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水素経済を担う燃料電池ナノ触媒の容易でスケーラブルな製造

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燃料電池は水素ガスから電気を発生させる発電機であり、発電時に排出される廃棄物は水だけだ。この高効率かつクリーンなエネルギーシステムは、水素経済の導入において中心的な役割を果たし、自動車やトラックの「燃焼機関とバッテリー」にだけでなく、発電所にも置き換わることが期待されている。

しかしながら、キログラム当たり3万ドル(約400万円)超に及ぶ可能性のあるプラチナのコストが大きな制約となっており、燃料電池用触媒が非常に高価になる原因になっている。さらに、高性能触媒の製造方法は複雑で非常に限定されている。そのため、プラチナベースの燃料電池用触媒を製造する、簡易で拡張性の高い方法を開発することと、プラチナ使用量を最小限に抑えつつ触媒性能と安定性を向上させることが、喫緊の課題となっている。

この課題に取り組むため、韓国・基礎科学研究院(IBS)傘下のナノ粒子研究センター(CNR)に所属するソン・ユンウン(SUNG Yung-Eun)教授とヒョン・テクファン(HYEON Taeghwan)教授が率いる研究チームは、ナノ触媒を生成するための画期的な方法を開発した。研究チームは簡単な熱処理により、均一な大きさ(3~4ナノメートル:1nm=1mmの100万分の1)のコバルト-プラチナ(Co-Pt)合金ナノ粒子を生成できることを実証した。この方法は、注入法のような「合成の容易さ」と、コロイド法のような「ナノ結晶のサイズと形の精密な制御が可能」という、両方の特徴を兼ね備えている。

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研究チームが開発した触媒の顕微鏡画像と、プロトン交換膜型燃料電池(PEMFC)の発電性能を比較したグラフ。画像は、走査型透過電子顕微鏡(STEM)と、透過型電子顕微鏡(TEM)で撮影。新開発の触媒は、最先端の燃料電池用触媒との比較で、プラチナ使用量当たりの発電性能が2倍近くを示した。(下図)コバルト-プラチナ(Co-Pt)合金ナノ触媒の成長過程を描いた概略イラスト。摂氏900度での簡易な熱処理により、炭素担体上に原子が規則的に配列したCo-Ptナノ粒子を生成できた

CNR-IBSのチームが開発した新しいCo-Pt合金ナノ触媒は、逆帯電した2つの金属錯体で構成されている。具体的な構成要素はコバルトイオンとプラチナイオンで、それぞれがビピリジン配位子と塩素配位子に囲まれている。簡単な熱処理を施すことで、ビピリジン配位子が熱分解して球殻状の炭素になり、これによって成長中のCo-Pt合金ナノ粒子が保護される可能性がある、と研究チームは仮説を立てた。熱処理条件を最適化した結果、大きさわずか3~4ナノメートルのナノ粒子を含む、均一性の高いナノ触媒を得ることに成功した。

研究チームが開発したナノ触媒内では、コバルト原子とプラチナ原子が「金属間相」と呼ばれる規則的な配列を形成している。金属間相では、不安定なコバルト原子が、プラチナ原子に取り囲まれることで安定化する。さらに、炭素担体上に窒素を効果的に添加すると、アイオノマー(プロトン伝導体)が燃料電池の触媒層全体に均一に分散した。これにより、Co-Ptナノ触媒表面への酸素供給がより促進された。

これらの構造的特徴が相まって、結果的にプロトン交換膜型燃料電池(PEMFC)の発電性能が大幅に向上し、プラチナ1グラム当たり5.9キロワットという高い定格電力を示した。これは、商用水素自動車の現行性能の約2倍だ。研究チームが開発したこの触媒は、米エネルギー省(DOE)が、燃料電池の長時間にわたる安定稼働を目指して設定した「2025年目標」をほぼ達成している。

CNR-IBSのチームは今回の研究について、次世代の燃料電池用触媒の開発を促進するものだと確信している。また、今回の研究成果はその他の様々な電極触媒の応用に向けた、合金ナノ触媒の性能と耐久性の向上にも寄与すると考えられている。

ヒョン教授は、こう述べている。「今回の研究では、前駆物質となる新しいバイメタル化合物の設計が重要な出発点となっています。我々は、シンプルで拡張性の高い方法によって、複雑な形態の合金ナノ触媒を生成する基盤技術を開発しました。そして最終的には、プラチナ使用量をより少なく抑えつつ、燃料電池の発電性能を向上させることに成功しました」

ソン教授は、「今回の研究では世界的水準の燃料電池性能が達成され、米エネルギー省が設定した2025年目標の大半を上回りました。プラチナのコストは燃料電池コストの最大約40%に上る可能性がありますが、その量を減らすことができました」と述べた。「今回の研究と複数の追跡研究は、水素自動車産業の成長と近い将来における水素経済の実現に大きな影響を与えると期待しています」

研究論文:Scalable production of an intermetallic Pt-Co electrocatalyst for high-power proton-exchange-membrane fuel cells

この記事は、SpaceDaily.comが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。