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VOCとは?揮発性有機化合物に関する事実

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揮発性有機化合物(VOC)は、室温では空気より軽い化学物質で、塗料用シンナーや香水などの特徴的な匂いの元となるものだ。

VOCは飽和蒸気圧が高く(蒸発しやすく)、水溶性が低いという特徴を持つ。常温では比較的不安定で、密封していないと気体状態で空気中に漂う。水への溶解度が低いので、水にはあまり溶けず、溶けたとしてもごく少量だ。

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米環境保護庁(EPA)によると、VOCは他の化学物質を溶解する化学溶剤として広く使用されている。塗料、石油系燃料、薬剤などの物質に含まれているが、動植物や微生物によって、自然界でも生成されている。VOCへの頻繁な暴露は、呼吸刺激やがんなどの健康への悪影響に関連している。

VOCはどこから生じるのか

一部のVOCは、動植物や微生物などによって自然界で生成される。その場合は、より具体的に「生物起源揮発性有機化合物(BVOC)」と呼ばれる。学術誌『Journal of Atmospheric Chemistry』に掲載された1999年の研究報告によると、最も顕著なBVOCはイソプレンとモノテルペンだという。学術誌『Atmospheric Chemistry and Physics』に掲載された2014年の分析結果によれば、これらのBVOCはどちらも植物によって生成される。

大気中に含まれる全VOCの約90%が植物由来で、これらの化学物質は、大気中で起こる化学反応で重要な役割を担っている。例えば、2008年に『Nature』に掲載された論文によると、熱帯雨林から放出されるBVOCは、空気中の有害汚染物質と反応することで森林上空の大気を清浄で化学的にバランスのとれた状態に保つという。

自然環境に存在するVOCの約10%は人為的化合物で、多数の異なる物質に由来する。EPAによると、一般的な発生源としては、石油系燃料、油圧作動油、塗料用シンナー、ドライクリーニング用薬品などが挙げられる。VOCは、多くの一般的な家庭用品やオフィス用品にも使われている。建築資材、清浄液、化粧品、油性マジック、接着剤、プリンターやコピー機などだ。

EPAによると、屋内のVOC濃度は通常、屋外の2~5倍高くなっており最大で10倍に及ぶ可能性がある。さらに一部のVOCは屋内空気中に、屋外のバックグラウンド濃度と比べて最大1000倍という濃度で数時間滞留する可能性があることを、EPAの研究チームは明らかにした。

VOCの危険性は?

人の健康に対するVOCの危険性は、特定の化学物質と暴露のレベルによって大きく異なる。とはいえ多くのVOCは、健康上の問題を引き起こす可能性がある。特に、人が長期間にわたり、高濃度もしくは低濃度のVOCに暴露される場合だ。

有害VOCとして最もよく知られているものの一つはベンゼンだ。既知の発がん性物質で、たばこの煙、燃料、塗料、自動車などによって排出される。米ミネソタ州保健局によると、ベンゼンなどのVOCは臭気を発することがあるが、臭いは必ずしもVOCの潜在的健康リスクを示す良い指標とは限らない。

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よく遭遇するもう一つの有害VOCは、ドライクリーニングに広く用いられているパークロロエチレンだ。EPAによれば、ドライクリーニングした衣類を着たりそばに置いていたりするとパークロロエチレンを吸い込んでしまうことが、研究で明らかになっている。ドライクリーニング企業の多くが、衣類からできるだけ多くのパークロロエチレンを除去しているが、洗浄された衣類を受け取る際に臭いがしたら、まだパークロロエチレンが付着している。その場合はクリーニング店に頼んで、衣類が完全に乾燥するまで保管してもらうのが良いだろう。別のドライクリーニング企業を探すのも得策だ。

VOCへの高レベルの短期暴露による症状には、目、鼻、のどの炎症、頭痛、吐き気や嘔吐、目まい、ぜんそく症状の悪化などがある。ミネソタ州保健局によると、何年にもわたる長期のVOCへの暴露は、低レベルであっても、がん肝臓腎臓の損傷、神経系障害などを引き起こす恐れがある。

VOCを放出する家庭用品のなかで、健康リスクが最も高いのはどれかを特定するのは難しい。大半の家庭用品の場合と同様に、研究で調査するのは単独の化学物質の毒性だけであり、組み合わせではないからだ。これらの化学物質が、家庭内でどの程度の健康リスクがあるかについては、使用頻度と用途の種類に影響されるだろう。これまでに明らかになっている特定のVOCによる健康への影響の詳細については、米疾病予防管理センター(CDC)の有害物質データベースで参照できる。

工業地域以外での、衛生上安全なVOCの上限量に関する国や州の基準は存在しない。VOCが自身や家族に健康問題を引き起こしている可能性が疑われる場合は、VOC含有製品を自宅からできるだけ多く除去することを、ミネソタ州保健局は推奨している。また、VOC含有製品は、物置やガレージといった人が頻繁には出入りしない場所に保管するべきだ。自宅の換気を良くし、屋内を涼しく保つことも役立つ可能性がある。気温が高くなると物質からより多くのVOCが放出され、換気が悪いとVOCがより長時間とどまることになるからだ。

追加資料

  • 米ミネソタ州保健局のオンラインリソースでは、VOCを含有する家庭用品と、VOCを低減する方法に関する情報を提供している
  • 自宅でペンキ塗りをするとVOCが放出される。さまざまなものが動く仕組みを解き明かすウェブサイト「How Stuff Works」では、低VOC塗料がどう機能するかについて説明している
  • 米国肺協会(American Lung Association)は、室内VOCと他の室内汚染物質の発生源に関する詳細な分析結果を提供している

参考文献

“What are volatile organic compounds?” EPA. https://www.epa.gov/indoor-air-quality-iaq/what-are-volatile-organic-compounds-vocs
“Global data set of biogenic VOC emissions calculated by the MEGAN model over the last 30 years,” Atmos. Chem. Phys., K. Sindelarova et. al, 2014. https://acp.copernicus.org/articles/14/9317/2014/acp-14-9317-2014.pdf
“Volatile Organic Compounds in Your Home,” Minnesota Department of Health. https://www.health.state.mn.us/communities/environment/air/toxins/voc.htm
“Atmospheric oxidation capacity sustained by a tropical forest,” Nature, J. Lelieveld, April 10, 2008. https://www.nature.com/articles/nature06870 

この記事は、最初にLive Scienceに掲載されました。

この記事は、Live ScienceのKimberly Hickokが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。