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安価で高効率な触媒が再生可能エネルギー貯蔵を促進する可能性

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新しいプラチナの単原子触媒のおかげで、再生可能エネルギーを水素の形で貯蔵することが大幅に容易になるかもしれない。

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香港城市大学(CityU)の研究チームが開発し、インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究者がテストを実施したこの新たな触媒は、産業規模で使うために、安価に製造を拡大することが可能だとされている。

論文共著者であるインペリアル・カレッジ・ロンドン化学工学科のアントニー・クセルナク教授は、次のように述べている。「英国の水素戦略では、2030年までに10GWの低炭素水素の生産能力を達成するという野心的な目標が掲げられています。この目標を達成するためには、安価で容易な製造と、高効率な水素貯蔵の提供を強化する必要があります。今回の電極触媒(electrocatalyst)はこれに大きく貢献し、ひいては、英国が2050年までに『ネットゼロ』目標を達成することを後押しする可能性があります」

風力や太陽光を使った再生可能エネルギーの生産は、急速に拡大している。しかしこうしたエネルギーの一部は、気象条件がよくない時に備えて、貯蔵しておく必要がある。エネルギーを水素の形で蓄えるのは有望な方法の一つであり、水素であれば、後で使用するために保存や輸送が可能だ。

そのために、再生可能エネルギーを使って水分子を水素と酸素に電気分解することで、エネルギーを水素原子に蓄える。その際、水分子の分解反応(電気分解)を促進するためにプラチナ触媒が使われる。ただしプラチナは、この反応における素晴らしい触媒ではあるものの、希少で高価だ。したがって、システムのコストを削減し、プラチナ抽出を抑制するためには、プラチナの利用を最小化することが重要となる。

『Nature』誌に2023年9月13日付で公開された研究では、高効率で費用対効果の高い水分解プラットフォームの実現を目標に、プラチナの使用量をできるだけ抑制した触媒を開発し、テストを実施している。

研究チームのリーダーである張華(Hua Zhang)教授は、次のように述べている。「電極触媒で水を分解して製造される水素は、最も有望なクリーンエネルギーの一つとされており、近い将来、化石燃料に代わり環境汚染と温室効果の抑制につながることが期待されています」

テストツール

今回の研究におけるイノベーションの一つは、プラチナの単原子を二硫化モリブデン(MoS2)のシートに分散させていることだ。こうすることで、使用するプラチナが既存の触媒と比べて大幅に少なくなり、しかも電解性能が向上する。プラチナとモリブデンの相互作用で反応効率が上がるのだ。

香港城市大学のチームは、ナノシートの担体の上に薄い触媒を形成することで、高純度の材料を作ることに成功した。そして、触媒の作用を調べる手法とモデルを開発しているインペリアル・カレッジ・ロンドンのクセルナク教授の研究室が、材料の特性を明らかにした。

インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究チームが、厳重なテストを実施できるツールを持っているのは、今回のような触媒を利用するための技術を、これまでにいくつか開発してきたことによる。クセルナク教授らは、こうした技術を基に複数の会社も設立しており、水素フロー電池を専門とするRFC Powerはその一つだ。今回の単原子プラチナ触媒は、同社電池の改良にも使われる可能性がある。

水素の利用

水素の形で貯蔵した再生可能エネルギーを使う際には、燃料電池で電気にする必要がある。こうした燃料電池では、水素と酸素が反応する時の副産物として水蒸気が生じる。クセルナク教授らは最近、この反応に向けた、プラチナではなく鉄をベースにした単原子触媒も発表している。この触媒は、燃料電池技術のコスト削減につながるものだ。

この触媒技術については、やはりクセルナク教授主導のスピンアウト企業であるBramble Energyが、自社の燃料電池でテストする予定だ。再生可能エネルギーを水素の形で貯蔵する際に役立つ単原子触媒と、水素を電気エネルギーへ変える際に役立つ単原子触媒。この双方が両輪となり、水素経済の実現に近づくと期待されている。

研究論文:Phase-dependent growth of Pt on MoS2 for highly efficient H2 evolution

この記事は、SpaceDaily.comより、Industry Diveの DiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。