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水素化物超イオン導電体を初めて開発、持続可能なエネルギーに新たな可能性を拓く

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超イオン導電体は、電池や燃料電池の固体電解質として利用され、クリーンで再生可能なエネルギーの供給に期待されている。この導体は、イオンが固体中を液体と同じ速さで移動する物質で構成されており、適切な温度帯で稼働することが条件となる。固体中を水素が拡散するイオン導電体において、水素は低温では高速で拡散するが、化学変換やエネルギー変換の促進が容易な摂氏200~400度の中間温度帯においては導電性が低下する。

今回、国際共同研究チームは、中間温度帯における水素の導電性を高めることを目的として、負電荷を帯びた水素である「ヒドリドイオン(水素化物イオン:H-)」を電荷担体とする超イオン導電体の開発に、初めて成功した。

この結果は、2022年1月13日付で学術誌『Nature Materials』に論文として掲載され、ターゲットの温度帯で優れた導電性を示したことが報告された。

論文著者のひとりであり、自然科学研究機構分子科学研究所に所属する小林玄器准教授は、「固体内の水素輸送は、燃料電池や電解槽などの電気化学デバイスに応用されており、持続可能エネルギー社会の実現の鍵を握る」と述べる。

「中間温度帯は、燃料電池や電気化学反応装置にとって理想的だ。反応性が高く、レアメタル触媒が不要、あるいはその使用量が少なくてすむからだ。また、産業界の排熱放出が起こる温度帯でもあり、排熱利用の点でも重要である。しかし、この温度帯で水素を高速拡散させる固体電解質はこれまで存在しなかった」

ヒドリドイオンは、質量と構造の関係で電荷密度が低く、化学結合を弱める性質をもっている。そのため、固体素材の内部にヒドリドイオンが存在する場合、イオンは素材内部に拡散する。この基本的性質は、一般に高速イオン導電に有利であり、とりわけ固体中での高速イオン導電において優位性がある、と小林は説明している。

研究チームは、ヒドリド超イオン導電を実現するため、バリウム、リチウム、水素、酸素の層状構造をもつオキシハイドライド「Ba1.75LiH2.7O0.9(BLHO)」を合成した。小林によると、鍵となったのは、負に帯電した酸素イオンでヒドリドイオンを秩序化し、高密度の空孔を含ませて、導電層を形成することだった。

「BLHOは、相転移によって、高い導電性と低い活性化エネルギーを実現する」と、小林は言う。同氏の説明によれば、このような特性は、BLHOが十分に高い閾値温度まで加熱され、相転移が起こった時にのみ現れる。

「いったんこの相転移状態に到達すると、BLHOの導電性は、摂氏300~350度の中間温度帯において、基本的に温度とは無関係に高く保たれる。このような中間温度帯での顕著な導電性は、エネルギー変換や化学変換デバイスの進歩を実現する重要なステップとなることが期待されている」

BLHOは、中間温度帯の下限である摂氏200度よりも上では高い導電性を保ったが、より低い温度での導電性を安定させるためにはさらなる研究が必要だ、と小林は述べる。

「BLHOの超イオン導電相を低温まで安定化させ、室温から中間温度帯までの範囲で固体電解質として機能するヒドリドイオン導電体を開発することが目標」と小林は語る。研究チームは、ヒドリドイオンの特性を利用した新たなエネルギー貯蔵デバイスや、電気化学反応装置が開発されることに期待している。

研究レポート:“Hydride-ion-conducting K2NiF4-type Ba-Li oxyhydride solid electrolyte”

この記事は、SpaceDaily.comが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。