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人工知能が可能にする、「血液検査で肺がん検診」

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肺がんのスクリーニングを行うAI(人工知能)プログラムを、研究者たちが開発した。血液サンプルを分析して、肺がんの原因となるDNAの変異を検出するものだ。

このソフトウェアは実験的なものであり、臨床試験による検証が必要だ。しかし医師たちは、大規模な試験で効果が実証されれば、肺がんスクリーニングを通常の血液検査と同程度にまで簡素化できるようになり、受診率の向上につながると期待している。

このプログラムは、遊離して血液中を循環しているDNAを調べることで機能する。いわば遺伝子の残骸であるこうした配列のほとんどは、体内の無害な細胞が分解され、中身の分子が流れ出して血中に入り込んだものだ。しかし、腫瘍が形成され成長する際にも、DNAの流出は起こる。

英国には、全国民を対象とした肺がん検診プログラムはない。ただし同国は現在、米国で採用されているような、高齢の喫煙者や元喫煙者などリスクの高い人々を対象に、低線量の胸部X線検査を実施して肺がんの有無を調べる方法の導入を検討している。

しかし、このシステムには欠陥があると指摘するのは、スタンフォード大学で放射線腫瘍学を研究するマックス・ディーン(Max Diehn)だ。彼によれば、米国で肺がん検診を受ける資格のある人のうち、この制度を利用しているのは5%にすぎない。残りの95%の人々が検診を受けていない理由は、居住地域で検診にアクセスしにくいことや、単純に検診に乗り気でないなど、多岐にわたる。

「血液検査という選択肢があれば、劇的に受診者数を増やすことができます。すでに多くの人は、毎年の定期健康診断で医師のもとを訪れる際に、採血を受けていますから」と、ディーンは言う。

学術誌「ネイチャー」に掲載された論文で、研究チームは、肺がん患者の血液中のDNAデータをAIプログラムに学習させ、主要ながん変異のうち、どれが最も発症予測に有効かを判断させた方法を解説している。その後、研究チームは学習済みのプログラムを使用。この研究のために血液サンプルを提供した別のボランティアグループのなかから、肺がん患者と健康な人を区別した。

このシステムは、確実にがんを診断することはできないが、精密検査が必要な症例へのフラグ付けを行う。この実験では、プログラムの偽陽性率は2%だった。これは、健康な人100人のうち2人が、誤って有病の疑いありと判断されたという意味だ。一方、ステージ2のがん患者の55%、ステージ3患者の約70%は、有病の疑いがあると正しく判定された。

「現在、肺がん患者の60~70%は、ステージ4の段階で診断されています。これは、肺以外にもがんが広がっている状態です」と、ディーンは言う。「わたしたちが開発したような検査方法を利用すれば、完璧ではないにせよ、早期の治療可能な段階で、大多数の症例を発見できる可能性があります」

今回の研究で、肺がん患者の血液中を循環する腫瘍DNAの量はごくわずかだとわかった。最大の課題は、これらのDNA断片に含まれる、がんを誘発する変異を、体内の正常細胞から排出されるDNAに含まれる、ほとんど害のない、ありふれた変異と区別することだった。

この研究では、血液中の腫瘍DNAの量が多い人ほど予後が悪いことがわかった。これはおそらく、がんの侵襲性が高いほど、より多くのDNAが排出されるからだろう。

英国立がん研究所(Cancer Research UK)で、早期発見研究部門の責任者を務めるデビッド・クロスビー博士(Dr David Crosby)は、次のように述べた。「肺がんで亡くなる人が非常に多いのは、多くの人が、治療が困難な末期に診断されているためです。早期に発見できれば、命を救える可能性は大きくなります。機械学習を使用した新たな研究は、肺がんの早期発見につながる有望なアプローチのひとつですが、大規模な追試によって知見を裏付ける必要があるでしょう」

この記事は、The Guardianのサイエンスエディター、Ian Sampleが執筆し、NewsCredパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@newscred.comまでお願いいたします。