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EVから太陽エネルギーまでを貯蔵する、長持ちのナトリウムイオン電池が登場
安価で豊富に存在するナトリウムは、未来の電池の原料として最有力視されている。しかし、ナトリウムイオン電池の出力には限界があり、これまでのところ大規模な応用には至っていない。
米国エネルギー省傘下のパシフィック・ノースウェスト国立研究所(PNNL)に所属する研究チームはこのたび、実験環境でナトリウムイオン電池の寿命を大幅に延ばすことに成功した。電池の液芯を構成する成分に手を加えることで、ナトリウムイオン電池の悩みの種だった性能上の問題を解決したのだ。学術誌『Nature Energy』に論文が掲載された今回の成果は、将来的に、電気自動車の動力源や、太陽エネルギーを貯蔵する蓄電池としての応用が期待される。
論文の責任著者であるPNNLのジーグアン(ジェイソン)・ジャン(Jiguang⦅Jason⦆ Zhang)は、「この研究で我々は、ナトリウムイオン電池が原理的に長寿命かつ環境に優しい電池技術となりうることを示しました」と述べる。同氏は電池技術のパイオニアであり、エネルギー貯蔵技術で23もの特許を保有している。
最適な塩
電池内部にある電解質は、エネルギーの流れを保ちつつ循環する「血液」だ。電解質は塩が溶媒に溶けたものであり、これにより、電荷を帯びたイオンが陽極と陰極の間を移動する。エネルギーの流れをつくりだす電気化学的反応は、時間の経過とともに衰え、電池の再充電ができなくなる。現行のナトリウムイオン電池技術では、この劣化プロセスが同等のリチウムイオン電池よりもはるかに速く起こる。
ヤン・ジン(Yan Jin)とファン・リー(Phung Le)を中心とするPNNLのチームは、液体の溶媒とそこに溶解させる塩の種類を変え、まったく新しい電解質のレシピを開発するという方法でこの問題に取り組んだ。新たな設計の電池は、実験環境での検証において耐久性を発揮し、4.2ボルトで300サイクルの放充電を繰り返したあとも電池容量の90%を維持した。これまでに報告されたほとんどのナトリウムイオン電池を上回る数値だ。
現行のナトリウムイオン電池電解質のレシピの場合、アノードの保護膜が時とともに溶解する。この保護膜は、電池の寿命を維持しつつナトリウムイオンを透過させる重要な役割を担っている。PNNLが開発した新技術の根幹は、この保護膜の安定化にある。新たな電解質はまた、カソードにも非常に薄い保護膜を生成することで、電池全体の安定性を向上させている。
難燃性テクノロジー
PNNLが新たに開発したナトリウムイオン電池技術は、自然な消火機能を備えた溶液を使っており、温度変化の影響を受けにくく、高電圧での動作も可能だ。こうした特性が生じる理由のひとつは、アノードに形成される非常に薄い保護膜だ。この保護膜はいったん形成されると安定した状態を保つため、論文で報告された長いサイクル寿命を実現する。
「我々は、カソードでの気体の発生量も測定しました」と、PNNLの電池化学者で、今回の研究の中心メンバーのひとりであるファン・リーは述べる。「気体の発生量は最小限でした。この結果は、高温下で機能するナトリウムイオン電池に利用可能な、安定した電解質の開発に新たなインサイトをもたらすものです」
新たに開発されたナトリウムイオン電池は現時点で、エネルギー密度の点でリチウムイオン電池には及ばない。しかし、この技術には独自の利点がある。温度変化の影響を受けにくく、高い安定性を誇り長寿命である点などだ。そのため、将来的に軽負荷の電気自動車や、グリッドエネルギー貯蔵への応用が期待できる。
研究チームは、電池設計の改良を続けている。リーによれば、チームは現在、コバルトの使用量を削減し、最終的にはゼロにすることを目標に、他の設計の検証をおこなっている。コバルトは高価で毒性があり、回収やリサイクルが必要になるためだ。
ジン、リー、ジャンのほかに、PNNLの研究チームは以下のメンバーで構成されていた:ペイユアン・ガオ(Peiyuan Gao)、ヤオビン・シュー(Yaobin Xu)、ビーウェイ・シャオ(Biwei Xiao)、マーク・H・エンゲルハード(Mark H. Engelhard)、シア・カオ(Xia Cao)、タン・D・ヴォー(Thanh D. Vo)、ジンタオ・フー(Jiangtao Hu)、リーロン・ジョン(Lirong Zhong)、ベサニー・E・マシューズ(Bethany E. Matthews)、ラン・イー(Ran Yi)、チョンミン・ワン(Chongmin Wang)、シャオリン・リー(Xiaolin Li)、ジュン・リュー(Jun Liu)。
研究レポート:Low-solvation electrolytes for high-voltage sodium-ion batteries
この記事は、SpaceDaily.comが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。