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深海採掘:関心が高まっている理由と、そのリスク

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深海採掘:関心が高まっている理由と、そのリスク

深海採掘とは何か

深海の採掘では、深さ200メートルを超える海底から、固体の鉱物資源を採取する。この広大な未踏の深海、特に太平洋の深海には、マンガン、ニッケル、銅、コバルトなどの鉱物を豊富に含む多金属団塊が散乱している。鉱物は、熱水噴出孔近辺や海山(海底にある山)でも見つかる。

深海採掘への関心が高まっている理由

地球温暖化を食い止めるために炭素排出量を削減しようとする競争は、銅、コバルト、ニッケルといった、エネルギー転換に必要な鉱物の需要急増につながっている。IEA(国際エネルギー機関)によると、電気自動車用バッテリーや太陽電池パネル、風力タービンに使用されるこうした鉱物の多くは、2040年には全世界のニーズが現在の2倍になるという。

例えば銅の需要は、2020年の2500万トンから、2050年までに5000万トンへと倍増すると予測されている。深海採掘の支持者たちは、陸上での採掘を大幅に拡大すれば、さらに大規模な環境破壊につながるが、海底採掘なら破壊の規模を抑えられると主張している。これに対して、深海採掘に反対する人たちは、陸上での採掘は今後も続く上に、深海採掘は海洋生物や海洋システムに「取り返しのつかない害」をもたらす、と述べている。

起こり得る環境への影響とは?

科学者たちは、世界の海洋生態系はすでに気候と生物多様性の危機によって脅かされており、ここで深海採掘を進めれば、大規模かつ重大な取り返しのつかない害がもたらされる、と警告している。ロンドン自然史博物館の科学者チームは2023年5月、太平洋のクラリオン・クリッパートン海域(Clarion–Clipperton Zone:CCZ)という、これまで科学的調査が行われてこなかった深海底で、5000種類の新種を発見したという論文を発表した。これらは、いくつかの深海採掘企業がターゲットとしている、鉱物資源の豊かな海域で発見されたものだ。

既存研究によれば、200メートルより深い海底を採掘すると、有害な騒音や振動、堆積物プルーム、(海底に届く)光への悪影響が生じる可能性がある。日本での試掘を調査した最近の研究では、採掘が行われる場所では、動物の個体数が減少し、これまで考えられていたよりも広範囲の影響が残ることが分かった。使用する燃料や化学物質が漏出・流出するリスクもある。

深海採掘を支持している国と、反対している国は?

2023年、営利目的での深海採掘の一時禁止、一時停止、禁止を求める諸国に、英国、スウェーデン、アイルランドが加わった。参加している24カ国には、ドイツ、フランス、スペイン、ブラジル、ニュージーランド、カナダ、コスタリカ、チリ、パナマ、パラオ、フィジー、ミクロネシア連邦などが名を連ねる。フランスのエマニュエル・マクロン大統領は、全面禁止を支持している。

BMWやボルボ(Volvo)などの自動車メーカーや、自動車用バッテリーをつくるサムスン(Samsung)は、自動車に深海鉱物を使用しないと約束している。

一方、ノルウェーは、自国海域での深海採掘を認めている。こうした姿勢は、環境への悪影響を理由に一時停止を強く求めている英国や欧州委員会との対立を生んでいる。

深海を管理している機関は?

国の海域を超えた海底での活動を規制しているのは、ISA(国際海底機構)という国際機関だ。ISAは、国連海洋法条約に基づき、同条約のすべての締約国を構成国として、1994年11月16日に設立された。小さな島国であるナウルは2021年6月、ISAに対して深海掘削を開始する意向を通知し、これをきっかけに、ISAは規制の完成を急ぐこととなった。2023年中には合意に至らず、ISAは2025年までに、各国が公海の深海を採掘できるのかどうか、できるのであればどのようにしてかについて議論し、規制をまとめようとしている

この記事は、The GuardianのKaren McVeighが執筆し、Industry DiveのDiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。