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貴金属リサイクル市場は不確実なのか

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Phoenixns

by MAURA KELLER
この記事はAmerican Recyclerが執筆したものです。

1年前までは世界的なパンデミックが生活を根底から変えてしまうという発想は、全くのサイエンスフィクションだと思われていたことだろう。世界経済の不透明性と大統領選挙年の伝統的な課題が、金属リサイクル市場の先行き不透明さを増長させている。

Li-Cycle社の事業開発・執行担当のSean Grixti氏は、金属リサイクル市場は現在良好であり、2021年に向け良い見通しであると語った。「これは主に、産業界における主要金属への需要の高まりと、リサイクル材料の利用意欲の高まりによるものです」。とはいえ、COVID-19は回収処理現場での作業の減少と市中からの回収量の減少をもたらし、サプライチェーンに供給への制約を与えました。
「COVID-19パンデミックは、全ての金属回収に均一に影響を与えているように思われます。主に回収現場での作業量の減少に起因した供給量減少に最も影響を与えています。」とGrixti氏は言う。

Electric car battery

Li-Cycle Technology社は、寿命になったリチウムイオン電池からの資源回収に対する革新的な技術を備えたクリーンテクノロジー企業です。リチウムイオン電池から80〜100%の材料の回収を可能にする資源循環、経済性、安全性、持続可能性を備えた回収プロセスを有しています。急速に高まる電池材料需要に向き合い、寿命になったリチウムイオン電池で持続可能、安全、顧客主義のソリューションを提供することをミッションとしている。
Li-Cycle社の共同創設者であり社長兼CEOのAjay Kochhar氏によると、COVID-19パンデミックが廃棄物及びリサイクル業界に与える経済的影響は、電子部品のサプライチェーンに波及をもたらす可能性があるとのこと。
「リチウムイオン電池サプライチェーンの世界的に重要な材料の生産は、少数の国、特に中国に非常に集中しています」とKochhar氏は述べています。「COVID-19をきっかけに、この一元化された重要な材料のサプライチェーンは、地政学的問題に対してどれほど脆弱であるかをすでに証明しています。」
Kochhar氏は、この世界的パンデミックにより、特にEV車の普及や世界レベルでの電化推進における重要局面に、地域単位での主要材料のサプライチェーンが必要であると強調しました。
「一次資源の国内調達が難しい地域では、1つの戦略は、寿命となった携帯電子機器、産業用バッテリー、EV車やハイブリッドEV車のバッテリーの再生利用など二次資源を活用することです。」とKochhar氏は述べています。

Call2Recycle社の社長兼CEOのCarl Smith氏は、原材料の市場が進化し続けることは間違いないと語る。「私たちは、世界の製造業が更なる循環型経済の実現に向けアプローチをし続け、金属のリサイクル利用により大きく依存していくと見ています。実際にヨーロッパがリードするこの傾向は、米国でも成長し続けるだろう。 私たちは、自然から採掘される原材料の製造工程での使用にますます制約が課せられ、循環型に向けたアプローチがさらに加速すると信じています。」
バッテリーのリサイクルに焦点を当てたプログラムとして、Call2Recycleはニッケル、カドミウム、コバルト、鉛の市場に大きな関心を寄せている。過去5年ほどの間、コバルトはバッテリーの製造において最も需要が大きい金属ではあったが、COVID-19の前においても、バッテリーメーカーが電池のマイナス極に使用するより安価な代替金属の模索が始まり、コバルトの価格は下落が始まっています。
「COVID-19による景気後退により、全般的に金属の動きは軟化しています。値動きは暴落には至っていないが明らかに下落しています。」とSmith氏は語った。 Call2Recycleは、カドミウム市場で大きな課題を抱えている。COVID-19の影響を受けただけでなく、昨今のEUにおけるニッケルカドミウム電池の使用禁止規制がカドミウムの価格を押し下げているのだ。

