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初期太陽系の様子を伝える、“鉄のメッセージ”

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かつて金属質小惑星の核の一部だった鉄隕石の最新分析によると、太陽が形成されてから780~1170万年後の初期太陽系では、小惑星や形成中の惑星が絶え間なく衝突し合う、大混乱の「破壊競争」が起きていたようだ。

国際研究チームは、地球上で発見された18個の鉄隕石に含まれるパラジウム、銀、白金の同位体を分析し、これら鉄隕石の母天体に関する理解を深めた。金属小惑星は、その内部に高密度の鉄の核が存在する。鉄隕石は、金属小惑星が他の小惑星と衝突したときに吹き飛ばされた鉄の核に由来している。

パラジウム107は、放射性崩壊を起こして銀107になる。半減期は650万年だ。こ れら二つの同位体の相対存在量を質量分析計で測定した過去の結果から、隕石がかつてその一部だった小惑星の核は、急速に冷却されたことが示唆されていた。問題は、この急速冷却がいつ起きたかだ。

関連記事:Ancient meteorites preserve building blocks of early solar system

年代範囲を絞り込むために、スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETH Zurich)と、スイス国立コンピテンスセンター・惑星研究所(NCCR Planets)の上席研究員であるアリソン・ハント(Alison Hunt)によって率いられた研究チームは、質量分析計の処理工程を改良し、レアメタルである白金の同位体を探した。こうした白金同位体は、隕石が宇宙空間を移動する間に受けた宇宙線照射に起因している。

ハントは声明で、「今回の白金同位体存在量の追加測定により、銀同位体の測定データに対して、宇宙空間での試料への宇宙線照射に起因する測定値のずれの補正が可能になりました」と述べている。「これによって従来よりも厳密に、衝突の年代を特定できたのです」

ハントの研究チームが割り出した年代は、太陽系形成から780〜1170万年後の間だった。太陽系45億年の歴史の中では、比較的短い期間だ。だが、他の隕石を調査することで、この期間は延長される可能性もある。

今回の研究結果は、初期太陽系が極めて混沌とした状態だったことを示唆している。惑星形成もまだ終わっていない段階で、小惑星や原始惑星が頻繁に衝突を繰り返していたと考えられる。おそらくはこうした衝突によって、比較的大きな小惑星の一部からケイ酸塩マントルが剥ぎ取られ、金属核が宇宙空間に露出して急速に冷えた。その後、さらなる衝突によって、金属核が粉々に壊れたのだろう。

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「当時は、あらゆるものが互いに壊し合っていたようです」とハントは語る。

こうした混沌状態を引き起こした原因については、太陽を形成したガス雲「原始太陽系星雲」の散逸と大きな関係があると、ハントのチームは考えている。太陽が形成された後、ガス雲の残骸が原始恒星の周囲に円盤状に集まった。ガスが冷えるにつれ、ガスのなかから塵(ちり、固体微粒子)と氷が凝縮して、降着と呼ばれる過程を経て徐々に集積し、現在よく知られているような惑星や小惑星、彗星を形成していった。

だが、塵が集まって天体が形成される期間は有限のものだった。初期太陽が徐々に温度と明度を上げるにつれ、太陽風が原始太陽系星雲の残骸を吹き飛ばし始めたからだ。原始惑星は残骸のガスとの摩擦によって動きを抑えられ、軌道速度を減速させていた。原始惑星を抑制するこうしたガスが散逸して失われると、混沌とした状態の時期が生じたに違いないと、研究チームは説明している。惑星の軌道が乱れて衝突が急増し、その後沈静化したというのだ。

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一方、ほぼ同時期に起きた別の事象も混沌の一因となった可能性がある、と研究チームは指摘する。巨大ガス惑星(特に木星土星)が初期太陽系内を動き回り、重力の影響によって小天体の軌道を乱し、小惑星帯カイパーベルトを形成するように導いたことだ。

特に「グランドタック(Grand Tack)」として知られる太陽系形成モデルでは、木星が太陽系を内向きに移動し、現在の火星と同じくらいの距離まで太陽に近づいた後で、土星重力の影響を受けて外側へ移動し、再び現在の位置に達したとされている。この事象が発生したのは、太陽系の歴史が始まって約1000万年が過ぎた頃だろうと、グランドタックモデルでは推測されている。

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いずれにしろ、45億年前に起こっていたことを証明するのは極めて困難だ。今回の最新研究は、鉄隕石をもたらした小惑星の運命について示唆を与えており、初期太陽系がいかに荒々しい環境だったかを示す新たな証拠を提供している。

米航空宇宙局(NASA)が打ち上げを予定している金属小惑星探査機「サイキ(Psyche)」が、目的地である小惑星「プシケ(Psyche)」に2026年に到達すれば、より多くの情報が明らかになる可能性がある。

今回の研究論文は、学術誌『Nature Astronomy』オンライン版に2022年5月23日付けで掲載された。

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この記事は、SpaceのKeith Cooperが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。