プローブピン材料
半導体製造の検査工程で用いられる貴金属系プローブピン材料。
半導体製造の前工程及び後工程で実施される検査用のプローブピンとして幅広い貴金属材料を取り揃えています。
プローブピン材料の用途
半導体集積回路は、その製造工程における前工程と後工程のそれぞれで、通電試験が行われます。
前工程で行われる通電試験はウエハーテストと呼ばれ、プローブカードが使用されます。プローブカードには探針としてカンチレバータイプやバーチカルタイプなどのプローブピンが使われます。
後工程で行われる通電試験はファイナルテストと呼ばれ、テストソケットが使用されます。テストソケットには探針としてポゴピンタイプのプローブピンが使用されます。
プローブピン材料には、その用途に応じて硬さや曲げ性等の機械的性質、電気抵抗率等の電気的性質など求められる性能が異なるため、様々な材料がラインナップされています。
プローブピンの種類と特徴
■カンチレバータイプ
(特徴)配線用基板のテスト用の片持ち梁の原理で働く端子構造を持つプローブカードに使われます。プローブピンの先端部は針状するテーパー加工と曲げ加工をして使用します。
(材料の要求特性)材料の硬さ、直線性、電気抵抗率、屈曲性等
(線径)Φ50~300µm
■バーチカルタイプ
(特徴)配線用基板のテスト用の座屈応力の原理で働く端子構造を持つプローブカードに使われます。プローブピンの先端部は基板に応じてニードルや半球形状等に加工して使用します。
(材料の要求特性)材料の硬さ、直線性、電気抵抗率、屈曲性等
(線径)Φ20~70µm
■ポゴピンタイプ
(特徴)スプリングプローブ・コンタクトプローブとも呼ばれます。IC、電子部品やプリント基板の電気的通電検査に使われます。先端部を検査対象に対応した形状に加工して使用します。
(材料の要求特性)材料の硬さ、直線性、接触抵抗等
(線径)Φ500µm~1,000µm
主要なプローブピン用材料一覧
SP-1 | SP-2 | SP-3 | TK-1 | TK-H | TK-FS | Rh | Ir | ||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
組成 [mass%] |
Pd | 35 | – | 43 | 40 | 45 | 55.8 | – | – |
Ag | 30 | 10 | 40 | 29.5 | 19.5 | 6.9 | – | – | |
Au | 10 | 70 | – | – | – | – | – | – | |
Pt | 10 | 5 | 0.5 | – | – | – | – | – | |
その他 | Cu, Zn | Cu, Ni | Cu | Cu等 | Cu等 | Cu等 | Rh | Ir | |
対応線径 [mm] | 0.08-1.00 | 0.08-1.00 | 0.08-1.00 | 0.05-1.00 | 0.50-1.00 | 0.04-1.00 | 0.03-0.30 | 0.03-0.30 | |
電気抵抗率 [µΩ・cm, @R.T.] |
25.0 | 13.3 | 28.3 | 10.4 | 10.6 | 6.8 | 4.8 | 5.6 | |
導電率 [%IACS] | 6.9 | 13.0 | 6.1 | 16.6 | 16.3 | 25.4 | 35.9 | 30.8 | |
抵抗温度係数 [ppm] | 299 | 420 | 542 | 814 | 1091 | 1346 | – | – | |
ビッカース硬さ [HV] | 300-350 | 300-360 | -320 | 460-490 | 500-520 | 400-520 | 400-550 | 500-750 | |
引張強さ [MPa] | 1210-1450 | 1210-1350 | 1140-1395 | 1550-1750 | 1470-1550 | 1250-1720 | 1400-1800 | 1700-3600 | |
伸び [%] | 1-2 | 1-2 | 1-2 | 2-3 | 1-2 | 8-13 | 1-2 | 1-2 | |
ヤング率 [GPa] | 112 | 106 | 119 | 110 | 112 | 150 | 380 | 530 | |
0.2%耐力 [MPa] | 1160-1400 | 1100-1250 | – | 1410-1630 | 1360-1490 | 1180-1640 | ~1700 | ~3400 | |
弾性限 [MPa] | 1110-1170 | 1050-1100 | 900-1000 | 1100-1280 | 900-1100 | 1000-1500 | ~1350 | ~2900 | |
弾性限伸び [%] | 0.9-1.3 | 0.8-1.0 | 0.7-0.9 | 1.5-1.7 | 0.7-0.9 | 0.8-1.1 | 0.3-0.6 | 0.4-0.6 | |
90°折り曲げ回数*1 [回] | 3-6 | 3-6 | 8.5 | 0-2 | 0-1 | 8-10 | – | – | |
備考 | ASTM B540 相当 |
– | – | – | – | 当社保有特許 対象製品 |
当社保有特許 対象製品 |
当社保有特許 対象製品 |
*1:線径0.10mmにおける破断までの繰り返し折り曲げ回数(当社基準)
上記は一例であり、掲載のない組成にも対応いたしますのでご相談ください。
開発材料(TK-FS)
低い電気抵抗率、高い曲げ性、幅広い硬さレンジの全てを同時に実現。
高硬度、低電気抵抗率、高屈曲性という3つの機能を同時に達成する材料は、当社の既存製品にはありませんでしたが、本製品ではこの課題を解決することに成功し、同一材料で、様々なタイプのプローブピンへの適用が可能となりました。ウエハーテスト用(前工程)プローブカードのカンチレバータイプや、バーチカルタイプなど、幅広いタイプのプローブピンに対応できる材料です。
■特長
- ビッカース硬さが500以上、7.0µΩ・cm以下の電気抵抗率を持ち、10回以上の繰り返し折り曲げ耐性(当社基準)といった3つの機能を同時に達成
- 独自の加工技術により、幅広いビッカース硬さ(400~520)に調整が可能
- 田中貴金属工業の既存のプローブピン材料よりも、高い伸び率(8%~13%)を有する
■TK-FSの性能(主要なプローブピン用材料との比較)
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主要なプローブピン用材料特性比較(硬さ/導電率)
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主要なプローブピン用材料特性比較(伸び率)
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主要なプローブピン用材料特性比較( 90°折り曲げ)
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TK-FSの特徴(高い折り曲げ耐性)
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繰り返し90°折り曲げ試験の模式図