消費者教育と金属のリサイクル
金属リサイクル産業は、家庭や職場環境内の特定の金属のリサイクル方法についての消費者の理解度に依存しています。
田中貴金属による米国での調査によると、スマートフォンのリサイクル方法を知っている消費者は62%と大多数を占めていますが、実際にリサイクルを行っている消費者は16%にとどまっています。リサイクルを行わずに消費すると、長期的にはスマートフォンの材料の供給に支障をきたし、スマートフォンの生産量の不足や供給の遅れにつながる可能性があります。この調査では、リサイクルよりも、ほとんどの回答者が古い端末を売る・交換する(40%)か、保管する(26%)と回答していることがわかりました。ベビーブーム世代(54-72歳)は他の世代に比べて、スマートデバイスの部品がリサイクル可能な材料で作られていることを知っている割合が最も少なかった結果となりました。この調査結果は、リサイクルに対しメーカーは細心の注意を払う必要があることを示唆しています。貴金属やレアメタルがリサイクルされずに消費されればされるほど、材料の安定供給が崩れ、潜在的に材料価格の大幅な上昇を引き起こす可能性があります。
田中貴金属インターナショナル(アメリカ)のBusiness Development ManagerのWilliam Crockett氏は、COVID-19により回収ルートが停止したり減少したりして、金属リサイクルに影響を与えていると述べています。「消費者にとっての代替手段が限られているため、電子廃棄物は蓄積され、備蓄され、忘れ去られています。」COVID-19とは別に、金属リサイクルと電子廃棄物の市場は、新しい機会とよりクリーンな技術が導入されていることにより有望に見えると語る。
「5Gは新たな成長分野をもたらすでしょうが、e-wasteが世界的な課題になっているので、毒性への対処が必要になるでしょう」とCrockett氏は述べています。
田中貴金属は、回収・精製する貴金属の一部を「都市鉱山」から調達しています。回収された貴金属を製品製造に使用しています。その一例として、自動車の廃マフラーを回収し、安全で環境に優しい、高い回収率を実現するシステムで精製しています。これらの材料で、新しい電子機器の製造に使用されるスパッタリングターゲットやICパッケージのテストピン、各種厚膜ペースト・エポキシなどを製造しています。「TANAKAは、世界中のお客様の多様なニーズに応え、信頼を得て、常に適応していくことに全力を尽くしています。今後の課題は、多種多様な顧客に‟トータルソリューション“を提供し続け、効率的かつ迅速に事業を展開していくことです。」

未来はどうなるか

Grixti氏は金属のリサイクルが将来の原材料サプライチェーンにおいて極めて重要な役割を果たすと考えています。「現在、原材料の世界的な取引への依存を減らすために、原材料のローカルサプライチェーンを作っていく動きがますます高まっています。サプライチェーンの持続可能性を高めることへの期待も高まっています。金属のリサイクルは、この取り組みに貢献するものです。」
COVID-19が特に影響を与えた分野の1つは、リサイクルのための材料の収集です。加えて、特定の資材の収集方法は変化が必要だ。多くのバッテリーや電子廃棄物は、オフィスビルや作業所の廃材置き場から収集されています。「最近は誰もが在宅勤務しているため、これらの収集方法は効果的ではありません」とGrixti氏は述べています。多くの企業が100%在宅勤務のためにオフィススペースを捨てているため、この収集方法の問題はCOVID-19後の世界でも続く可能性があります。
理想的には、開かれた自由経済がリサイクルの‟触媒“になることが望まれるが、Smith氏は、金属のリサイクルの大幅な改善に拍車をかけるのに十分ではないと考えています。「必要な改善に拍車をかけるには、政治、特に連邦政府のリーダーシップが必要です。このことはCOVID-19後の市場の回復を支援することにとりわけ必要でしょう。このリーダーシップには、これらの市場が時間軸でどう変化していく必要があるかについて明確な道筋が示された金融刺激策が伴っている必要があります」とSmith氏は語った。

2020年12月版に掲載