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折り紙や切り絵からヒントを得たロボットが、本のページをめくりながら自分の体重の16,000倍の重さのものを運ぶ
新しいグリッパーは、本のページを1枚ずつめくることができるほど感度が高い。Top Image Credit: ノースカロライナ州立大学
日本のアートである「折り紙」や「切り絵」は、独創的なロボット設計に数多くのヒントを提供してきた。その最新事例は、これまでで最も用途が多く、印象深いものかもしれない。2023年8月2日付けの「Nature Communications」で発表された、ノースカロライナ州立大学のチームが開発した新しいソフトなロボットグリッパーは、水滴を扱ったり、本のページをめくったりすることができるほど感度が高い一方で、自重の1万6000倍の物体を運べるほど強力だ。技術者たちはさらに改良を加えることにより、このグリッパーが幅広い業界に取り入れられる可能性があると考えている。そのなかには、人体に取り付ける義手などの人工装具も含まれている。
論文著者のひとりで、ノースカロライナ州立大学の機械工学・航空宇宙工学准教授のジエ・インは、「強度、精度、優しさはそれぞれトレードオフの関係にあるため、非常に柔らかいもの、非常に薄いもの、重量のあるもののすべてを扱うことができるソフトグリッパーの開発は困難なのです」と述べている。「私たちの設計は、これらの特性の見事なバランスを実現しています」
[関連記事:Foldable robots with intricate transistors can squeeze into extreme situations.]
これまでのソフトグリッパーでも、切り紙の要素を使って開発されたものはあったが、今回発表されたグリッパーでは、巻きひげのような構造で力を分散させることにより、ファスナーを開け閉めしたりコインを拾い上げたりできるほど、感度や精度が高くなるようにしている。「New Scientist」の記事でも言及されたように、この形状と、持ち上げる方法により、0.4gのグリッパーで6.4kgの物体をつかむことができる。この可搬重量/自重比は、これまでの業界最高記録と比べて2.5倍高い。
このグリッパーの能力は、素材自体ではなく設計から生まれるものであるため、研究チームは植物の葉から同様のものを作ることにより、新たな可能性も示している。生分解性のあるグリッパーが、注射針のような危険な医療廃棄物を扱うときのような、一時的にしか必要とされない状況で使われるなど、非常に有用なケースが示される可能性もある。
それだけではない。ノースカロライナ州立大学のチームはさらに一歩先に進めて、利用者の前腕の筋肉の動きを通じて制御する筋電義手にグリッパーを取り付ける実験を行なった。論文著者のひとりであり、ノースカロライナ州立大学で医用生体工学を研究する特別教授ヘレン・ファンは、「新しいグリッパーで、既存の義手のすべての機能を置き換えることはできませんが、それらの他の機能を補うために利用できます」と述べる。「そして、切り紙を応用したこのグリッパーの長所の一つは、ロボット義手で使われている既存のモーターを置き換えたり、強化したりする必要がないことです。このグリッパーを使うときは、既存のモーターをそのまま利用できます」
インやファンたちのチームは今後、ロボット義手メーカーや食品加工会社だけでなく、電子機器会社や薬品会社などとも協力して、開発したソフトグリッパーのさらなる利用法を広げていくことを望んでいる。
この記事は、 Popular ScienceのAndrew Paulが執筆し、Industry Diveの DiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。