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低コストで持続可能な新プラズマ技術により、希少元素インジウムが不要になるかもしれない

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現在の技術の数分の1という低コストで、電子機器のスクリーンや自動車の反射防止ミラー、建築物のスマートウィンドウを調光することができる技術が、シドニー大学研究者が率いるチームにより開発された。この技術は持続可能で、しかも利用が容易だ。

この技術は世界でも特に希少だが、きわめて広く利用されている「インジウム」に取って替わるものになるかもしれない。希少な化学元素であるインジウムは、スマートフォンやコンピューター、自動車のフロントガラス、自動調光ウィンドウなどのデバイスに広く用いられている。

スマートデバイスのスクリーンの製造に用いられるのはごく少量だが、インジウムは供給が難しいため高価な素材だ。産業用インジウムは、亜鉛採掘の副産物として生産されることが多いが、自然界では小規模な鉱床でしか生成されない。そうしたことから、液晶ディスプレイ(LCD)やタッチパネルなどの光電子デバイスの需要が増加すると、インジウムが不足する恐れがある。

シドニー大学のベナム・アカヴァン(Behnam Akhavan)博士は、インジウムを使用しない、プラズマによって生成されたハイブリッドのナノコンポジット材料を開発した(彼はシドニー大学医用生体工学部および物理学部、シドニー・ナノサイエンス・ハブのシニア講師で、オーストラリア研究会議(ARC)の若手研究者支援プログラム「DECRA(Discovery Early Career Researcher Award)」フェローだ)。この新材料を使えば、低コストで利用しやすく、環境に優しいエレクトロクロミック(electrochromic)技術が実現する。この技術により、ボタンを押したりスクリーンに触れたりすることで、ガラスの調光などが可能になる。

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プラズマ研究室でのベナム・アカヴァン博士。Credit:ベナム・アカヴァン博士

この研究は、2021年7月19日付けで、『ソーラー・エナジー・マテリアルズ・アンド・ソーラー・セル(Solar Energy Materials and Solar Cells)』誌で発表された。

プラズマ技術を用いて生成されたこの材料は、酸化タングステンと銀で構成されており、柔軟性のあるプラスチックを含めたほぼあらゆる固体表面をコーティングできる。

物質の第4の状態として知られるプラズマは、気体にエネルギーを加えることで生成される。プラズマの最も一般的な用途には、蛍光電球、ネオンサイン、一部のテレビ、コンピュータースクリーンなどがある。

アカヴァン博士は、「ウェアラブル電子機器やスマートウィンドウの透明度を変化させるときには、エレクトロクロミック装置がその働きを行なっている」と説明する。

「これまでそうした装置は通常、希少なインジウムのような物質に頼ってそれを行っていた。私たちは製造業者が夢見ていた技術を開発した。インジウムを使わず、そのかわりにプラズマによって作り出された3層構造を用いる技術だ。こちらのほうが製造コストがはるかに安い」

この技術の初期バージョンは、2019年に最初に製造された。「HiPIMS(High Power Impulse Magnetron Sputtering:大電力パルス・スパッタリング)」と呼ばれるプラズマ技術を使った酸化タングステン成膜技術を用いたものだ。研究チームは今回、単純な酸化タングステン層ではなく酸化タングステンと銀からなるナノコンポジットを開発した。このナノテクノロジー活用型アプローチを採用することで、エレクトロクロミック装置においてユーザーのリクエストに応じて迅速かつ効率的に色を変えられるようになる。

このプラズマコーティングは透明で、導電性も備えている。人間の毛髪の太さのおよそ1万分の1という薄さの銀層が、銀のナノ粒子を蒸着した2つの酸化タングステン薄層で挟まれた構造だ。

「プラズマによってつくられたこのコーティングは、電子ペーパー、スマートフォン、ガラス窓に施すことが可能で、弱い電流をかけて調光することができる」という。

この記事は、SpaceDaily.comが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。