貴金属ナノ粒子
バルクとも分子とも異なる性質を示す貴金属ナノ粒子
従来の材料には見られない新機能を有する貴金属ナノ粒子を設計・合成し、社会課題の解決に貢献できる新規材料開発を行っています。
高分子保護ナノ粒子
一般的にサイズが1~100nmと定義されるナノ粒子は、バルク金属とも分子とも異なる特異的な性質を有しており、触媒をはじめ様々な用途に応用が期待される材料です。ナノ粒子表面に保護剤と呼ばれる高分子を修飾することで、溶媒に安定に分散させることが可能です。
■貴金属ナノ粒子
当社でサンプル提供している一般的なナノ粒子溶液
(wt.%) |
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Au PVP | Au | 5~10 | PVP※1 | 4 | 水 | |
Pt PVP | Pt | 2 | ||||
Pd PVP large | Pd | 5~20 | ||||
Pd PVP fine | 4 | |||||
Pt PAA | Pt | 2 | PAA※2 | 2 | ||
Pt PEI | Pt | 3~5 | PEI※3 | ~0.5 |
- ※1:PVP;ポリビニルピロリドン
- ※2:PAA;ポリアクリル酸
- ※3:PEI;ポリエチレンイミン
- その他、相談に応じ試作します。
- ※量産スケールは別途、ご相談願います。
■TEM写真
Pt PVP
Pd PVP
金ナノシェル粒子
厚さ10nmの金ナノシェル
シリカナノ粒子の表面をAuでコーティングした粒子 (金ナノシェル粒子) です。金ナノシェル粒子全体の大きさは80nm~250nmの範囲で制御でき、幅広い光学特性を持たせることが可能です。
■特長
- 10nm未満の非常に薄いシェル厚であるため入射光のエネルギーを効率よく吸収でき、さらに粒子全体の比重が軽くなるため分散安定性にも寄与します。
- 水および有機溶剤中で安定的に分散 可能です。
- 保護剤で保護された粒子はAu濃度として20wt%程度まで調製可能です。
- 金ナノシェル粒子(220nm)のSTEM写真
白いコントラストが金
- 金ナノシェル粒子分散液
左:100nm、右:220nm
本技術はコロイド結晶、表面増強ラマン散乱、光熱変換材料など可視光から近赤外光領域の光に応答する光学材料としての利用と、高画質を求める液晶に採用される光学ディスプレイや光センシング、プラズモニックナノアンテナ、がん検査などに用いられるバイオセンサーなどの光学機器への応用が期待できます。
異方性貴金属ナノ粒子
一辺約50nmの金ナノ立方体
精密制御が可能な金ナノ立方体
立方体一辺の大きさは20-100nm程度まで精密に制御が可能です。エッジ形状もシャープなものから丸みのあるものまで調整することができます。等方的な球とは異なり、入射する光の方向や角度によって局在表面プラズモン共鳴による増強電場にも異方性が生じます。
金ナノ立方体の電場増強のシミュレーション図

50nm金ナノ立方体の電場増強のシミュレーションを行うと、x軸方向へ偏光した光を入射したとき入射した光の数百倍の強度を持つ光 (電場) がエッジ端点に集中していることが分かります。
■特長
- 立方体をはじめとして、その他ロッドやプリズム形状についても合成可能です。
- 形状、大きさの制御により局在表面プラズモン共鳴のピーク波長を可視から赤外まで制御できます。
- 異方性粒子を核としてその他の金属を表面へ付与することが可能です。
本技術は、光電変換、光熱変換、光触媒、など可視光から赤外光領域の光に応答する光学材料としての利用や、生体分子と組み合わせたバイオイメージングなどへの応用が期待できます。
量子ドット
様々な光を利用可能な量子ドット
量子ドットと呼ばれる半導体ナノ粒子です。複数の金属種とカルコゲンを適切に混合させることで、粒径分布の揃った多元系半導体ナノ結晶を作ることができます。
■特長
- コアの組成、粒径を制御する事によってバンドギャップ幅(吸収波長)を調整する事ができます。
- 可視~近赤外(Near-InfraRed, NIR)~短波赤外(Short Wavelength InfraRed, SWIR)域まで幅広い波長の光を利用することができます。
- 粒子のコアシェル化や特定原子のドーピングによって、高性能な量子ドットが得られます。
- 鉛等の環境負荷物質を含みません。
- 有機溶剤に安定分散したインクが作成可能のため、スピンコートのような簡便な方法で製膜が可能です。
-
量子ドットの粒径制御の例
- スピンコートで製膜された粒子の断面画像
本技術は光を使う様々な分野への応用が期待されています。特に、太陽電池や光センサのような光電変換材料、レーザーやイメージングなどの発光材料としての用途が期待されています。
金属クラスター
Ag12クラスター分子モデル
リンカー分子により連結した貴金属クラスター
数個から数十個の金属原子が結合した金属クラスターは粒径4nm以下の微細粒子であり、機能性ナノ材料の構成単位として注目されています。一般に粒径が小さくなるほど不安定化するため、当社ではリンカーと呼ばれる有機分子によって連結した材料を開発しています。
■特長
- リンカー分子による集積化によって高い構造安定性を実現しました。
- クラスター同士の距離を一定に保つことで、均質な物性発現が期待できます。
- クラスターが2次元配列した特異的なシート構造となり、高い結晶性を示します。
Ag12クラスター集積体のSEM画像と分子モデル
関連文献:
DAS, Saikat, et al. Silver cluster-assembled materials for label-free DNA detection.
Chemical Communications, 2023, 59.27: 4000-4003.
本技術は化学センサーや触媒、電子デバイス材料への応用が期待できます。