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「鋼鉄のコルクのようなもの」日本古来の芸術・切り紙が工学材料に

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伝統ある日本の紙の芸術形式は、工学に素晴らしいインスピレーションを与え続けている。Top Image Credit:MIT

切り紙として知られる、紙を折ったり切ったりする日本の伝統芸術が、工学材料の新世代にインスピレーションを与えることが増えており、結果としてとびきり美しく、かつレジリエンスの高い設計が生まれている。マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者たちによる最新の事例は、ハチの巣と人間の骨の両方で見られる属性を追加することで、先進の建築材料をさらに強化するだけでなく、特定の航空機や宇宙船、ロボットなどのレジリエンスを高める可能性がある。

米国機械学会が2023年8月に開催した「Computers and Information in Engineering Conference(工学におけるコンピューターと情報会議)」で発表された新しい論文によると、MITの学際センター「CBA(Center for Bits and Atoms:ビットおよび原子センター)」のチームは、自動車や航空宇宙の設計に役立つ「プレートラティス(plate lattice)」構造の高性能材料を製造するための新たな方法を開発した。論文の主執筆者でMIT・CBAの首席研究員を務めるニール・ガーシェンフェルドは、「この材料は、鋼鉄製のコルクのようなものです。コルクよりも軽いですが、高い強度と剛性を備えています」と説明している。

研究チームは今回の革新を実現するために、従来から存在する折り紙の方法である「ミウラ折り」という折り畳み方に手を加えた。ミウラ折りは、波型の芯を2枚の平板で挟む「サンドイッチ構造」用のプレートラティスを作るためにすでに利用されている。標準的なプレートラティスのサンドイッチ構造は時間と費用がかかり、接着や溶接が難しい方法で作られることが多いが、研究チームは、ミウラ折りの設計の鋭角を面にすることでリベットやボルトで平板を取り付けられるようにした。このように手を加えられた設計は、さまざまな折り畳み模様や形状を使ってカスタマイズすることで、特定の剛性や柔軟性、強度をさらに高めることができる。これは、骨やハチの巣の内部で見られるセル(細胞)形状によく似ている。

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チームの研究結果によると、切り紙で機能を高めたプレートラティスは、アルミニウムを波状にした標準的な設計の3倍の力に耐えられるという。この特性は車や航空機、宇宙船の内部で必要とされる、軽量で衝撃を吸収する部位に極めて有望だ。

論文の共同主執筆者で、CBAの研究助手を務めるアルフォンソ・パラ=ルビオは、「プレートラティス構造は非常に難しいため、マクロ規模での研究がほとんど存在しませんでした」と説明する。「私たちは、折り畳むことで金属から作られるこのようなタイプのプレート構造を利用しやすくできると考えています」

切り紙からインスピレーションを受けた構造と芸術性という、両方の可能性を具体的に示すために、チームに所属する大学院生たちの一部は、大きな3次元の彫刻作品を3点設計した。それらは現在MITメディアラボで展示されている。「これらの芸術的な作品は、つまるところ私たちが論文で示した数学や工学の貢献があってこそ可能になったものです」と、パラ=ルビオは述べる。「それでも私たちは、自分たちの研究が持つ、美的感覚に訴える力を無視したくはありません」

この新しいプレートラティスの製造方法は、当分のあいだ、構築前のモデル作成が難しいという段階にある。ただしチームでは今後、一般ユーザーにも使いやすいCADツールを構築し、切り紙ラティスの設計プロセスを合理化・単純化する考えだ。2023年8月22日に行われたMITの発表によると、生産前の設計シミュレーションにかかる計算費用を削減する方法も研究したいと考えているという。

この記事は、Popular ScienceのAndrew Paulが執筆し、Industry Diveの DiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。