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廃熱をグリーンエネルギーに変える画期的な方法が誕生

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化石燃料への依存を軽減する取り組みにおける戦略の一つに、現在のエネルギーシステムからすでに排出されている廃熱の利用がある。米ペンシルベニア州立大学と米国立再生可能エネルギー研究所(NREL:National Renewable Energy Laboratory)の科学者チームによると、廃熱をクリーンな(汚染物質を出さない)電気に変換できる熱電発電装置について、新しい設計の飛躍的進歩により、装置の変換効率を従来よりも向上させることができる可能性があるという。

「熱電素子の変換効率を最高で15%まで押し上げる可能性のある、独自の材料設計を開発しました」と語るのは、ペンシルベニア州立大材料科学工学部のアシスタント・リサーチ・プロフェッサーを務めるリ・ウェンジー(Wenjie Li)だ。「これは、この種の熱電技術を用いてこれまでに記録された最高の効率です」

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ペンシルベニア州立大の研究者らは、温度差を電気に変換できる熱電発電装置の性能を向上させる研究に取り組んでいる。発電所の蒸気管のような熱源の近くに熱電発電装置を設置すると、電子などの電荷キャリアが、高温側から低温側に移動し、電流を発生させる。熱電素子は可動部がなく、化学反応や汚染物質排出を起こさないため、クリーンエネルギーの有望な供給源になると、研究チームは主張している。

研究チームは、熱電素子の傾斜機能材料を作製するための新しい手法を開発した。この新手法では、670ケルビン(摂氏約397度相当)の温度変化により、単脚素子で15.2%の効率を達成することができた。現在市販されている素子の変換効率は5~6%となっている。

学術誌『Advanced Materials』に2023年3月3日付けで掲載された論文で、研究チームは、この新しいアプローチについて、次世代の熱電素子の設計・開発に革新的な影響を与える可能性があることを示唆していると記している。

ペンシルベニア州立大材料科学工学部のリサーチ・プロフェッサーを務めるベッド・パウデル(Bed Poudel)は、「地球温暖化ガスの排出とそれに関連する環境問題があるため、より環境に優しい技術への移行が求められています」と指摘する。「熱電素子をより効果的なものにする今回の研究は、この目標の達成を助けることができます」

従来の熱電発電装置は、素子の高温側と低温側で性能を最適化するために、セグメント化された設計になっている。これらは材料の種類が異なる場合が多く、個別に作製し、ろう付けやはんだ付けで接合する必要がある。だが研究チームによると、これによって不均一界面が形成されることで、素子の効率が低下する可能性があるという。

今回の新しいアプローチでは、高温側と低温側の材料を一度にまとめて作製するため、不均一界面が形成されずに済む。

「基礎となるアイデアは、材料の物質群(material family)は同じで化学組成がわずかに異なる材料を用いて、二つ以上の層を統合することです」と、リは説明する。「こうすることで、傾斜機能材料を一段階で作製でき、接合のためのろう付けやはんだ付けの技術は一切不要で、不均一界面をなくすことができます」

研究チームは、電界・機械式焼結技術(EM-FAST)と呼ばれる製法を用いて材料を作製した。パルス通電加圧焼結(SPS:spark-plasma sintering)としても知られるこの技術は、電流と圧力を利用し、微粉末を圧縮して固体材料を形成する。SPSを用いると、粉末層の上に別の粉末層を配置して傾斜機能材料を作製し、ドーパント(材料の性質を変化させる物質)の添加により、各粉末層を目的に合わせて調整できる。これにより研究チームは、ほぼ同じ温度で一度に焼結できる同じ物質群の材料を使用して、高温側と低温側の化学組成を最適化することができた。

これらの材料は物質群が同じなので、熱膨張や他の力学的特性が厳密に一致する。これは、従来のセグメント化された素子に比べて、素子の運用年数が長くなることを意味すると、研究チームは述べている。

リは、「最高の変換効率を達成するための必要条件の一つは、素子全体を通過する最適電流が、高温側と低温側で同じであることです」と話す。「しかし、従来の設計では異なる物質群を使用していたため、二つの材料の電気抵抗が著しく異なっている可能性があります」

熱電素子は、2本脚のテーブルに似ている。1本の脚はp型半導体材料、もう1本はn型半導体材料でできている。今回の研究は、p型材料だけに適用されるため、これをn型に適用するための追加研究で、さらなる効率の向上につながる可能性があると、研究チームは話している。

このほか、それぞれが異なる温度範囲に最適化された脚部の付加的な層を、一段階の焼結法を用いて形成することに重点を置く追加研究が実施される予定だ。この研究によっても、効率がさらに向上するかもしれない。

パウデルは、「今回の研究で15%の変換効率を生み出したことで、今やこの技術は、小型ディーゼル発電機や太陽電池パネルといった他の最小規模の発電技術との競争力が非常に高くなったことが実証されました」と述べる。「熱エネルギーを電気に変換する方法は、これらの技術と競い合えることを、今回の研究は示しています」

ペンシルベニア州立大では他にも、アシスタント・リサーチ・プロフェッサーのアミン・ノザリアズマーズ(Amin Nozariasbmarz)と、博士課程修了研究者のユー・ツァン(Yu Zhang)とナ・リュー(Na Liu)がプロジェクトに参加した。

ペンシルベニア州立大の元研究担当准副学長兼戦略イニシアティブ担当ディレクターのシャシャンク・プリヤ(Shashank Priya)教授(材料科学工学)と、NRELのリサーチエンジニア、ラビ・アナント・キショール(Ravi Anant Kishore)も、研究に寄与した。

米陸軍のラピッド・イノベーション・ファンド(RIF)プログラム、米国エネルギー省NREL、米海軍研究局(ONR:Office of Naval Research)、全米科学財団(NSF:National Science Foundation)が、今回の研究に参加した研究者たちを支援した。

研究論文:Toward High Conversion Efficiency of Thermoelectric Modules through Synergistical Optimization of Layered Materials

この記事は、SpaceDaily.comが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。