CLOSE

About Elements

美しい未来のために、
社会を支えるテクノロジーを

TANAKAは、「社会価値」を生む「ものづくり」を世界へと届ける「貴⾦属」のスペシャリスト。
そして、「Elements」は、わたしたちのビジネスや価値観に沿った「テクノロジー」や「サステナビリティ」といった
情報を中⼼に提供しているWEBメディアです。
急速にパラダイムシフトが起きる現代において、よりよい「社会」そして豊かな「地球」の未来へと繋がるヒントを発信していきます。

Elements

美しい未来のために、
社会を支える技術情報発信メディア

検索ボタン 検索ボタン

レーザーによる貴金属ナノ粒子の固相合成法

この記事をシェアする

レーザーを用いたナノ粒子の製造技術は、純粋に化学的な製造方法の代替となる、強力で柔軟な手段を提供するものだ。レーザーで合成された貴金属ナノ粒子は、特異な表面特性を有するため、触媒としての重要性が近年ますます大きくなっている。高価な貴金属材料の消費を最小限に抑え、さまざまな電気化学的触媒の活性種を最大限に利用するために、ナノスケールや原子スケールの材料の設計に努力が注がれている。

金属ナノ粒子のサイズが、数ナノメートル、あるいは原子レベルにまで減少すると、露出表面原子の数が増えるため、金属ナノ粒子の触媒性能が効率的に向上する可能性がある。だが、粒径2ナノメートル(nm)未満の金属粒子の合成はいまだに困難であり、レーザーを用いた液相法による単原子分散種の合成はこれまで成功していなかった。反応物を効果的に閉じ込めない限り、液体中での核生成と結晶成長がほぼ避けられないからだ。

英マンチェスター大学のシュー・リュー(Zhu Liu)教授が主導し、博士課程大学院生のユードン・ペン(Yudong Peng)が主要研究者として参加した研究チームは以前、『Advanced Functional Materials』誌に2020年8月7日付けで論文を発表していた。高性能の電極触媒を得るための、還元型酸化グラフェン上における粒径2nm白金ナノ粒子のレーザー液相合成法に関する研究結果だ。これに続く今回の研究では、白金のサイズをさらに単原子レベルにまで減少させることを目指した。

研究チームは、『Light Science and Application』誌に2021年8月18日付けで発表された最新研究で、独自のレーザー合成技術を開発し、還元型酸化グラフェン支持材の上に直接成長させる白金単原子触媒の調製に、この技術が非常に有効であることを実証した。

この方法では、白金と電気化学剥離酸化グラフェン(EGO)の複合体(Pt-EGO)試料を調製するにあたり、ヘキサクロリド白金(IV)酸(H2PtCl6)を添加したEGOヒドロゲル膜を凍結乾燥し、H2PtCl6前駆体の「分離分散状態」をEGO基材上に形成する。これは、波長1064nmナノ秒パルスレーザーや、355nmピコ秒パルスレーザーを用いたレーザー照射を行う前段階において、白金の単原子分散を達成するために不可欠な過程だ。

さらに、高速のレーザー走査は、急速な加熱冷却プロセスにつながり、これにより白金原子の移動が妨げられる。このようにして得られた単原子触媒は、水素発生反応において、電流密度10ミリアンペア毎平方センチメートル(mA/cm2)での過電圧が42.3ミリボルト(mV)と小さく、市販の白金炭素触媒と比べて10倍も高い質量比活性(mass activity)を持つことを、研究チームは明らかにした。

研究チームは以下のように述べている。「気候変動との闘いにおいて、脱炭素社会を実現するために、触媒はエネルギー転換(水素発生など)や脱炭素反応(二酸化炭素排出削減など)等のさまざまな応用面で非常に重要な役割を担います。新素材のレーザー合成の分野では、研究者たちはサイズの限界を打ち破り、原子レベルに到達することを目指して努力しています」

「我々の研究では、白金担持グラフェンの単原子触媒を合成するための迅速で多用途の固相レーザー製造技術が、レーザーを用いた原子レベル素材合成の新記録を達成したことを示しました。この技術は、さまざまな単原子を担持させた種々の基材の製造に新たな道を開くと考えられるものであり、高性能触媒のロールツーロール製造のための有望な可能性を有しています。その他の潜在用途については、これから詳細な調査が実施されます」

研究論文

この記事は、SpaceDaily.comが執筆し、Industry Diveパブリッシャーネットワークを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comまでお願いいたします。