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宇宙で富を掘り起こす計画「小惑星採掘」

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米国に拠点を置く民間宇宙団体「ARCA Space」が計画する小惑星採掘プログラム「AMi(Asteroid Mining Program)」は、小惑星を採掘して貴重な鉱石を得ることによって、史上最大級の富の源泉を解き放つ10年計画だ。

最初のミッションは2027年に計画されており、プラチナ1000キログラム、3400万ドル(約48億7900万円)相当の採掘を目標としている。ただし回収カプセルは、最大で2500キログラム、8500万ドル(約121億9900万円)相当のプラチナを持ち帰ることができる。

2031年までに10億ドル(約1435億円)相当の鉱石を地球に持ち帰り、貧困、健康、教育、温暖化といった地球上の問題に1億ドル(約143億5000万円)を投じる計画を立てている。また、利益の大きな部分は、AMi探査プログラムの能力をさらに高め、経済的合理性によって推進される人類の太陽系進出を後押しするために使われる予定だ。

経済的考察

小惑星は、太陽系が形成されたときに残された天体だ。地球の近くを通過する小惑星もあり、地球近傍天体(NEO)と呼ばれている。

小惑星には、膨大な量の鉱物が存在する。金、プラチナ、ロジウム、イリジウム、銀、オスミウム、パラジウム、タングステンなどの貴金属が含まれる可能性もある。小惑星は重力が小さいため、これらの金属が比較的均等に分布している。

プラチナが豊富な小惑星では、1トン当たり最大100グラムを含む可能性がある。この割合は、南アフリカにある露天掘りプラチナ鉱山の10~20倍に相当する。NASAによれば、火星と木星の間にある小惑星帯全体では、地球上のすべての人に1億ドルを配分できるほどの富が存在するという。

地球で行われているレアメタルの採掘は、激しい汚染を伴うプロセスだ。宇宙での採掘は、地球での採掘に比べて汚染物質を大幅に減らすことができる。

計画をどのように実現させるのか

ARCAはこの計画を実現するため、「EcoRocket Heavy」というロケットと、「AMi Cargo」という宇宙船を開発している。

EcoRocket Heavy

EcoRocket Heavyの製造に先立ち、EcoRocket Demonstratorが開発された。目的は費用対効果と環境保護という、2つの主な特性を実証することだった。

ARCAが小惑星採掘機の打ち上げに用いる予定のEcoRocket Heavyは、再利用可能な海上発射の3段式ロケットで、環境に優しく、前例がないほど低コストだ。軌道上まで24トンを運ぶことができる。

EcoRocket Heavyは、EcoRocket Demonstratorの1段目の改良版を「推進モジュール」として使用する(推進モジュールは、それ自体がロケットとして機能する)。推進モジュールは大量生産され、相互に結合させることで重いペイロードを運搬できる高性能な構造物になる。

重いペイロードを運搬できるロケットの開発で問題になるのは、主に大きくて軽い構造物の製造と運用だ。直径10メートル、長さ数十メートル、重さ数十トンの壊れやすいタンクを扱うためのインフラは、非常に要件が厳しくコストもかかる。

そこでARCAでは、操作や試験が容易で、普通のトラックで運ぶことができる小型構造物を使ってEcoRocket Heavyをつくることにした。

そのため、EcoRocket Heavyは、縦より横が大きい独特の構成になっている。

3段目はペイロードの周囲に配置され、2列の推進モジュール、合計30基で構成される。2段目は3段目を取り囲むように配置され、3列の推進モジュール、合計90基から成る。

1段目は、420基の推進モジュールを7列に並べる。その結果EcoRocket Heavyは、最大直径34.5メートル、高さ28メートル、空虚重量188トンとなる。

ペイロードを含めた打ち上げ時の総重量は5680トン、推力は1万2600重量トン。これまでに建造されたどのロケットよりも重く、打ち上げ時の推力も大きい。また、これまでで最も低コストとなる、1キログラム当たり208ドル(約3万円)のコストを約束している。

AMi Cargo

AMi Cargoは、複合材料を使用した20トンの宇宙船で、採掘候補地を特定するための偵察ミッションや、実際の小惑星採掘作業に使用される予定だ。

主推進剤タンクには、推進剤となる17トンの水が入る。

全体で384平方メートルに及ぶ太陽光パネルを搭載しており、これらが60キロワットを生み出す。これらのパネルは、4本の軸を中心に、8区分に分かれた羽根のように機体に取り付けられている。この電力は、アーク放電式エンジン(イオンエンジン)を動かすために使用される。

小惑星採掘の手順

まずは、EcoRocket Heavyで、AMi Cargoを軌道に乗せる。

ロケットの1段目は32秒間推進し、機体は高度7000メートル、時速1750kmに達する。

高度7000メートルで2段目が分離され、高度4万3000メートル、時速3800kmに達するまで50秒間上昇を続ける。どちらも純粋な垂直軌道だ。

3段目は、高度60キロメートルで2段目から分離される。軌道投入のため、姿勢制御システム(RCS)を使ってピッチとヨーの2軸の調整を開始する。

調整後に3段目のエンジンが始動し、時速2万8500km、高度160キロメートルに達するまで185秒間推進する。

3段目のエンジンが停止した後、AMi Cargoがロケットから分離する。

1段目と2段目は、飛行を終えると小さな減速用パラシュートを展開する。そして、推進モジュールを利用して6秒間の短いブレーキをかけながら降下する。発射地点近くの海に着水したあと、2隻のタグボートで港までけん引される。その後、検査が行われ、1段目と2段目は次の飛行に備える。

