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カーボンニュートラルを実現する新しい多機能触媒

  • 技術
2022/1/21

捕捉した二酸化炭素(CO2)を、燃料やその他の有用な石油化学物質に変換する多機能触媒が、サウジアラビアのキング・アブドゥッラー科学技術大学(KAUST)で開発された。従来の化石燃料に依存しないサステナブルなグリーンエコノミー確立への貢献が期待されている。研究を率いたホルヘ・ガスコン(Jorge Gascon)によると、この触媒は新規の二酸化炭素排出を防ぎ、増え続ける二酸化炭素排出量を減少に転じさせる妙案となりうる。そのうえ、既存インフラを大規模に改修しなくても利用できるという。

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大気中から捕捉した二酸化炭素(CO2)を、燃料やその他の有用な炭化水素に変換することは、化石燃料に依存しないサステナブルな経済の確立につながる可能性がある

二酸化炭素は地球温暖化の主要因であると同時に、有用な炭化水素の原料でもある。だが、二酸化炭素は化学的安定性が高いため、より有用な物質に変換するのは容易ではない。

従来の不均一な触媒を利用して、二酸化炭素を数種の炭化水素に変換する方法は、これまでもいくつか知られていた。しかし、こうした触媒は目的生成物の配分を調整するのが極めて難しく、特定物質の生産を目的とした実用化には高いハードルがあったと、博士課程大学院生のアバイ・ドカニア(Abhay Dokania)は説明する。

ガスコンの研究チームは、協調的に作用する複数の触媒を利用する手法をとった。この複合触媒は、金属ベースの触媒と、酸性のゼオライト(規則的配列をもち、微小孔をもつ触媒素材)を組み合わせたものであり、二酸化炭素を直接、軽質オレフィンや芳香族化合物、パラフィンなどの炭化水素に変換する。

メタノールをつくるインジウム・コバルト触媒と、メタノールが炭化水素に変換される反応を促進する亜鉛ベースのゼオライトで構成された混合触媒は、ガソリン品質のイソパラフィン(イソブタン、イソオクタンなど)を、85%という史上最高の選択率で生成した。オクタン価の高いこれらの炭化水素は、アンチノック性と燃焼効率の良さから重宝されているが、目的生成物としてはこれまで見過ごされてきた。新触媒の高い選択率は、ゼオライトの多孔構造と、分岐炭化水素をつくる性質によるものだ。

「このプロジェクトは白紙状態から始まったわけではないが、それでも、これほど高いイソパラフィン画分の選択率を示したことは、嬉しい驚きだった。やるべきことはまだ多いが、我々は正しい道の途中にいると確信している」と、研究員のアドリアン・ラミレス・ガリレア(Adrian Ramirez Galilea)は言う。

「我々のチームは、分光法を使った徹底的な探索により、ゼオライト内部の特殊な亜鉛クラスターを発見した。このクラスターが、反応の際に各触媒コンポーネントが担う役割を決定し、触媒を最適化する」と、ドカニアは説明する。

プロパンはなくてはならない商品であり、世界市場は拡大しつつあるが、二酸化炭素を使ったプロパンの製造はこれまで注目されていなかった。KAUSTの研究者たちは、欧州主要大学の研究チームと共同で、メタノールをつくるパラジウム・亜鉛ベースの触媒と、3種の炭素化合物に高い選択率を示すゼオライトを利用し、プロパンを合成することに成功した。

この複合触媒は、プロパンに関して50%以上の選択率を示して二酸化炭素の約40%を変換し、一酸化炭素(CO)の選択率はわずか25%だった。「我々はこうした結果が、触媒コンポーネント同士の密接な接触によるものだと考えている」と、ラミレスは言う。これにより、二酸化炭素・メタノール・一酸化炭素の均衡状態が変化し、二酸化炭素の変換率を最大化しつつ、一酸化炭素の生成が抑えられるのだ。加えて、パラジウムコンポーネントも、パラフィンの選択率を99.9%にまで押し上げた。

今回の多機能触媒によって、さまざまな炭化水素の製造がより制御しやすくなり、通常なら手に入らない石油化学製品が製造可能になると予測される。ただし、さらなる効率向上のためには、実際に起こっている化学反応をより深く理解する必要がある。とりわけ、反応メカニズム全体においてゼオライトが果たす役割の解明が待たれる。研究チームは、鉄ベースの水素化触媒を8種類のゼオライトと組み合わせ、ゼオライトに捕捉される有機化合物を特定することで、ゼオライトの反応性の解明を試みた。

反応メカニズムは複雑だったが、チームはすべてのゼオライトが、選択率に関して4タイプに区別できることを明らかにした。2つのグループは軽質オルフェンやアルケン炭化水素を生成し、残り2つのグループはパラフィンと芳香族化合物を生成する。「このため、二酸化炭素から特定の物質をつくりたい場合、適切な種類のゼオライトを選んで多機能触媒を用意するだけでいい」と、ラミレスは言う。

研究チームは現在、循環炭素経済の実現に向けて、多機能触媒を最適化する試みを続けている。KAUSTは、循環炭素経済イニシアチブを採用し、炭素排出の削減、再利用、リサイクル、廃止を推進している。

「我々が生成した炭化水素は、ガソリン燃料の範疇ではあるものの、利用可能な状態になるまでには大規模な追加処理が必要だ。したがって次のステップは、すでに学んだことをもとに、追加の処理を一切必要とせずそのまま使えるドロップイン燃料を、二酸化炭素から直接つくることになるだろう」と、ドカニアは述べた。

研究レポート:“Selectivity descriptors for the direct hydrogenation of CO2 to hydrocarbons during zeolite-mediated bifunctional catalysis”

この記事は、SpaceDaily.comが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。

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