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廃水を浄化しながら水素燃料を生成する「一人二役」の触媒

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水素は、化石燃料を使わず太陽光を使って水から抽出した場合、公害を出さないエネルギー源になる。しかし、触媒と光を使って水分子を分解する現行の方法では、その過程を速めるために化学添加物を加える必要がある。

『ACS ES&T Engineering』誌に2021年2月17日付で発表された研究では、排水にすでに含まれている薬物などの化合物を分解しつつ、水素燃料をつくり出す触媒を開発した。汚染物質を取り除きながら、役立つものをつくり出すというわけだ。

太陽のエネルギーを利用して水を分解し、水素燃料をつくることは、再生可能な資源として有望だ。しかし、その過程を速めるために触媒を使うとしても、反応には時間がかかる。アルコールや糖を加えて水素生成の速度を速める場合もあるが、これらの化学物質は、水素の生成とともに分解される。つまり、この方法は再生可能とは言えない。

別の方法として、排水に含まれる汚染物質を利用して、水素燃料の生成を促進する試みが行われてきた。チタンをベースにした触媒は、汚染物質除去と水素生成の両方のはたらきをするが、反応サイトの一部が重なっているため、その効率は、どちらについても期待より低いものだった。

このような干渉を減らすための方法のひとつが、種類の異なる導電性金属を組み合わせることで、反応が起こる場所を分けるというものだ。そこで、中国広東省にある中山大学の李傳浩(Chuanhao Li)が率いる研究チームは、酸化コバルトと二酸化チタンを合わせることにより、二元機能触媒(dual-functional catalyst)をつくろうと考えた。排水によく含まれる薬品を分解するとともに、水を効率的に燃料用水素に変える触媒だ。

この触媒をつくるために、研究チームは、ナノスケールの二酸化チタン結晶に、酸化コバルトの薄膜をコーティングした。初期のテストでは、この材料からそれほど多くの水素は生成されなかった。そこで次のステップとして、チームはこの二元機能触媒に、重量1パーセントのプラチナのナノ粒子を加えた。プラチナは高価だが、水素を効率よく生成できる触媒だ。

このプラチナ添加触媒に模擬太陽光を当てると、2種類の抗生物質が分解され、十分な量の水素が生成された。研究チームは最終的に、3つのサンプルを使ってこの触媒のテストを行った。本物の排水、中国の川から採取した水、純水の3つだ。

模擬太陽光を当てると、3つのサンプルすべてで水素生成が促進された。水素の生成量が最も多かったのは排水サンプルだった。この触媒は、排水を処理すると同時に水素燃料を生成する持続可能な選択肢になり得ると、研究チームは述べている。

研究論文

この記事は、SpaceDaily.comが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。