小惑星に誘導するだけでなく、DARTの最後の瞬間を撮影し、DARTはそれをリアルタイムで地球に送信してから小惑星に突入するという(担当者からLive Scienceに送られてきた電子メールには、APLがDARTを建造し、NASA惑星防衛調整室の依頼でミッションを管理していると記されている)。

「宇宙で何が起きても対処」するための準備

ただし、APLの惑星科学者で、DARTの衝突モデリング作業部会を率いるアンジェラ・スティックル(Angela Stickle)によれば、DARTは高速で小惑星に突入して最後を迎える前に、旅の途中で別の課題に直面する可能性があるという。

スティックルはLive Scienceに宛てた電子メールの中で、「他のミッションと同様、宇宙飛行はリスクを伴います。危険なものは大型の小惑星だけではありません」と述べている。「宇宙船に異常が発生した場合の計画、セーフモードなどの回復方法が用意されています。宇宙で何が起きても対処できるよう、ミッション全体のシミュレーションを繰り返しました」

APLのシステムエンジニアで、DARTのミッションシステムエンジニアを務めるエレナ・アダムス(Elena Adams)も、宇宙で起こり得る危険に備えるためにエンジニアたちは何度もシミュレーションを行い「最悪の事態を想定した」テストを実施したと説明している。アダムスはLive Scienceに宛てた電子メールの中で、実際にテストしたシナリオの例を挙げてくれた。軌道上の予想していた場所に小惑星が存在しない。目標とするディモルフォスが予想より小さい、あるいは暗い。宇宙船の制御がテスト時より難しい、などだ。

テストは打ち上げ後も続く。アダムスと彼女のチームは、木星の衛星を使ってトレーニングを行い、小惑星追跡アルゴリズムをテストする予定だ、とアダムスは述べている。

「木星の後ろから、その衛星であるエウロパとイオが現れるところを観測して、我々のアルゴリズムが衛星を認識し、追跡できるかどうかを確かめる予定です。ちょうど、ディディモスの後ろからディモルフォスが現れるのと同様です」と、アダムスは説明する。「木星の衛星を使ったこのテストは、すべてが期待通りに機能することを確認するため、飛行中に実施するいくつものテストの一つにすぎません」

ロシアの「挑発的で危険な行為」

このように準備を整え、予防策を講じてきたにもかかわらず、打ち上げのわずか1週間前、予期せぬリスクが出現した。ロシア国防省が11月15日に対衛星(ASAT)ミサイルを発射し、地球低軌道にあったソビエト連邦時代の人工衛星コスモス1408号(Cosmos 1408)を破壊したのだ。この爆発によって、国際宇宙ステーション(ISS)の軌道上に宇宙ごみの雲(デブリ雲)が発生。ISSに滞在していたロシアと米国の宇宙飛行士7人が危険にさらされ、輸送用カプセルに避難したと、Live Scienceの姉妹サイトSpace.comは報じている

ASATによる爆破と、デブリ雲がもたらした危険は重大だ。ミサイル発射後にLive Scienceが公開した記事によれば、宇宙ごみは時速2万8000km超で移動するため、わずか1.3cmの破片でもISSに回復不能な被害を与え、閉鎖に追い込む可能性さえある。

アントニー・ブリンケン米国務長官はTwitterで、「ロシアが自国衛星に地上からASATミサイルを発射するという無謀な実験を行い、宇宙飛行士の生命、ISSの完全性、すべての国の利益を危険にさらす宇宙ごみを発生させた」ことを非難した。NASAのビル・ネルソン長官は声明の中で、「世界の不安定化を招くこの無責任な行動に憤り」を感じていると述べている。

ロシアが予告なしに実験を行ったことについては、他の国々からも批判が寄せられている。Space.comによれば、日本の外相は「無責任な行動」と呼び、オーストラリアの国防相は「挑発的で危険な行為」と断じている。

デブリ雲は何年も漂い続けるため、NASAは偵察衛星の残骸を注意深く監視し、ISSや今後の打ち上げに対するリスクを評価する計画だ。

NASA担当者はLive Scienceに宛てた電子メールの中で、「識別可能な破片のカタログ化を進めながら、各チームがさまざまなミッション活動を行う上でのリスクレベルを評価しています」と説明している。「米国の宇宙船が軌道上の宇宙ごみを回避し、意図した軌道に安全に到達できるよう、NASAと米宇宙コマンド(米軍の統合軍の一つ)が連携していく計画です。今後の打ち上げに何か変更があれば、必要に応じて情報を更新します」

しかしDARTが安全に打ち上げられた今、ミッション管制チームの頭にある次の大きな衝突は、2022年に予定されている小衛星ディモルフォスとの衝突だ。ディモルフォスに衝突したとき、DARTは粉々に砕け散ってフィナーレを迎える。

「ディモルフォスとの衝突が成功したかどうかはすぐにわかります。DARTからの信号が途絶えたら、それが良い知らせです」とスティックルは話す。「実際に衝突した後、地上から望遠鏡でディディモス小惑星系を観測することで、母天体ディディモスを周回するディモルフォスの軌道周期がどれくらい変化したかがわかります。衝突後、数カ月にわたって観測を継続し、軌道周期の正確な変化を調べる予定です」

この記事は、Live ScienceのMindy Weisbergerが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。

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