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電気自動車ブームでポルトガルに「リチウムラッシュ」到来

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鉱山会社各社は、ポルトガルで新しいリチウム鉱山を開こうと急いでいる。ポルトガルは以前からヨーロッパ第一のリチウム生産国だが、リチウムイオン電池によって稼働する電気自動車の人気の高まりに対応する必要があるのだ。

「掘れば掘るほど、出てくるんですよ」。ポルトガル北部、ボティカス近郊の山地で、デイヴィッド・アーチャー氏はそう語る。同氏は、リチウム含有量を測るために花崗岩に穴を開けるクレーン掘削機の傍らに立っている。

バッテリーの需要が急増してからというもの、リチウムは、貴重な「ホワイトゴールド」の様相を帯びてきた。

アーチャー氏がCEOを務める英国の鉱業会社サヴァナ・リソーシズ(Savannah Resources)は、ポルトガルでも最も貧しく、ほとんど知られていない辺鄙なこの山岳地トラス・オズ・モンテスに、「ヨーロッパで最も重要なリチウム鉱山」を2020年に開く予定だ。

同社は9月8日、「ミナ・ド・バロソ」プロジェクトにおけるリチウム資源の埋蔵量は、当初の見積もりより44%多いことがわかったと発表した。

一方、15マイル(25キロメートル)ほど離れたモンタレグレの町では、ルーソ・レコルソス(Lusorecursos)というポルトガル企業が、ヨーロッパで「最も重要なリチウム鉱床」を活用しようとしている。同社のファイナンシャル・ディレクター、リカルド・ピニェロ氏によれば、2020年に採掘を開始する予定だ。

市場調査サイト「リチウム・トゥデイ」(Lithium Today)のマネージング・ディレクター、ルーカス・ベドナースキー氏は、「バッテリーセクターは爆発的な売れ行きを示しており、リチウムへの切実な欲求が生じている」と語る。

– バッテリーの新世代 –

電気自動車の需要が急増する中、リチウムの需要が伸びている Francisco LEONG, AFP

▲ 電気自動車の需要が急増する中、リチウムの需要が伸びている Francisco LEONG, AFP

銀白色の金属であるリチウムは以前から、携帯電話やノート型パソコンに搭載されるリチウムイオンバッテリーを製造するために使われてきたが、その需要は、強力なバッテリーを必要とする電気自動車の人気が高まるとともに急増している

欧州委員会(EC)副委員長で、エネルギー政策責任者を兼ねるマロシュ・シェフチョビッチは、「ポルトガルにとってリチウムは、第2のゴールドになり得ると、わたしは確信しています」と語った。「2025年までには、年間2500億ユーロ(約33兆円)規模のバッテリー市場がヨーロッパに誕生していると見込んでいるからです」

シェフチョビッチ氏はこれまでの約1年にわたって、EU内に「グリーンな」リサイクル/リユーサブル可能なバッテリーの新世代を築く計画に取り組んできた。

最初のステップとしては、輸入されるバッテリー原料へのEUの依存度を下げることが必要だ。EUは、圏内で消費するリチウムの86%を、主にチリとオーストラリアから輸入している。

ポルトガルは以前からヨーロッパの主要なリチウム生産国であり、市場シェアは11%あるが、採掘されたリチウムはすべて、セラミックスやガラス製品の製造に使われている。

リチウム・トゥデイのベドナースキー氏は、「ポルトガルは、ヨーロッパで最も有力な埋蔵量があることで知られています」と述べたうえで、重要な判断ポイントは、ポルトガルでの採掘が、「非常に競争が激しい世界市場のなかで、経済的に意味があるかどうか」だと付け足した。

同氏は、ポルトガルの花崗岩からリチウムを取りだすのは、チリの塩原から採掘する場合と比べて2.5倍高くつくと見積もっている。

-ホワイトゴールド・ラッシュ-

ニューヨークに拠点を置くRKエクイティ(RK Equity)の投資顧問ハワード・クライン氏は、「世界中のさまざまな管轄区域で、ホワイトゴールド・ラッシュが起きています。ドイツやフランスなど自動車産業が本拠を構える大陸ヨーロッパ諸国にとって、鉱物から電気自動車まで、ヨーロッパ内部でサプライチェーンを持つという考えは魅力的です」と語る。

ホワイトゴールド・ラッシュは、すでにポルトガルで進行中だ。ボティカスやモンタレグレにおけるプロジェクトには、数か月以内に、投資家や当局からゴーサインが出る見通しだ。

ポルトガルのエネルギー担当大臣ホルヘ・セグロ・サンチェス氏はAFPに対して、政府は「大口投資家の要望」に応えるため、他の10カ所ほどの用地に関して、リチウム試掘権の入札募集を開始する予定だと語った。

サンチェス氏によると、ポルトガル政府は2016年以降、40件を超えるリチウム探査の許可願いを受理しているという。

だが、政府は単にリチウム採掘の使用料を徴収したいだけではない。「この機会を利用して、鉱物の加工、バッテリー製造、自動車部門、再生可能エネルギーなど、関連したさまざまな産業部門を発展させたいという思惑もあるのです」とサンチェス氏は述べる。

ポルトガルのリチウムは現在、陶器やガラス製品の製造に使用されている

▲ ポルトガルのリチウムは現在、陶器やガラス製品の製造に使用されている Francisco LEONG, AFP

サヴァナ・リソースはポルトガルで、リチウムが豊富な精鉱を輸出用に生産したい考えだ。

ルーソ・レコルソスがモンタレグレで展開するプロジェクトは、さらに野心的だ。リチウムをバッテリー製造者に売る前段階の加工ができる工場を建てたいと考えているのだ。

この記事は、AFPのトーマス・カブラルが執筆し、Digital Journalサイトに掲載された記事が、NewsCred パブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。