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米研究チームがクリーンな水素を安価に大量生成するための大きなハードルを解決

  • 環境
2021/10/4

世界中の科学者たちは長年にわたり太陽エネルギーを利用し、水分子を分解して水素と酸素を生成する反応を発生させる方法を探究している。これは、クリーンエネルギー源としての水素を生産するための重要な反応だ。だが、こうした取り組みのほとんどは失敗に終わっている。十分な結果を得るにはコストがかさみ過ぎるし、低コストで行おうとすると効率低下につながるからだ。

米テキサス大学オースティン校の研究者らはこのほど、反応式の半分、つまり太陽光を利用して水から酸素分子を効率的に分離する方法について、低コストに行える方法を明らかにした。科学誌『ネイチャー・コミュニケーションズ』に2021年6月25日付けで発表されたこの研究成果は、エネルギーインフラの重要な一部としての水素の導入拡大に向けた一歩となる。

太陽エネルギーを利用した水素生成の可能性に関する研究は、1970年代初めにはすでに進められていたが、主流の方法にはなっていない。その理由は、主要な化学反応を効率的に行う装置に必要となる特性を持つ物質を発見できていないことだ。

テキサス大オースティン校コックレル工学部電気コンピューター工学科のエドワード・ユー(Edward Yu)教授は、「太陽光の吸収に長けていると同時に、水分解反応の発生時に劣化しないような物質が必要です」と説明する。

「太陽光の吸収に長けている物質は、水分解反応に必要な条件下では不安定に、一方で安定的な物質は太陽光を十分に吸収できない傾向があることがわかっています。このように要件が相反するため、一見すると妥協点を目指さざるを得ないという選択肢のみが残るように思われます。しかし、シリコン(ケイ素)のような太陽光を効率的に吸収する物質や、二酸化ケイ素のような十分な安定性をもたらす物質など、複数の物質を組み合わせてひとつの装置を作ることで、この相反する問題を解決できます」

しかし、これにより別の問題が浮上する。シリコンの太陽光吸収で生成される電子と正孔は、二酸化ケイ素層の全体をスムーズに移動できるようにする必要があり、そのためには通常、二酸化ケイ素層をわずか数ナノメートルにしなければならないが、これによってシリコン吸収体の劣化を防ぐ効果が減少してしまうのだ。

この問題を突破する鍵は、厚みのある二酸化ケイ素層を通るかたちで導電経路を形成する方法によってもたらされた。この方法は低コストで実行できるうえ、大量生産に規模を拡大することも可能だ。ユーと研究チームは、将来的な生産規模拡大につなげるため、半導体電子チップの製造において最初に導入された技術を利用した。

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光陽極装置の基本的な構造と機能を示した図

二酸化ケイ素層をアルミニウムの薄膜でコーティングした後、構造全体を加熱することで、二酸化ケイ素層を完全に貫通するようなナノスケールのアルミニウム「突起」が多数生成される。これらのアルミニウム突起はその後、水分解反応の触媒となるニッケルなどの他の金属材料と容易に置き換えることができる。

この装置に太陽光を照射すると、水を効率的に酸化して酸素分子を生成すると同時に、別の電極では水素を発生させる。また、長時間動作させても顕著な安定性を示す。今回の装置をつくるために採用された技術は、半導体電子機器の製造ですでに広く使用されているため、大量生産への規模拡大は容易なはずだ。

研究チームは、この技術を商業化するために仮特許を出願している。

水素生成方法の向上は、水素が持続可能な燃料源として台頭するための鍵となる。現在の水素製造の大半は、水蒸気とメタンの加熱を通じて行われているが、化石燃料に大きく依存しており、炭素の排出が発生する。

そのため、より環境志向的な方法で水素を生成する「グリーン水素」を推進する動きが起きている。水分解反応の簡略化は、この取り組みの中核となる。

水素は、比類のない特性を備えた重要な再生可能資源となる可能性を秘めている。すでに、重要な産業プロセスで主要な役割を担っているうえ、自動車業界で頭角を現し始めている。燃料電池バッテリーは、長距離トラック輸送での活躍が期待されている。さらに水素技術は、エネルギーの貯蔵にとって大きな恩恵となるかもしれない。風力および太陽光発電で、条件が良いときに発電された余剰分を貯蔵できる可能性があるからだ。

研究チームは今後、反応速度を高めることで水分解反応の酸素側の効率向上に取り組む予定だ。研究チームの次なる大きな課題は、反応式の残り半分へと進むことになる。

「我々は、反応の酸素側に対処することに、まず成功しました。これは、より困難を伴う部分です」とユーは説明する。「しかしながら、水分子を完全に分解するには、水素と酸素両方の発生反応を行う必要があります。したがって次の段階は、今回のアイデアを応用した、反応の水素側の装置開発に関する研究を実施することになります」

研究論文

この記事は、SpaceDaily.comが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。

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