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隕石が語る、水の惑星・地球の来歴

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St. Louis MO (SPX) Aug 31, 2020

 

地球の水は、太陽系のかなたから飛来する彗星や小惑星が運んできたのではなく、地球が形成された当時に、内太陽系(水星から火星までの領域)に存在していた物質に由来することが、最新の研究で明らかになった。『サイエンス』誌に8月28日付けで発表された今回の研究は、地球には形成当初から水が存在していた可能性があることを示唆している。

フランス北部の都市ナンシーにある岩石学地球化学研究所(CRPG:仏国立科学研究センター[CNRS]と、仏ロレーヌ大学の共同ユニット)の研究者らは、エンスタタイト・コンドライト(頑火輝石球粒隕石/がんかきせき・きゅうりゅういんせき)と呼ばれる種類の隕石に水素が含まれており、その全体量は、現在の地球の海の少なくとも3倍か、おそらくはさらに大量の水を供給するのに十分な量であったことを突き止めた。

エンスタタイト・コンドライトは、内太陽系の物質だけで構成されている。これは本質的に、原初に地球を形成したのと同じ物質だ。

論文の筆頭執筆者で、CPRGの研究者ロレット・ピアーニ(Laurette Piani)は、「今回の発見は、地球の構成要素が地球の水に大きく寄与した可能性があることを示しています」と話す。当時の温度は、水が凝縮するには高すぎるものでしたが、水素を含む物質は、岩石惑星形成時の内太陽系に存在していました。

今回の研究から得られた結果は予想外のものだ。それは、地球の構成要素には基本的に水は含まれないと考えられてきたためだ。地球の構成要素は惑星形成時に太陽系の内部領域から来たが、当時の温度が高すぎたため、水が凝縮して他の固体物質と結合することはできなかった(水は、遠くから飛来した彗星や小惑星によって後からもたらされた)と考えられてきた。

エンスタタイト・コンドライトは、水がもっと遠方からやって来る必要がなかったことの手がかりを提供している。

CRPGの研究チームには、米ミズーリ州にあるセントルイス・ワシントン大学に所属する博士研究員も1人参加していた。同大学の人文科学部に所属する物理学の博士課程修了研究者、ライオネル・バシェール(Lionel Vacher)は、「自分にとって、今回の発見の最も興味深い部分は、ほぼ『乾燥している』と考えられていたエンスタタイト・コンドライトに、予想外に多量の水が含まれていることです」と述べた。

バシェールは、仏ロレーヌ大学で博士号を取得している時に、今回の研究で水の分析に使用したエンスタタイト・コンドライトの一部の準備を担当した。現在はセントルイス・ワシントン大学で、別の種類の隕石に含まれる水の組成の解明に取り組んでいる。

エンスタタイト・コンドライトは希少であり、これまでに収集された既知の隕石の約2パーセントを構成するにすぎない。だが、この隕石に特に注目せざるを得ない理由は、同位体に関して地球との類似性を持つからだ。エンスタタイト・コンドライトの酸素、チタン、カルシウムなどには、地球と同様の同位体が含まれている。今回の研究では、水素と窒素の同位体も地球と類似していることが明らかになった。地球外物質の研究においては、元素同位体の存在量を、元素の起源を特定するための特徴的な情報として利用する。

「類似した同位体組成を持つことから強く示唆されるように、エンスタタイト・コンドライトが実質的に地球の構成要素だったとすると、今回の研究結果から、この種のコンドライト(球粒隕石)が、地球の水の起源を説明するのに十分な水を地球に供給したことが示唆されます。これは驚くべきことです!」と、バシェールは述べる。

さらに今回の論文は、地球大気の成分で存在量が最も多い大気窒素が、エンスタタイト・コンドライトによって大量にもたらされた可能性があることも示している。

CPRGのピアーニは、「原初の状態のままのエンスタタイト・コンドライトは、ほんのわずかしか存在しません。つまり、母天体である小惑星上でも、地球上でも、変性されなかったもののことです」と話す。「今回の研究では、地球上の水の混入によってバイアスを受けるのを避けるために、エンスタタイト・コンドライト隕石を慎重に選定した上で、特別な分析法を適用しました」

研究チームは、従来型の質量分析法と、二次イオン質量分析法(SIMS)という2つの分析技術を組み合わせて用いることにより、隕石に含まれる微量の水の含有量と組成を正確に測定することができた。

今回の研究が発表されるまで、「この種のコンドライトは太陽近傍で形成されたと広く考えられていました」と、ピアーニは述べる。「したがって、エンスタタイト・コンドライトは『乾燥している』と広くみなされていました。何度も繰り返し主張されてきたこの仮説が、水素に関する徹底的な分析の実施を妨げてきたのでしょう」

 

この記事は、SpaceDaily.comが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。