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ドレクセル大学の酸化チタン素材、太陽光でグリーンな水素製造を可能に

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米国のインフラ投資法(Infrastructure Investment Act)による「クリーン水素ロードマップ」をはじめとするクリーンエネルギー計画は、未来の燃料として水素に期待を寄せている。だが、現在の水素分離技術は、効率と持続可能性の目標にはいまだに達していない。ドレクセル大工学部の研究者らが作製した酸化チタンのナノフィラメント材料は、代替エネルギー源の実現を可能にする材料の開発を目的とする現在進行中の研究の一つだ。どこにでもある水素分子が持つ燃料としての潜在能力を、太陽光を利用して引き出せる可能性がある。

現行の水素製造方法は、温室効果ガスを発生させ、大量のエネルギーを必要とするものだが、この発見は代替手段につながり得るものだ。光触媒反応は、太陽光だけを使って水を分解し、水素を生成できるプロセスとして、数十年前から研究が続けられているが、いまだに現実性の低い検討事項のままとなっている。なぜなら、このプロセスを可能にする触媒材料が、1~2日しか反応を持続させることができないため、長期の効率性が制約を受けた結果として商業的可能性が制限されるからだ。

ドレクセル大工学部のマイケル・バルサム(Michel Barsoum)博士とO・バドル・フセイン(Hussein O. Badr)博士が率いる研究グループと、ルーマニアの首都ブカレストにあるNIMPの科学者らとの共同研究チームはこのほど、光触媒酸化チタンベースの1次元ナノフィラメント材料について報告した。この材料は、1回につき数カ月間にわたり、太陽光で水から水素を取り出すプロセスを促進できるという。学術誌『Matter』に掲載された論文「Photo-stable, 1D-nanofilaments TiO2-based lepidocrocite for photocatalytic hydrogen production in water-methanol mixtures」の執筆者らによると、この論文は、持続可能で低コストな水素燃料製造への道筋を示している。

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米国ペンシルベニア州のドレクセル大学と、ルーマニア国立材料物理研究所(NIMP:National Institute of Materials Physics in Romania)の研究チームが発見した、酸化チタンを原料とする光触媒材料は、グリーン水素の生産に新たな道を開くかもしれない

フセイン博士は、「今回の酸化チタン1次元ナノフィラメント光触媒は、市販の酸化チタン光触媒に比べて、1桁高い活性を示しました」と話す。「さらにこの光触媒は、水中で6カ月間安定であることが明らかになりました。今回の研究結果は、光触媒における新世代の到来を象徴するものであり、これによりナノ材料が実験室から市場へ移行することが、ついに始まる可能性があります」

バルサム博士のチームは2021年、MXene材料(マキシン:遷移金属の2D層と、炭素または窒素の2D層が交互に積層配列した2次元〈2D〉材料)を生成する新しいプロセスの研究を進めるなかで、水酸化物由来のナノ構造(HDNs)を発見した。HDNsは、酸化チタンナノ材料の一種で、今回の光触媒材料もこれに属する。ドレクセル大の研究者らは、MXene材料のさまざまな用途に関する研究を行っている。チームは、MAX相と呼ばれる材料に化学的なエッチング処理を施して層状2次元構造のMXeneを得るために、標準的な腐食性のフッ化水素酸の代わりに、広く利用されている有機塩基の水酸化テトラメチルアンモニウムの水溶液を使用した。

だが、この反応で生成されたのはMXeneではなく、細い繊維状の酸化チタンベースの糸状体だった。研究チームはその後、この糸状体が太陽光にさらされると、水分子から水素を分離する化学反応を促進する能力を持つことを明らかにした。

バルサム博士は、「酸化チタン素材は、以前に光触媒能力を示したことがあったため、新しいナノフィラメントにこの特性がないかを調べるのは、研究にとって当然の過程でした」と説明する。「しかし、光触媒作用があるだけでなく、水メタノール混合液から水素を生成するための、極めて安定した、反応性の高い触媒であることも判明するとは思ってもいませんでした」