高度160キロメートルの低軌道(LEO)に入ったAMi Cargoは、34日間にわたってエンジンを噴射してらせんを描きながら高度を上げていき、最高高度50万キロメートル付近に達する。この飛行が終了した時点で、AMi Cargoは秒速3.5kmのデルタV(加速前後の速度差)に相当する位置エネルギーを得て、脱出条件を満たしたことになる。

AMi Cargoはさらに7日間エンジンを噴射し、秒速1.4kmのデルタVを追加する。目標は、地球から700万キロメートルの距離にあると考えられるインターセプション(捕捉)ポイントで、目標をインターセプトするための軌道を確立することだ。

この2回目の飛行を終えるとエンジンが停止し、AMi Cargoは約58日間、慣性飛行で小惑星に背後から接近する。

小惑星に接近し、目標到達まであと5日ほどとなったら、AMi Cargoはここで飛行姿勢を変更し、エンジンを噴射してブレーキをかけながら、小惑星と約10キロメートルの距離で「編隊飛行」をおこなう。

AMi Cargoは再び飛行姿勢を変え、小惑星の方を向く。その後、回収カプセルが切り離される。回収カプセルは、「サービスモジュール」のメインエンジンを噴射し、小惑星を目指す。

小惑星の表面から約100メートルの距離に達したら、カプセルは短時間、姿勢制御システム(RCS)を使い、小惑星に銛(もり)を打ち込んでから、上部に付いた6本の脚で軟着陸する。

暫定的な採掘方法は次の通りだ。回収カプセルには採掘装置が格納されており、カプセルが小惑星にしっかり固定されると、採掘装置が展開される。回収カプセルの上に付いた6本の脚は、空気圧で先端を調整できるようになっている。小惑星から10メートルの距離で、カプセルは銛を発射し、小惑星に打ち込まれた銛は地中で固定される。ウインチでケーブルを回収しつつ、カプセルを小惑星に引き寄せる。そして、カプセルの脚の間に覆いを展開し、採掘作業を行うための保護ドームをつくる。

カプセル上部からドリルが展開され、採掘が始まる。対面する脚同士の間(直径)は4メートルで、採掘可能な範囲は直径3メートル、深さ6メートルだ。つまり、最大42.4立法メートルの採掘物を処理できることになる。M型小惑星(ニッケルや鉄を多く含む金属質の小惑星)の平均密度を1立法メートル当たり5320キログラムとした場合、処理できる採掘物は225.6トンになる。1トン当たり100グラムのプラチナが含まれると仮定した場合、1回の採掘で22.6キログラムのプラチナを得ることができる。

採掘物をスキャンしてフィルターにかけ、貴金属を取り出す。貴金属はカプセルに貯めておき、不要な部分は袋に入れて排出し、袋ごと小惑星に固定する。

回収カプセルの容量が2.5トンであることを考えると、回収できないプラチナは置いて帰ることになる。しかし、採掘物に含まれるプラチナが2.5トンに満たない場合、姿勢制御システム(RCS)でカプセルを移動させ、採掘作業を繰り返すこともあり得る。

これらの採掘作業はすべて、サービスモジュールのバッテリーに蓄えられたエネルギー10メガワットで行われる。

これはあくまで、現在考えられている暫定的な採掘方法だ。採掘の専門家に幅広く意見を求め、可能な限り効率的な方法で実施する予定だ。

カプセルは、鉱石を満載したらAMi Cargoに戻る。AMi Cargoは6日にわたってメインエンジンを噴射し、秒速1.4kmのデルタVで帰還軌道に入り、慣性飛行を59日間行う。

地球に近づいたら、高度5万キロメートル地点で、カプセルがAMi Cargoから切り離される。カプセルは地球に向かって降下を開始し、大気圏に再突入した後、船またはヘリコプターで回収される。

総飛行時間は、採掘作業に割り当てられる時間を除いて172日と推定されており、誤差は2週間に収まる見込みだ。総ミッション時間は186日程度になるとみられている。

予算

ARCAは、少ない資金で大きな成果を上げるスキルを駆使して、AMi探査プログラムの実現に取り組んでいる。

小惑星探索は極めて低予算で行われるか、そうでなければ当分は行われないとARCAでは考えている。

再利用可能なEcoRocket Heavyの製造に必要な金額は、合わせて2300万ドル(約33億円)。

EcoRocket Heavyロケットの打ち上げ費用は500万ドル(約7億1800万円)。

小惑星採掘ミッションのコストは580万ドル(約8億3200万円)に達する見通しだ。

採掘を開始するには、2022~2027年に1億ドル(約143億5000万円)が必要だと試算されている。この金額を用意するため、2022年9月に暗号通貨「AMi Exploration Crypto」を発行し、非公開の販売と公開取引で7300万ドル(約104億7700万円)を調達する予定だ。

このARCAトークンの有用性は、所有者がトークンを使って優先的に鉱石を購入できることにある。販売価格の20%にトークンを使って購入することも可能だ。

AMiコミュニティー
AMi探査プログラムの実現を支援したいという人がいたら、連絡してほしい。ボランティアとして貢献してくれた人は、1時間当たり10ドル(約1435円)相当のトークンを報酬として受け取ることができる。

また、寄付者には、感謝の印としてトークンを贈呈する予定だ。

この記事は、SpaceDaily.comが執筆し、Industry Dive Content Marketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。