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海からマイクロプラスチックを除去するロボフィッシュ、開発される

  • 環境
2022/9/21

海からマイクロプラスチックを除去できる小さな魚型ロボットが、科学者によって開発された。海を泳ぎ回り、自己修復する柔軟な体にマイクロプラスチックを吸着する。

マイクロプラスチックは、ペットボトルやタイヤ、合成繊維のTシャツなど、日常的に使用されるプラスチック製品から生じる微細なプラスチック粒子だ。細かく分解されたマイクロプラスチックが環境内に拡散すると、取り除くのが非常に難しい。飲料水や農産物、食品に入り込み、環境と動物だけでなく人の健康に害をもたらすため、21世紀最大の環境問題の一つとされている。

四川大学高分子研究所の研究者で、今回の論文の筆頭著者に名を連ねるユーイェン・ワン(Yuyan Wang)氏は、「水域環境から有害なマイクロプラスチックを確実に回収し、サンプリングできるロボットを開発することには大きな意義があります」と語る。同氏のチームの新しい発明は、学術誌『Nano Letters』の研究論文に詳述されている。「私たちが知る限り、このようなソフトロボットは前例がありません」

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ワン氏ら四川大学の研究チームは論文の中で、水質汚染の一因であるマイクロプラスチックを追跡する革新的な方法を提示している。水中を泳ぎ回り、浮遊するマイクロプラスチックを吸着し、損傷を受けても自己修復する小さな自律的ロボットだ。

この魚型ロボットは、体長わずか13mm。尾びれに搭載されたレーザー光システムのおかげで、秒速30mm近いスピードで泳ぐことができる。これは水中を漂うプランクトンと同程度の速度だ。

研究チームはこのロボットを、海の構成要素から着想を得た材料で製作した。貝殻の内側を覆う、真珠層とも呼ばれる真珠母だ。研究チームは、真珠層の化学的勾配に従ってさまざまな分子のシートを重ね、真珠層とよく似た素材をつくり出した。

その結果、伸縮自在でねじれにも強く、重さ5kgまで引っ張ることができる魚型ロボットが実現した、と論文には記されている。そして何より、近くを浮遊するマイクロプラスチックを体に吸着できる。マイクロプラスチックに含まれる有機色素、抗生物質、重金属が、ロボット魚を構成する素材と強い化学結合・静電相互作用を持つため、水中のマイクロプラスチックがロボット魚の表面に付着し、これを回収・除去できるようになるのだ。「ロボットが、水中のマイクロプラスチックを回収した後、研究者はさらに、マイクロプラスチックの組成や生理学的毒性を分析できます」とワン氏は話す。

しかも、この新素材は再生能力もあるようだと、自己修復材料の開発を専門とするワン氏は述べている。そのため、多少の傷を負っても、最大89%まで能力を回復し、マイクロプラスチックの吸着を続けることができる。荒海で汚染物質を回収するとなれば、損傷は十分あり得ることだ。

ただし、これはあくまでも概念実証であり、特に現実世界でどのように配備するかについてはさらなる研究が必要だ、とワン氏は強調する。例えば、現在のロボットは水面でしか動作しないため、ワン氏らは近い将来、もっと深く潜ることができる機能的に複雑な魚型ロボットを開発する予定だ。それでもこのバイオニックデザインは、他のプロジェクトのヒントになる可能性があるとワン氏は考えている。「ナノテクノロジーは、微量汚染物質の吸着、回収、検出の大きな可能性を秘めており、運用コストを抑えながら、介入の効率を高めることができると思います」

ラトガーズ大学ナノサイエンス先端材料研究センターを率いるフィリップ・デモクリトウ(Philip Demokritou)氏(同氏は今回の研究に参加していない)も、マイクロプラスチックとの戦いにおいて、ナノテクノロジーは重要な要素の一つになると考えている。

デモクリトウ氏の研究室でも、ナノテクノロジーを使って地球上からマイクロプラスチックを取り除くことに注力。ただし、マイクロプラスチックを一掃するのではなく、代替品の開発に取り組んでいる。デモクリトウ氏は2022年6月、学術誌『Nature Food』で、プラスチック製食品用ラップの環境に優しい代替品となる、植物由来のスプレーコーティングを発表した。デモクリトウ氏らの事例研究は、でんぷんをベースにしたファイバースプレーが、従来のプラスチックパッケージと同じように、病原体の侵入や、輸送中の損傷を防ぐことができると示唆している。

「この40~50年というもの、化学産業は化学製品や材料を作って世に出し、20~30年後に環境破壊の後始末をすることを繰り返してきました」とデモクリトウ氏は語る。「これは決してサステナブルなモデルではありません。私たちは安全な設計の素材を合成できないのでしょうか? 私たちは、循環経済の一部として食品廃棄物から素材をつくり出せないのでしょうか? そしてその素材を有用な材料に変え、この問題に対処することはできないのでしょうか?」

ナノテクノロジーの分野では、それは比較的容易なことだとデモクリトウ氏は述べている。素材の研究が進めば進むほど、日常生活におけるプラスチックの代替、環境中に残留するマイクロプラスチックの除去など、多面的なアプローチが可能になるという。

「ただし、発明(invention)と革新(innovation)には大きな違いがあります」とデモクリトウ氏は言う。「発明とは、これまで誰も考えつかなかったもののことを指しますよね? しかし革新とは実用化や規模の拡大につながり、人々の生活に変化をもたらすものなのです」

この記事は、The GuardianのSofia Quagliaが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。

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