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スタンフォード大学のエンジニア、伸縮可能なLEDディスプレイを製作

  • 技術
2022/5/11

米スタンフォード大学の技術者チームがプラスチックフィルムから作製したミニLEDディスプレイ。Bao Group Research Lab / Stanford University

スマートフォンやテレビの画面は硬い物体であり、引き伸ばせるようにはできていない。だが、米スタンフォード大学の技術者チームは、伸縮性のある発光ダイオード(LED)ディスプレイの開発に向けた最初の一歩を見つけ出した可能性がある。この最新研究では、ディズニー・ピクサーのアニメ映画『Mr.インクレディブル』に出てくるスーパースーツにも簡単に組み込めるかもしれない「双方向型ディスプレイ」の開発に、どのように取り組めばよいかについても探究している。

科学誌『ネイチャー』に2022年3月23日付けで論文が掲載された今回のLEDディスプレイは、硬い枠の中に封入された液晶で構成される従来型のLEDディスプレイとは異なり、全体がゴムのような高分子材料からできている。

今回の最新研究について知っておくべきポイントを以下にまとめた。

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従来型のLEDディスプレイはどのように機能するか

LEDは発光ダイオード(Light Emitting Diode)の略で、LED電子機器は同様の仕組みで機能する。テレビやスマートフォンの典型的なディスプレイは、複数の層を重ね合わせて表示マトリックスを構成している。この中には、液晶層を挟んで両側に2つの電極層と複数の偏光層、そしてRGB(赤、緑、青)カラーマスクを配置する必要がある。RGBマスクは液晶層と視聴者の間に位置する。

このように層構造を構成することで、複雑な一連の反応を引き起こし、結果的に明るい映像を生成できるようになる。ディスプレイの二つの電極層のうち、一方は正の電荷(正孔)、もう一方は負の電荷(電子)を生成させる。電界を印加すれば、電荷が異なる電極層の間を移動し始めると、『ネイチャー』に掲載された論文の執筆者で、スタンフォード大教授(化学工学)のゼナン・バオ(Zhenan Bao)は説明する。「正孔とも呼ばれる正の電荷と電子が出合うと、結合してある種の励起分子になります」と、バオは言う。「その後(この励起分子が)より安定な基底状態に戻ると、光が(光子の形で)放射されます」。

こうした構成の基本原理は、液晶の電圧制御により、(画面の小さな構成要素である)画素レベルで、光の経路、方向、強度を操作できることだ。各画素には3つのサブ画素が含まれ、それぞれのサブ画素の上に、通常は光の三原色(RGB)のカラーフィルターを配置する。これにより、画素ごとに異なる色を遮らせ、三原色をさまざまな組み合わせで出力することができる。ズームアウトして見れば、有色画素の集合体によって画像が描かれる。

コンピューターやテレビで現在使用されているディスプレイの大半は、液晶で構成されている。「液晶は光を発しないため、バックライト(LEDストリップを含む)を、液晶の背面に設置します。こうした光の多くは、基本的に遮られることになります」と、バオは説明する。「光の一部しか通り抜けられないのです。そのため、電力消費量が大きくなるだけでなく、画面上の画像がどのくらい速く変化できるかを決めるスイッチング速度も比較的遅くなります」。

このタイプのディスプレイには、弱点がもう一つある。それは、硬くてもろいところだと、バオは指摘する。その主な理由は、基板がガラスでできている上、LEDに使われる材料も曲げたり引き伸ばしたりできず、無理にすれば粉々に壊れるからだ。

Stanford engineers made a tiny LED display that stretches like a rubber band
Bao Group Research Lab / Stanford University

新たな伸縮性のコンセプトについて知っておくべきポイント

「ここで私たちが行っているのは、曲げたり、折り畳んだり、変形させたりしても画像を表示できる新しいタイプのディスプレイ開発を試みることです」と、バオは話す。変形可能なディスプレイがあれば、曲がりやすかったり平らでなかったりする表面の輪郭に沿って、ディスプレイの取り付けが可能になる。バオの研究チームの実験では、引き伸ばしたりペンで突いたりするストレステストを実施した結果、ディスプレイはよく持ちこたえた。

研究チームが取り組むべき課題は、ディスプレイの構成部品を、すべて伸縮性のあるものにすることだった。「ディスプレイの2つの電極に使用できる、伸縮性のある導電性ポリマーを開発しました。一方の電極は正孔を、もう一方の電極は電子をそれぞれ注入する必要があるため、各層を通じた輸送を容易にする必要もありました」と、バオは話す。「ここで用いる発光材料は、伸縮自在にする必要がありますが、同時に多くの光を発するようにしなければなりません。ディスプレイは明るくしたいのです」

研究チームは、発光ポリマーがナノ繊維構造を形成するように、硬質と軟質のさまざまなプラスチック材料を組み合わせる方法を発見した。これは、正孔と電子が出合う助けになる。「これらが出合えなければ、光を引き出せません」と、バオは言う。「このナノ構造によって、持続的な経路ができます。さらに、ナノ繊維状構造を形成することにより、発光ポリマーによく含まれていた欠陥の一部が排除されることが明らかになりました。伸縮性材料では、非伸縮性のものよりも多くの光が発せられるのを確認しました」。

研究チームはこのナノ構造を、フルカラーディスプレイを作るのに必要な三原色(RGB)の発光ポリマーで形成することに成功した。その後は、画面を構成する各層を安定的に積層してディスプレイをつくる方法を見つけ出すことが、主な技術的問題となった。この多層構造は、中央の発光層を挟んで内側から電荷輸送層、電極層、外側の基板層で構成される。

今回の試作品では、画面に1枚の静止画像を持続的に表示できることを実証した。画像を切り替えられる画面を作るには、画面に電力を供給できる、ある種のモーターを組み込む必要があるだろう。「現在得られているタイプの画面は、解像度が非常に低いもの。今回の論文は主に、材料の発見とディスプレイの画素をどのように作製したかについてのものです」と、バオは述べる。「画素はまだかなり大きい状態です。次の段階では、画面の解像度を上げるとともに、画面の持続時間を長くする必要があります」。

今回の第一世代の伸縮ディスプレイは、現状では高窒素環境で数日間発光できる。通常の大気にさらされると、光は数時間しか持続できない。

「酸素と水蒸気が発光ポリマー内に入るのを阻止できる、有効な材料がまだ得られていません。酸素と水蒸気が侵入すると発光が止まり、時間とともに画面が暗くなります」と、バオは説明する。「現在使用されているOLED(有機発光ダイオード)ディスプレイもまた、内部の機器は窒素環境下でしか動作しませんが、酸素と水蒸気を阻止できる有効な封入材料が発見されています。これは、ディスプレイが実質的に役立つものになるために重要な部分です」。

この投稿「Stanford engineers made a tiny LED display that stretches like a rubber band」は、最初にPopular Scienceに掲載されました。

この記事は、Popular Scienceに掲載されました。

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この記事は、Popular ScienceのCharlotte Huが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。

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