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世界最大の核融合プロジェクト、フランスで組み立て開始へ

  • 環境
2020/9/16

2020年7月28日、世界最大の核融合プロジェクトが南フランスで組み立て段階に入った。5年後の2025年後半に、最初の超高温プラズマが生成される見込みだ。

200億ユーロ(約2兆5040億円)が投じられたこのITER(国際熱核融合実験炉)プロジェクトの目的は、太陽でエネルギーがつくられる反応を再現した核融合発電が商業規模で運用可能であると実証することだ。クリーンで無尽蔵の発電ができると謳う核融合発電だが、60年に及ぶ研究にもかかわらず、依然として、こうした莫大な量のエネルギーを制御する上での技術的課題を克服できていない。

数百万個の部品を使って行われる、重さ2万3000トンの巨大な核融合炉の組み立ては、歴史上もっとも複雑な工学的挑戦と言える。合計約3000トンの超伝導磁石のなかにはジャンボジェット機よりも重いものもあり、それらが総延長200kmの超電導ケーブルで接続され、世界最大の極低温プラントによって摂氏マイナス269度に保たれる。

組み立て開始の式典には、フランスのエマニュエル・マクロン大統領とともに、ITERプロジェクトに参加するEU、イギリス、中国、インド、日本、韓国、ロシア、アメリカの要人たちが参加した。日本の安倍晋三首相は、「気候変動という地球規模の課題に取り組み、持続可能な脱炭素社会を実現する上で、劇的なイノベーションは不可欠な役割を果たすと確信しています」とコメントした。

ITERのベルナール・ビゴ(Bernard Bigot)機構長は声明で、「クリーンエネルギーの専有的利用が可能になれば、地球に奇跡がもたらされる」と述べ、核融合は再生可能エネルギーとともに、交通、建築物、産業への電力供給を担うだろうと述べた。

ビゴ機構長は一方で、「核融合炉の部品を組み立てていくのは、複雑なスケジュールに沿って、スイス製の時計並みに正確に3次元パズルを組み立てるようなもの」とも評した。ITERプロジェクトに関する合意が結ばれたのは1985年だが、これまで度重なる遅れが生じてきた。

核融合は、重水素原子が融合して膨大なエネルギーを放出する現象だ。太陽では自身の巨大な重力によって反応が維持されるが、地球上で核融合反応を発生させるには、太陽中心核温度の10倍に相当する摂氏1億5000万度もの高温が必要になる。燃料である水素は海水から得られ、必要な量はわずか数グラムだが、トカマク(Tokamak)と呼ばれるドーナツ型の真空チャンバーにプラズマを封入するためには巨大な磁石が必要となる。

Nuclear fusion in the Iter reactor

従来の核分裂炉と同様に、核融合のプロセス自体からは、地球温暖化の原因となる二酸化炭素は発生しない。さらに、核融合炉ではメルトダウンが起こり得ず、放射性廃棄物の発生量も、核分裂炉よりはるかに少ない。

ITERプロジェクトは、「燃焼プラズマ」とも呼ばれる自己加熱プラズマをつくりだす世界初の計画だ。投入されるエネルギーの10倍にあたる熱の生成が期待されており、これは過去のプロジェクトをはるかに上回るものだ。磁石や分析機器に電力を供給するため、運転中は膨大な電力を消費するが、その目的は大規模核融合の概念実証であり、将来の商業核融合炉のモデルとして設計されたわけではない。

組み立てられる部品のひとつに、インド製の直径30メートルのクライオスタットがある。これは、反応炉を取り囲んで極低温に保つ装置だ。また、中央ソレノイドと呼ばれる電磁石のひとつはアメリカ製で、空母を浮かせるほどの磁力をもつ。

関連記事: After 60 years, is nuclear fusion finally poised to deliver?

これよりはるかに小規模な装置を使った核融合技術を推進する民間企業は多数ある。英国を拠点とし、1億1700万ポンド(約163億円)の投資を集めたトカマク・エナジー(Tokamak Energy)もその一例だ。同社のデビッド・キンガム(David Kingham)副会長は、「われわれはITERの進展を歓迎します。偉大な科学プロジェクトであり、トカマク型反応炉の技術を後押しするものと考えています」と述べた。「ただし、もっと迅速な進歩が可能であるとわれわれは確信しています。カーボンフリーエネルギーの需要が増加するなかで、民間投資、モジュラー設計、新素材、高度な技術が、進歩を加速させるでしょう」

一方、ITERのエンジニアたちは、自分たちの巨大プロジェクトは、実証済みの技術で実現できるサイズの限界だと述べている。

このほかの核融合技術開発企業には、グーグルと提携し、粒子加速技術を推進するトライアルファ・エナジー(Tri Alpha Energy)や、アマゾンのジェフ・ベゾスが支援し、鉛とリチウムの溶融混合物の渦を使ってプラズマを封じ込める技術を開発するジェネラルフュージョン(General Fusion)、さらにファーストライト・フュージョン(First Light Fusion)などがある。

 

この記事は、The GuardianのDamian Carrington Environment editorが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。

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