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CO2とH2Oを燃料や化学品の原料に変える太陽電池化学

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太陽エネルギーを利用して合成ガスを生成することによって、二酸化炭素(CO2)を再利用し、燃料や有用な化学物質を作り出せる可能性があることを、国際研究チームが明らかにした。

『米国科学アカデミー紀要(PNAS)』で発表された今回の研究を主導した米ミシガン大学のゼチアン・ミー(Zetian Mi)教授(電気計算機工学)は、「太陽エネルギーだけを用いてCO2から合成ガスを生成できれば、それをメタノールなどの化学物質や燃料の前駆物質として利用できます。これにより、全体としてのCO2排出量が著しく減少することになります」と説明する。

水素と一酸化炭素(CO)を主成分とし、少量のメタンを含む合成ガスは、一般に電気を用いて化石燃料から作られる。さらに、製造過程の効率を高めるために、有毒化学物質が添加されることが多い。

今回の論文の第一執筆者で、実験を実施したカナダ・マギル大学電気計算機工学科の博士課程学生、ロクサナ・ラシド(Roksana Rashid)はこう話す。「我々が開発した新しい製造過程は、本当にシンプルですがエキサイティングなものです。有害性がなく持続可能で、コスト効率が非常に高いからです」

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今回の研究プロジェクトは、カナダ・アルバータ排出削減機構(ERA)を通じて支援を受け、研究拠点はミー教授がかつて所属していたマギル大に置かれた。論文の共同執筆者は皆、マギル大に現在所属しているか、過去に所属していた。ラシドは現在、カナダ・ウォータールー大学電気計算機工学科の博士課程修了研究者だ。ジョウは現在、中国・上海交通大学の准教授(機械工学)を務めている

ミー教授の研究チームは、「太陽エネルギーだけを用いる製造プロセス」を構築するために、CO2を分解するという難題を克服した(CO2は宇宙で最も安定的な分子の一つ)。このために研究チームは、林立する半導体ナノワイヤーに、酸化クロムでコーティングされた金でできたナノ粒子を分散付着させた。これらのナノ粒子がCO2分子を引き寄せて曲げ、炭素と酸素間の結合を弱めたのだ。

窒化ガリウム(GaN)ナノワイヤーが、光エネルギーを用いて電子を解放すると、電子が飛び出た跡が正に帯電した空間「正孔」になる。正孔は水分子を分解し、酸素から陽子(水素)を分離する。金属触媒では、電子がCO2を分解してCOを生成し、時には自由水素を引き寄せてメタン(CH4)を生成する。他種のガスから酸素を分離する方法も、開発が進められている。

ミー教授と共同で責任執筆者を務めたバオウェン・ジョウ(Baowen Zhou)は、「我々の技術は、空気と水と太陽光を利用する分散型の合成ガス製造システムを構築する方法の開発に光を与えるものです」と述べる。ジョウはかつてマギル大とミシガン大でミー教授の研究室に在籍していた。

ミー教授のチームは、ナノ粒子における金と酸化クロムの比率を変えることで、反応で生じる水素とCOの相対量を制御することに成功した。これが重要である理由は、水素とCOの比率が、ある種の燃料や化学物質をどの程度容易に生成できるかに影響するからだ。

「驚くべきことは、合成ガスへのCO2還元を効率的かつ調整可能にする、金と酸化クロムの間の相乗効果です。これは、単体の金属触媒では不可能でした」と、ミー教授は指摘する。「このことは、これまで考えもつかなかった、数多くの心躍るチャンスをもたらします」

ミー教授が開発した調整可能な合成ガス装置は、標準的な工業製造プロセスを採用しており、拡張性を備えている。マギル大のラシドが行った今回の実験では蒸留水を使用したが、海水や他の電解質溶液でも機能すると期待されている。ミー教授は、関連する過去の水分解研究で海水などを用いている。

「今回の研究で光吸収体として使用している半導体は、シリコンと窒化ガリウムをベースにしています。これらは、最も一般的に生産されている半導体であり、窒化ガリウム半導体には微小材料を使用します。各ナノワイヤーの太さは約1マイクロメートル(1000分の1ミリメートル)です」と、ミー教授は説明した。

ミー教授の次なる目標は、装置の高効率化だ。現在の効率は0.89%となっている。光エネルギーの10%が化学エネルギーに変換されるようになれば、この技術が太陽電池のように再生可能エネルギーを得るために採用されることが見込めるかもしれないと、ミー教授は期待している。

今回の研究プロジェクトは、カナダ・アルバータ排出削減機構(ERA)を通じて支援を受け、研究拠点はミー教授がかつて所属していたマギル大に置かれた。論文の共同執筆者は皆、マギル大に現在所属しているか、過去に所属していた。ラシドは現在、カナダ・ウォータールー大学電気計算機工学科の博士課程修了研究者だ。ジョウは現在、中国・上海交通大学の准教授(機械工学)を務めている。

今回の研究に関連する知的所有権の一部は、ミー教授が共同で設立したNS Nanotech社とNX Fuels社にライセンス供与されている。ミシガン大およびミー教授は、この2社と経済的利害関係がある。

研究レポート:Tunable green syngas generation from CO2 and H2O with sunlight as the only energy input

この記事は、SpaceDaily.comが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。