CLOSE

About Elements

美しい未来のために、
社会を支えるテクノロジーを

TANAKAは、「社会価値」を生む「ものづくり」を世界へと届ける「貴⾦属」のスペシャリスト。
そして、「Elements」は、わたしたちのビジネスや価値観に沿った「テクノロジー」や「サステナビリティ」といった
情報を中⼼に提供しているWEBメディアです。
急速にパラダイムシフトが起きる現代において、よりよい「社会」そして豊かな「地球」の未来へと繋がるヒントを発信していきます。

Elements

美しい未来のために、
社会を支える技術情報発信メディア

検索ボタン 検索ボタン

下落を続けるバッテリー価格の背景にあるもの

この記事をシェアする

下落を続けるバッテリー価格の背景にあるもの

自動車業界は、手頃な価格の電気自動車(EV)をつくるという課題に取り組んでいるが、ある主要指標によって、この課題の実現が容易になるかもしれない。バッテリー価格は2022年、前例のない上昇を見せたが、その後、長期的な下落のトレンドに戻りつつある。

リチウムイオン電池の価格に関するブルームバーグNEF(BNEF)の年次調査によれば、バッテリーパックの平均価格は、2022年には1キロワット時(kWh)あたり161ドルだったが、2023年は14%下落して139ドル/kWhになった。(注:2023年の実質的なドル価格。2022年調査の名目平均は151ドル/kWh)

これは、調査を開始した2018年以降で最も大きな下落だ。しかし、今回の価格下落の背景には、これまでとは少し異なる状況がある。

これまで、バッテリー価格下落の主な要因は技術革新だったが、2023年のケースは違う。今回の価格下落は主に、原材料コストの低下に起因する。

2023年1月以降、主要なバッテリー用金属、特にリチウムの価格は劇的に下落している。これは、原材料から部品、バッテリーセル、バッテリーパックに至るまで、バッテリーのバリューチェーン全体で生産能力が大幅に伸びたためだ。

需要予測も一役買った。バッテリー需要は引き続き前年から増加したが、2023年後半には、一部のEV市場で成長率が鈍化した。主な理由は、借入コストの上昇と、経済の不確実性だ。

中国のバッテリー生産だけでも世界の需要を上回っており、世界的な供給過剰を示唆している。主要メーカーのバッテリー製造工場の稼働率も、2022年を下回った。一部の自動車メーカーが生産目標を縮小したのに伴い、バッテリー製造工場は、理論上の最大能力では生産を行っていなかった。

BNEFが計算したバッテリー価格の平均価格は、乗用車、商用車、バス、二輪車、三輪車、定置型エネルギー貯蔵に搭載するリチウムイオン電池のバイヤーとセラーから集めた300以上の調査データを集計したものであり、価格はセクターによって異なる。最も安価なのは、中国のバスと、商用車のバッテリーで、100ドル/kWhだ。完全電動乗用車の平均パック価格は128ドル/kWhだった。

近年、各セクターのバッテリー価格差は収束しつつあり、これは業界の成熟と成長を示唆している。セクター間の価格差は、成熟度や注文量だけでなく、バッテリーやパックの設計要件の違いにも起因する。用途によって求められる仕様が異なるのは今後も変わらないだろうが、将来的には同じような傾向をたどるだろう、とBNEFは予想している。

大きな疑問はやはり、今後どうなるかだ。BNEFのエネルギー貯蔵部門は、バッテリー価格は原材料価格とよく似た軌跡になると予想している。我々は、2024年のパック価格は実質ベースで133ドル/kWhまで下がると予測している。長期的には、2022年の低下率をベースにした場合、2027年には100ドル/kWhを切る見通しだ。

100ドル/kWhという数字はしばしば、EVの価格が内燃エンジン車と同等になるベンチマークとして引用されてきた。確かに参考になる数字だが、現実はもっと複雑だ。価格が同等になるポイントは、地域やセグメントによって異なると考えた方がいい。

すでに価格が同等になっているセグメントもあれば、もっと価格が下がる必要のあるセグメントもある。例えば、中国のシティーカーはすでに同等の価格を達成しているが、米国のピックアップトラックは大型バッテリーに依存しているため、達成が難しい。また、100ドル/kWhは10年前から使われている数字であり、実質的とは言えない。10年のあいだに、内燃エンジン車の製造コストは劇的に上昇した。

各国は、バッテリーサプライチェーンのローカライズを目指しており、今後、地域ごとにバッテリー価格ダイナミクスが重要な役割を果たすだろう。パック価格が最も安価なのは中国の126ドル/kWhで、これに比較すると、米国は11%、ヨーロッパは20%高い。価格の高さは、これらの市場が比較的成熟していないこと、生産コストが高いこと、生産量が少ないこと、用途が多様であること、バッテリーの輸入が多いことを反映している。

欧米などの地域でバッテリー製造のローカライズが進めば、短期的には、現地生産のバッテリー価格は上昇するかもしれない。しかし業界が成熟するにつれて、こうしたコストはいずれ下がる可能性がある。現在、ほとんどのバッテリーを生産しているアジアに比べて、これらの地域はエネルギー、設備、土地、人材のコストが高いため、その分、バッテリー価格が高くなっている。米国のインフレ抑制法に基づく、セルとパックに対する45ドル/kWhの生産税額控除のような地域の政策は、価格設定への影響はまだ明らかではないが、コストの一部を相殺する可能性がある。

バッテリー価格は必ずしも単純な下降線をたどらないことが、ここ数年でわかってきた。投入コストや需給のダイナミクスにより、一時的に価格が上昇することもある。結局のところ、バッテリーとEVを手頃な値段にするには、まだ長い道のりが必要であり、そして、この目標を達成するには、生産能力の拡大、研究開発、製造工程の改善に投資を続ける必要がある。

この記事は、BloombergのEvelina Stoikouが執筆し、Industry DiveのDiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。