研究チームは、5種類の光触媒材料(原価が安く入手しやすい前駆物質に由来する酸化チタンベースのHDNs)を試験し、エボニック(Evonik)社の酸化チタン材料「Aeroxide P25」と比較した。P25は、商業的な実用化に最も近い光触媒材料として広く受け入れられている。

それぞれの材料を、水メタノール溶液に浸した上で、太陽のスペクトルを模倣した調節可能な照明器具から発せられる紫外線・可視光線を照射した。研究チームは、各反応器で生成される水素の量と作用時間、および触媒材料と相互作用して水素を生成した入射光の光子の数を測定した。これらは、各材料の触媒効率を理解するための物差しとなる。

測定の結果、酸化チタンベースのHDNs光触媒は、5種類ともすべて、太陽光で水素を生成する作用効率がP25を上回ることが明らかになった。そのうちの一つ、二元化合物の炭化チタン由来のHDNs光触媒は、光子が水から水素を分離できるようにする効率が、P25と比べて10倍高い。

この性能向上は、それだけでも極めて重要だが、この材料が、模擬太陽光の照射を180日以上受けても活性を維持したという研究結果はさらに重要な意味を持つと、研究チームは報告している。

フセイン博士は、「この材料が水メタノール混合液中で長期間、熱力学的に安定で、光化学的に活性であるように見られる事実は、いくら評価してもし過ぎることはありません」と指摘する。「この材料は、生産コストが高くなく、規模の拡大が容易で、水中で驚くほど安定であるため、さまざまな光触媒プロセスでの応用を研究する価値があります」

研究の次の段階は、この材料が、なぜこのような挙動を示すかに関する理解を深め、光触媒としてさらに最適化できるようにすることだ。研究チームは今のところ、この材料の1次元性と理論上の高表面積が、活性の維持に寄与しているとの仮説を提唱しているが、仮説の裏付けを得るためにさらなる検証を行う必要がある。

研究チームは現在、「正孔捕捉剤(hole scavenger)」として機能する、メタノールとは別の添加剤を探す研究も進めている。正孔捕捉剤は、水分解反応の逆反応を抑制する化学物質だ。光触媒反応のややカオス的な性質のせいで、逆反応は頻繁に発生する。

今回の研究結果は非常に有望であるため、研究チームはこの技術を中心とするグリーン水素のスタートアップを設立。ドレクセル大のイノベーション事務局、および全米科学財団(NSF)のイノベーション部隊と連携し、技術の商業化に向けて歩みを進めている。

バルサム博士は、「今回の発見が持つ可能性については、とても心が躍っています」と話す。「世界は、化石燃料に置き換わる新しいクリーン燃料を大量に必要としています。この材料はグリーン水素の潜在能力を解き放つ可能性がある、と確信しています」

さらに研究チームは、HDNsの他のさまざまな応用分野に関する研究を進めている。その中には、蓄電池や太陽電池、浄水処理や医療でのHDNsの利用などが含まれる。フセイン博士によれば、HDNsは容易かつ安全に大量生産が可能なことが、他のナノ材料と差別化できる点であり、これによって広範な潜在的用途が開かれるという。

「HDNs群のナノ構造体は、我々と協力関係にある各種団体に感銘を与え続けています。この酸化チタン・ナノフィラメントは、幅広い応用分野に活用できる可能性があります。その用途としては、浄水、染料分解、ペロブスカイト太陽電池、リチウムイオンおよびリチウム硫黄電池、尿素透析、乳がん治療、その他多数が挙げられます」と、フセイン博士は述べている。

研究論文:Photo-stable, 1D-nanofilaments TiO2-based lepidocrocite for photocatalytic hydrogen production in water-methanol mixtures

この記事は、SpaceDaily.comが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。